洗濯でもしよっかな・・とバットを持って外に出て軽くストレッチをやっていたら、
グラサンかけた男が、目の前を歩いて行きながら、こっちを見てる。
そのまま行ってしまうかと思えば、ぴたっと止まってこっちへ戻ってきた。
グラサンをはずした男は「あのう・・カープ(うちのチームのこと)さん・・ですよね?」
俺「あ・・はい、ええ~~と?」
男「あの、俺、前、試合して負けたチームW・Rの者(もん)です。」
俺「あ~~あ!、そう言えばW・Rって去年やったっけ・・」
男「ピッチャーの方ですよね・・あの、球速かった」
俺「いや~~そうだった?ははは。」
向こうは、こっちを憶えているが、こっちはまるで憶えていない。
運良くコールドで勝った相手だけど、負けたほうは憶えていても、勝ったほうは案外憶えてはいないもんだ。
男はH君。すごく愛想のいいH君は、近くの、よく知る自転車屋さんの息子さんだった。
その息子さんが、野球をやっていて、去年試合もしていたというわけだ。
小学生から野球をやってきたというH君は、ピッチャーやらキャッチャーやらどこでもやれるそうで、
聞けば、カープのHPも見てくれているそうだ。だから、うちの選手の事もよく知ってんのね!
H君「キャッチャーの人も覚えてるんですよ、ホームラン打たれて・・」
俺「あ~、藤本さんね、あの人は甲子園出た人だしね・・野球漬けの人だヨ」などと話がいろいろはずんで、
変化球の話になって、俺は「週刊ベースボール」を2階から持ってきて、
「これが、伊藤智仁のスライダーの握り・・」とか「シュートはこうだよね」
「フォークは・・」と立ちながら、2人で40分ほど、投球テクニック談義に夢中になったのだった・・。
気がつくと、洗濯はとっくに終わっていて「じゃあ、いつでもうち(のチーム)に来てよ」とか言って見送った。
こっちは、顔も名前もわからない、初対面同然のH君だったが、こういうのが野球のいいところだ。
野球をやっていたから、こういう気分のいい出会いもある。
また、近いうちに、グラウンドで会おうな!! H君!!
その時は、君の決め球、スライダーと真剣勝負だ!!
そして、俺が、投げるときは、もちろんストレートで真剣勝負だヨン!!