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【絵本から専門書まで】 塾講師が、生徒やご父母におすすめする書籍のご紹介です。

『悩む力 べてるの家の人びと』 斉藤道雄

2007年01月04日 | ノンフィクション

 

悩む力.jpg



さぁ、いよいよ本格的に世の中が動き出しますね。それにしても、コンビニやスーパー、ファミリーレストランなど、正月休みなく働く人々も増えました。ご苦労さまです。病院やさまざまな施設で働いている方も気が抜けませんね。


さて、「べてるの家」 をご存知でしょうか。何度かテレビで取り上げられたこともありますが、北海道の浦河にある、精神分裂病患者やアルコール中毒者などの自立を支援する共同住宅です。


そもそも、べてるの家は、向谷地さんという一人の青年が、ソーシャルワーカーとしてその地の赤十字病院に赴任してきた20年以上前、その町であいていた教会の建物で、入退院を繰り返す患者さんたちと共同生活をはじめたのがはじまりです。


「べてるの家」の特徴は、従来の精神病医療とは違って、彼らの病気を治そうとはしません。みなが、自分の、そして相手の現状をそのまま受け入れ、悩み、苦しみ、それを他人と分かち合う、そうした人間関係を実践しようとしています。


規則もほとんどなく、唯一 “三度のメシよりミーティング” と言って、いつもみんなでミーティングをし、ありとあらゆる問題を解決する…というより、確認をしあいます。ここでのモットーも、普通と逆で、“手を動かすより、口を動かせ”(笑)。


ただ、こうした理想を語るのは簡単ですが、それを実践するのは大変です。


実際、ミーティングの途中でも幻覚が現われてしまう人もいれば、妄想にとりつかれている人もいます。寝転がっている人もいれば、ぶつぶつひとり言を入っている人もいます。中には暴れだす人までも…。

ですから「べてるの家」には、日頃から暴力やお金を取られたなどのトラブルが絶えません。それを解決していくというより、やはり消化するとでも言いましょうか、人の集まりだからそういうこともあるという覚悟でみなが受け入れているような雰囲気です。

そこに人間社会の縮図、すなわち人本来の姿が隠されずにあらわになっているのではないかと感じるのです。思いやりや協力という美しい場面もたくさんあるのですが、負の部分だって受け入れる。障害だって個性のひとつだという考え方です。


そうは言っても、みなが自立をし、社会参加できることが目標であることには違いありませんから、べてるは決して内部だけで完結した組織を作りたいのではなく、健常者との繋がりにも非常に積極的です。施設の運営にお金もかかりますね。

そこで、地元の昆布を販売する仕事を始めますが、ここでも座右の銘は、なんと、“安心してサボれる会社作り” です。昼寝をする人、逃亡してしまう作業員もいます。それでも、得意のミーティングで商品開発まで実行し、今では立派な企業として成り立つまでになっているようです。


こうしてまわりがそれを完全に受け入れるという社会が出来上がっていると、障害を持った人々が、(それは施設だけでなく、街も含めてですが)、ものすごい力を発揮するというのが分かります。

今や、彼らを世話する立場の人だけでなく、ベてるで暮らす、その患者さんたちまでが、さまざまなところに講演に出かけるほどだというのです。大変すばらしいと思うのですが、本書には、そうした“べてるの家” の経緯やそこで繰り広げられる様々なドラマが描かれています。


以前、このブログで取り上げた 『教養としての「死」を考える』 の中で鷲田清一氏は、社会から死や生、食や排泄までも見えなくなってしまったことが、人間が自分ひとりで生きているという現代人の錯覚を生んでいると指摘しました。

その鷲田氏が、つい先日テレビで、べてるの家の人々がごく普通に社会に溶け込んでいる、どんな人の集団でも、一定割合で障害を持つ人はおり、それが自然なのだというようなことを語っており、思い出して本書を紹介させていただきました。


近年、医療や福祉の分野に進みたいという生徒がかなり増えてきましたが、きっとこの本を読んでみれば、“社会って何だろう” “健常者と障害を持った人の本質的な違いはあるのか” “病気って?” ということを考えずにはいられないはずです。

