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『戦争広告代理店』 高木徹

2006年09月02日 | ノンフィクション
 

『オシムの言葉』 を読み、非常に感動したのですが、オシム監督の人間像を見るには、まず、七つの国境、六つの共和国、五つの民族、四つの言語、三つの宗教 を持つと言われる、旧ユーゴスラビア で起きた紛争を、ある程度知っておいた方が良さそうです。


島国で、みなが同じ言語を話す日本人にとっては、民族紛争の激しさというのはなかなか理解しにくいですね。特に旧ユーゴは複雑です。本書はそのうちの、ボスニア紛争 とその情報操作を告発したものです。

戦争の恐ろしさと、それをビジネスにしている連中の実態をつぶさに報告した、本当に衝撃的な一冊でした。NHKスペシャルでも紹介されました。

さまざまな民族が共存していたユーゴスラビアが、ソ連崩壊とともに、民族の独立運動が起こるのですが、やがて民族間で、無差別射撃、大量殺戮、強制妊娠など、憎悪から生まれる激しい闘争へと紛争が繰り広げられたわけです。

戦いのさなか、『民族浄化 (エスニッククレンジング) 』 がひとつのキーワードとして、マスコミに登場し、世界中がボスニアヘルツェゴビナ共和国側に付いたのですが、その内幕は…。

一連の戦いでは、最後には、アメリカがボスニア側に付くことによって、NATO の軍事攻撃にまでおよび、一方的にセルビア大統領 ミロシェビッチは悪役に仕立て上げられてしまいました。オランダのハーグで拘置所に入れられていた、ミロシェビッチは、今年、独房で死んでいるところを発見されたそうです。


今でも戦いに勝った都市 サラエボ では、街中に戦争の傷跡が残るものの、豊かで華やいだ生活ができるそうですが、負けたセルビア側 ベオグラード では街や建物は破壊されたまま悲惨な状況だそうです。両者は単純に民族間の戦いをしていたのが、結局、“セルビアが民族浄化をしている” という国際世論を巻き起こし、特にアメリカの介入を実現させ、トマホークミサイル を打ち込ませることに成功し、ボスニアを勝利に導いたものは何だったのか。

実は、裏で動いていたのは、アメリカの広告代理店であり、その依頼主はなんと、ボスニアヘルツェゴビナ共和国そのものだったのです。つまり、単なる民間企業である広告代理店が、インタビューの受け方、表情の作り方などを事細かに一国の外務大臣、大統領に指示をし、アメリカの世論、政治家、実力者たち、そして最後には国連や、NATO軍までをも動かしてしまうのです。


多くの命が奪われる一方で、死の商人が、国を相手に合法的にビジネスを行い、大きな権力までも動かしてしまう。優秀なビジネスマンに過ぎなかったミロシェビッチがいかにして悪の権化に仕立て上げられていくか、現代の情報化社会を象徴する事件の裏側が丹念な取材によって明らかにされています。

相手を殺すために、戦場で命をかけて戦っている兵士とは別の次元で、オフィスで、相手国への憎悪をあおることに、血眼になっている現代の戦争の実態、国際外交の非情さを鋭くえぐり出しています。よくぞここまで取材できたものです。ぜひお読み下さい。


ドキュメント 戦争広告代理店

講談社

詳  細



ドキュメント 戦争広告代理店―情報操作とボスニア紛争

講談社

詳  細

http://tokkun.net/jump.htm 


『戦争広告代理店』 高木徹
講談社:319P:1890円 (文庫本も出されています。650円)

■■ 戦争させて、金儲けするとは! ■■
今や、多くの日本人が戦後生まれですが、オシム監督だけでなく、世界中に戦争を経験している人々がいます。平和ボケと言われないように、生徒たちにも、こういう本を読んで戦争の悲惨な現実を頭にしっかり入れておいて欲しいです。よろしければ応援のクリックをお願いします。→   にほんブログ村 本ブログ   人気blogランキングへ
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20 コメント

