英字新聞(タイムズ)の見出しに “A Senile God? Who would Adam and Eve It?” とありました。 アダムとイヴ??? senile は “老衰した”という意味ですから、“老衰した神”、まではよいのですが、あとは何?と思って探したのが本書です。
筆者はレバノンのベイルート生まれ。クウェートの王室付きの教師までされたあとに、1972年に来日して日本人実業家の石黒道兼氏と結婚。レバノン文化教育センターなどを設立して国際交流などの活動や、いろいろな大学で講師をされているようです。↓がご夫妻です。
さて、上の英文ですが、本書の “はじめに” にこの紹介がありました。 なんとアダムとイヴ (Adam and Eve) の Eve が believe の最後の eve と韻を踏んでいるために、英語では believe it を Adam and Eve it ということがあるのだそうです。へぇ~、勉強不足でした。
ですから、Who would Adam and Eve It? は Who would believe it? : いったい誰が信じるだろうか? という意味になるわけですね。ご存知でしたか? これが新聞の見出しに使われていたわけです。
日本なら 【社保庁改革?その手は桑名の焼き蛤(はまぐり)】 とか、“恐れ入谷の鬼子母神” みたいなもんでしょうか(笑)?新聞の見出しにはなりませんね。どう考えても…。
まぁ、これだけ見ますと、クイズというか、だじゃれのような本かと思ったのですが、とんでもない。いたってまじめな本で、非常にレベルの高い内容です。確かに英語を教えていてどうしても辞書通りの意味にならない時、聖書の言葉がかかわっていることが多いのです。
ただし、英語の本というよりも、どちらかというと聖書に関する本という感じです。ですから、学習者が純粋に英語力を付けるために読むというより、キリスト教を知りたい、英語で聖書を読みたいという人に向いているのではないかと感じます。
目次は以下のようになっています。
1 ニュース英語にみる聖書の表現(手を洗うピラト;神は私の助け;ダビデとゴリアト ほか) 2 暮らしのなかのキリスト教英語―行事と慣習(天使祝詞;クリスマス;3人の博士と公現祭 ほか) 3 聖書を読めば英語はもっと身近に―創世記から黙示録まで(創世記;過越の祭(出エジプト記)贖罪の山羊(レビ記) ほか) |
本書も宮崎哲弥氏の 『新書365冊』 で取り上げられていた一冊です。評価はBest、Better の下で More に分類されていました。Moreに対する宮崎氏の書評は短いので、そのまま引用しておきましょう。
『米英の新聞を読んでいると、時折宗教由来の慣用表現に出くわす。時事問題に聖書が引照されるのだ。本書は言葉そのものの解説よりも聖書的な言語センスの伝授に力点を置く。』
巻末には、20ページ以上に渡って、キリスト教の主な祝祭日の解説が表になって出ています。またあまり数は多くないのですが、英語表現の索引もありますので、通読せずとも辞書のようにも使えるのではないでしょうか。
■最後までお読みいただきありがとうございました。記事が参考になりましたら、応援のクリックをしていただけるとありがたいです。
⇒ (3位) (1位)← 応援お願いします。m(__)m
http://tokkun.net/jump.htm 【当教室HPへ】
聖書でわかる英語表現 岩波書店 詳細を見る |
たしかに聖書の言い回しは、普通の会話でも文章でもしょっちゅうお目にかかります。言い回しだけでなく、状況説明とか例えの形容として、聖書の人物やエピソードが何の前ぶれも無くいきなり(!)出現しますから、聖書に親しんでない方は「な・なんのこと~?」ととまどうことも頻繁にあると思います。
たまたま私の母方の実家は代々カソリックだったので、聖書の内容は日曜学校で自然に頭に入っていたおかげで、アメリカに来てから会話などで出てきてもすんなり理解できましたが、基礎的なエピソードを抑えておかないと「彼/彼女はこんなことも知らない、無神論者だ」みたいな差別を受けることが、容易に想像できます。(無神論者と言うのは、アメリカではほとんど恐怖の対象と見られています。自由の国と言うのは表向きで、実際にはやはりいまだにしっかり、キリスト教国家です。)
日本の中だけで暮らしてる分には、聖書の1ページも読まなくとも何の差し障りもありませんが、もしビジネスや学問で海外のキリスト教圏に住まわれる場合には、英会話や文法ももちろん大事ですが、聖書の基礎的知識も習得しておいたほうがいいと思います。
宗教の書として読むのではなく、2千年ものあいだ欧米人の生活規範になってきたこの本の中にある仔々細々を読むことで、欧米人の考え方や決断の仕方、行動の取り方など、実に多岐にわたって聖書の血脈がいまだに流れているんだなぁ、と刮目させられると思います。
例えば「He thinks he can walk on the water」と言えば、誇大妄想とか、極端な場合はペテン師を指すことになったり。この場合もキリストが水の上を歩いたという故事を知らなければ、すんなり意味が通じないわけです。こういう実例は、新聞記事ひとつをとっても必ず2・3回ぶつかるでしょう。
またまた予約オーダーの本が増えそうです。読む時間がなくて困った困った。
特に本は個人によっても大きく違いますから。ですからそうおっしゃっていただけるということは、どこか私の問題意識が、大変、とっても、信じられないほど、超僭越ですが、ysbee大先生に似ているということではないかと…。お許しを。
大学受験の英語は、もちろんキリスト教の知識が無くても解けるはずのものですが、それでもまれに、あっ分かるのかな?という問題があったりします。
ちょうど例としてあげて頂いた文も、英語の問題にあったような気がします。(定かではありませんが…)そういう教養も含めて、英語力とすれば、完全に排除する必要もないわけですね。
おっしゃるように、海外へ出たら、絶対に宗教の知識は不可欠ですからね。
これこれ!とyabee様のお話を拝見していて頷いてばかりいました。
脇道かもしれませんが、海外の映画の感想サイトを観ていると、作品の良さが伝わっていなくて残念と感じることが多いのです。例えばキアヌ・リーブス主演の「コンスタンティン」という映画では「何故あんなに自殺にこだわるのか?」「あの槍って何故すごいの?」等の感想がよく見られました。聖書やカトリックの教えをちょっとでも知っていればなぁと思いました。
脇道ついでに、遠藤周作さんの「沈黙」が、マーティン・スコセッシ監督の手で映画化されるそうです。あの神父様の重い葛藤をどんな風に描いてくれるのか、今から楽しみです。
遠藤周作さんの沈黙をアメリカ人が映画化するんですか。興味深いですね。それこそ、逆に日本人的な振る舞いや思考をどのように理解して表現するのでしょうかね。