そういう生徒には特にお薦めの一冊です。


ベテルのHPはこちら→ 【ベてるの家


悩む力

みすず書房

詳細


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 『悩む力 べてるの家の人びと』斉藤道雄
みすず書房:241P:1890円



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2007年01月04日 | コラム・備忘録




今年一番に出す本は、【21世紀に生きる君たちへ と 洪庵のたいまつ】 と決めたものの、正月中に、今年はどんな感じでブログを書こうかなぁ~とぼんやり考えていて…、

そうだ、記事ごとのアクセス集計は手間がかかるというか、ほとんど不可能ですが、コメントの数ならすぐ比べられると思い立ちました。

これまで多くの方にコメントやトラックバックをいただき、どの記事に一番コメントをいただけたのかランキングを作ってみました。もちろん、アクセス数や記事の良し悪しとは関係ないはずです。


だって、あまりにひどい記事であれば、ちょっとひとごと言いたいとなります。実際、記事とやや離れたところで、やりとりをしたものが、思った以上に上位にいましたし、そもそも半分は私がお答えした分が含まれております。


ブログを始めた当初と、現在では見ていただく方の数も違いますので、本来は一概に比べられませんが、備忘録をかねて、何か分かるかもしれないと、参考程度に作ってみました。全部で470本の記事がありました。

 

【17位~21位】 コメント数 16

ぐりとぐら の おきゃくさま』 中川李枝子(作) ・ 山脇百合子(絵) 〈12月23日〉

図書館の神様』 瀬尾まい子 〈10月29日〉

絵本からうまれたおいしいレシピ』 きむらかよ 〈8月25日〉

リスト完成』 〈7月20日〉

ジョッキー』 松樹剛史 〈5月28日〉



【14位~16位】 コメント数 17

プーチニズム-報道されないロシアの現実』 アンナ・ポリトコフスカヤ(著) 鍛原多恵子(訳)  〈10月26日〉

Enjoyed Ourselves』 〈8月4日〉


食品の裏側』 安部司 〈4月25日〉



【11位~13位】 コメント数 18

感謝・感激!アクセスカウンター 20万 HIT! ■冬期講習前に達成!■』  〈12月14日〉

雪国』 川端康成 〈8月18日〉 

いわゆるA級戦犯』 小林よしのり 〈8月8日〉



【9~10位】 コメント数 20

戦争広告代理店』 高木徹 〈9月2日〉

ビルマの日々』 ジョージ・オーウェル 〈3月24日〉



【8位】 コメント数 21

日本共産党』 筆坂秀世 〈10月22日〉



【7位】 コメント数 22

お笑い!一休さん。ひとやすみ、ひとやすみ 【ジョーク】』  〈11月17日〉



【6位】 コメント数 23

学校が泣いている』 石井昌浩 〈9月6日〉



■第5位■ コメント数 24

英語を子どもに教えるな』 市川力 〈3月28日〉

 

■第3~4位■ コメント数 26

こころ』 夏目漱石 〈8月17日〉

誤訳をしないための翻訳英和辞典』 河野一郎  〈5月23日〉

■第2位■ コメント数 28

【大晦日】 さらば2006年! みなさん今年一年、お世話になりました』  〈12月31日〉


■第1位■ コメント数 34

現在の教育問題 (いじめ ・ 自殺 ・ 高校未履修問題 )』 〈11月11日〉

 

やはり上位に来ているものは、それぞれ印象深いのですが、予想通り、自分なりに良いと思っている感覚と、まったく異なっているのがおもしろい気がします。コメントはやはりブログ継続の大きなエネルギーです。きっと他の方もそうでしょうね。

案外、純粋な本の記事は少なく、本以外の記事、コラムだとか、ごあいさつの記事に関するものの方が、コメントしやすいという面もありますよね、きっと。やっぱり基本的には、教育、英語、読書ブログなんだな~と。当たり前か。

 

あまり役立たない記事でした。ごめんなさい。明日あたりから普通の記事にするつもりです。よろしくお願いします。

 

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