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この地域は難しい。 (milesta)
2006-09-02 15:54:25
旧ユーゴスラビア問題は本当に複雑で、新聞を読んでいてもよくわからないことが多いです。主人がかつてボスニアに関する本を一冊読んだら火がついてしまい、次々と関連書籍を読んでいました。この本は、またまた新たな問題を投げかけてくる内容のようですね。
milestaさん (VIVA)
2006-09-02 16:37:14
そうでしたか、ご主人が…。実は私も歴史に疎く、特にバルカン半島あたりは難しくてというか、ややこしくて、その情勢を正確には理解しておりません。各国本当に民族構成が複雑ですし…。ご主人にぜひおすすめの本をお聞きして下さい(笑)。



本書はマスコミ批判の書ですから、私のような素人でも何とかなった気がしておりますが。
風の盆 (kazu4502)
2006-09-02 19:51:38
いつもお世話様です。

富山市水橋は富山市から富山湾に向かって進んでいくとある所なんですが、私の方は高岡市の近くなんですね、いわゆる平野部ってところでしょうか、富山県はそんなに大きくはないんで距離的には遠いとは思いませんが水橋は海側と言ってもいいのではないでしょうか、ですからあまり行く機会もなく、なんとなくイメージからすれば遠い感じがします、八尾はご存知かも知れませんが山の裾野に出来た小さな町です、井田川と言う川が流れ、坂の町と言ってもいいでしょう、情緒のある町です、私の家からは車で40分くらいだと思います、機会があればご案内したい町です、富山は山海の珍味に溢れ、住みやすい県です、昔はよく雪が降りましたが温暖化の影響でしょうか、近年は多く降りませんし、降ってもすぐに解けるんです、昔と違い、雪のしまりがないんです、雪が暖かいんです、これはどのように説明すればいいのかちょっと経験しないと理解が難しいですね、ともあれ、富山はいいところですよ、クチうるさいけれど。

あそうそう、柴田理恵が八尾の生まれですね、しかし珍しいなぁ、あんな落ち着きのない女って富山にはいないんだけど、時代が変わったのでしょうね。あ!室井滋もいた、彼女は魚津でそうですよ。

ともあれ、一度いらっしゃってください、ご案内します。

いつもお世話様です。
kazuさん (VIVA)
2006-09-02 20:03:41
すみません。余計なことを言ったので、お手数をおかけしました。やっぱりはずれでしたか。わざわざ教えていただきありがとうございました。



kazuさんのコメントを見ていると本当に富山が懐かしく思い出されます。私が、仕事で行っていた時も、よくおいしい魚をごちそうになっておりました。



直接は、授業を担当していたわけではないのですが、やはり東京と比べて素朴な生徒たちでした。



飛行機に乗ればすぐなんですけどね。行きたいなぁ~。ゴルフもできるし…。
Unknown (milesta)
2006-09-02 20:08:46
主人もサッカーへの興味から入ったので木村元彦氏の『誇りドラガン・ストイコビッチの軌跡』を最初に読んだそうです。確かVIVAさんのところで『悪者見参』が紹介されていたので、それを購入していました。あと『アンダーグラウンド』という映画を観ていたと思います。

私は主人から何度説明されても、全くわかりません。(笑)



リンクありがとうございました。身に余る解説まで付けていただき恐縮です。今後ともよろしくお願いいたします。
milestaさん (VIVA)
2006-09-02 20:24:22
ありがとうございます。本当に難しい地域ですが、もう少し勉強してみようかなと思います。あっ、そうか、生徒にもサッカーから入れば、勉強させられるかも知れませんね(笑)。



私はサッカーはほとんどわかりませんが、とにかく想像を絶する熱狂振りだそうですね。



こちらこそ、長いことお待たせしてすみませんでした。今後ともよろしくお願いします。

この本は (すかいらいたあ)
2006-09-02 22:55:29
単行本が出てすぐに読みました。

すさまじいショックを受けたことを思い出します。

ユーゴ紛争に関して民族浄化やモスレム人の一方的被害というものを信じていたのが根底から覆されました。



そしてなにより、特定の勢力に偏った報道をどれほど効果的にやらせるかにしのぎを削る人々が自分たちのやっていることは民主主義のルールに沿っていると認識していることが、偏った報道によって特定の勢力が悪の権化にされていくのが怖かったのを覚えています。



世の複雑さを垣間見るには丁度いいのかもしれませんね。



ついでに、こんなことなら科学の方が余程簡単で楽しめると思ったことも申し添えておきます(笑)
ありがとうございます (PCU広報)
2006-09-03 00:13:49
VIVA様

