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『ワスプ(WASP)-アメリカンエリートはどう作られるか』 越智道雄

2007年01月08日 | 外国関連

 

ワスプ(WASP) 越智道雄.jpg


NHKのある新年の特番で、一人のゲストが、世界を占う今年の注目人物として、アメリカ民主党の政治家、バラック・オバマ上院議員を挙げていました。ご存知でしょうか。

オバマ氏はまだ45歳という若さですが、ヒラリー・クリントンで決まりかと思っていた2008年の大統領選挙の民主党候補になりうる人物だというのですが、注目を集める大きな理由は、彼はいわゆるアフリカ系アメリカ人、黒人なのです。しかもただ一人の黒人の上院議員です。(アメリカでは下院より上院の方が格上です)

今、この人物に対する注目はものすごい勢いらしく、とても演説がうまく、カリスマ性があり、しかもブッシュ政権を支えてきたネオコンの中にまで一定の支持者がいるというのですから驚きです。確かに映像を見ていても非常にスマートな印象です。

Barack_Obama_portrait_2005.jpg
(オバマ氏)


さて、アメリカに関して、『文明の衝突』 を書いた大学者ハンチントンは、別の大著『分断されるアメリカ』 の中で、こうした動きが止められなくなってしまうことを大変危惧していました。アメリカのマイノリティーがやがて多数になってしまうと、建国以来保ってきたアメリカとは別の国になってしまうというような危機感です。

建国以来これまで、アメリカを動かしてきたのは、現大統領ブッシュ一族に代表されるような “ワスプ(WASP)”と呼ばれる人々です。本書の題である “WASP”とは White Anglo-Saxon Protestant  の略です。言葉の使われ方によって、差別的になったり、人種のみを表したりしますが、大体において “アメリカにいるイギリス系白人で、プロテスタント” の人々をさします。

クリントン政権時代には初の女性国務長官にカトリック教徒のマデレーン・オルブライト氏が就きました。ブッシュ政権ではコーリン・パウエル氏が初の黒人国務長官に就任し、さらに現在では黒人のしかも女性であるライス国務長官が就任しています。


明らかにマイノリティーと呼ばれる人々が次第に権力の中枢に近付き、この現象だけを見ていますと、ワスプによる排他的な行動は姿を消したように見えますが、どうでしょう。


本書では、その言葉の起源から、その表している内容まで丁寧に説明した上で、アメリカ建国を果たし、アメリカの中枢を担っていると言われるエリート達を「ワスプ」として研究しています。

多民族国家アメリカでは人種差別は常に大きな問題になります。キング牧師がいまだに日本の英語教科書に載っているように、黒人差別などはわかりやすい構造を持っていますが、白人同士の差別意識、特にリーダー格である誇り高いワスプがユダヤ系に向ける差別や、ケネディーなどアイルランド系カソリックやその他のホワイトエスニックに向けるものになりますと、外から見ていてはさっぱりわからないのではないでしょうか。 

そもそもワスプとはどのような思想の持ち主であるのか、過去の差別の実態、歴史的背景、現状に至る流れなどを本書は解説しています。非常におもしろい本でした。

悔やまれるのは、ワスプの習慣などを説明するために、たびたび有名な映画のシーンの説明が入るのですが、私は映画をあまり見ないので、それを知らなかった点です。映画好きの方なら、あのシーンはそういう意味なのかと得心がいったことでしょう。


以前、ご紹介した 『アメリカの保守本流(広瀬隆)』 を読みますと、アメリカの権力構造はユダヤ系にも行き渡っていますので、歴史的な重みは別にして、今ではワスプだけが特別というようなしくみではなさそうです。

今までならオバマ氏がいくら魅力的に見えても、そう簡単にアメリカで黒人大統領が実現するとは考えられなかったのですが、ブッシュ政権や共和党の不人気もありますので、日本の女性天皇よりも確率はずっと高いと感じますが、いかがでしょう。

ワスプ(WASP)―アメリカン・エリートはどうつくられるか

中央公論社

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『ワスプ(WASP)-アメリカンエリートはどう作られるか』越智道雄
中央公論社:244P:798円

P.S. どうでも良いことですが、昔、上から読んでも下から読んでも “オチミチオ” という政治家がいましたね(笑)。

 

 

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