このような素晴らしい紹介文を添えていただきありがとうございます。

これからも、応援させて頂きます。



貴ブログが1位になるまでがんばります。
本の虫に格好の情報 (ysbee)
2006-09-03 10:34:30
VIVAさん、初めまして

kazさんのところから寄り道しました。



アメリカ在住なので現地の本だけで手一杯なのですが、時事問題では時々複雑過ぎることもあり、(特に中近東問題)日本の参考図書を物色していたところでした。



今夏のレバノン戦争やイランの核問題にも共通する、米国の軍事・外交上の疑問を解く鍵が見つかるのでは、と期待できますし、私自身広告代理店出身なので、この本はぜひ読んでみたいですね。

貴重な情報をありがとうございました!
買ってみよう (ましま)
2006-09-03 11:18:25
反戦老年委員会としては見過ごせない内容です。ミロシェビッチ裁判にアメリカが反対したのは、それがバレルからでしょうか。

 広告代理店がそういうことをやりはじめて(広報、広告活動へのアドバイス)20年近くになりますか。しかし、その結末までギャランティして受注したとなればたしかに「陰謀」ですね。ただ、それには疑問を持っています。
すかいらたあさん (viva)
2006-09-03 12:50:18
お読みになっていたんですね。やはり読書傾向がにておりますね。また、物色しにおじゃまします。
PCU広報さん (VIVA)
2006-09-03 12:53:57
とんでもないです。こちらこそ、すばらしいブログからリンクしていただいていたのに、長く何もせず、心苦しく思っていたところです。

スキのない書評、感心させられます。ランキングも大変ですが、お互い、できるところまでやってみましょう。戦友ですね(おおげさ)(笑)。



よろしくお願いします。
ysbeeさん (VIVA)
2006-09-03 13:05:34
はじめまして。もし少しの参考にでもしていただければ、本当にうれしいです。情報量、質とも、kazuさんのブログの足元にも及びませんが、拙ブログは、生徒やご父母に参考になる本がお薦めできれば良いと考えて、やっております。逆に海外だからこそ得られる情報もあるかと思います。何かありましたら、ぜひ教えてください。

コメントありがとうございます。
ましま先生 (VIVA)
2006-09-03 13:14:15
本書にコメントいただけるとは、思ってもおりませんでした。ありがとうございます。先生の眼力に耐えうる本かどうか…、ぜひいろいろご教授下さい。
こんばんは (シン@偽哲学者)
2006-09-04 00:17:25
TBさせていただきました。

この本、私が情報操作というものに興味を持ち始める

契機となった本だったりします。
シンさん (VIVA)
2006-09-04 10:45:23
コメント&TBありがとうございます。私にとっても、実に衝撃的な本でした。また、おじゃま致します。
おそまきながら (ましま)
2006-09-14 19:23:45
 やっと暇をみつけ図書館で流し読みしました。実はオイルショックの危機管理で、日本の広告代理店がそのはしりのようなことをやりはじめ、クライアントの担当としてすこしたずさわったことがあります。アメリカ直移入だったようです。ただ経営陣は疑心暗鬼で、本格的に採用するようなことはしませんでした。

だから本書の内容はよくわかります。やはりこの商売はキワモノです。結局貸し出しも受けず、コピーもせず、後日購入することにしました。ありがとうございました。
ましま先生 (VIVA)
2006-09-14 21:37:22
こんにちは



先生がクライアント側なんですか。どこかわくわくするようなエピソードが聞けそうです。いかがですかそれを元に小説を書かれたら(しつこいですか)。良いと思うんですが。



それはそうと、先生に注目していただけてうれしいです。そうですね、先生のお目にかなう本を、10冊じゃあむりでしょうから、30冊に1冊くらいは、ご紹介したいです(笑)。
ありがとうございます (ましま)
2006-09-16 10:10:47
VIVAさまにそういわれると、つい浮かれてしまいます。深入りしなかったものの、後日の国税局調査で説明にどぎまぎしたこと、などを思い出して……。

 しかし、このところ平和憲法が安泰になるまではブログに専念したいという考えです。構想は夢の中にしておきましょう。
ましま先生 (VIVA)
2006-09-16 12:24:10
コメント恐縮です。あきらめきれないなぁ~。というのが本音です(笑)。

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