本を読もう!!VIVA読書!

【絵本から専門書まで】 塾講師が、生徒やご父母におすすめする書籍のご紹介です。

『その英語ネイティブにはこう聞こえます』 ディビッド・セイン

2006年04月09日 | 英語関連書籍

小学校の英語導入、必修化、本当のところはもう少し細かな内容がつまびらかにならなければ、賛成・反対は難しいところです。何より目的がはっきりしませんし、ただでさえ『ゆとり教育』で減ってしまった基礎科目の時間数はどうなるのでしょう。中学・高校の英語教育としっかり連動するのでしょうか?うちの塾でも小学生の英語授業は本当に気を使います。

大学生時代はじめてアメリカに行った時、2ヶ月近くもいて、とてもたくさんのアメリカ人と会ったのですがとうとう一人も“How are you?”と言いませんでした。あれほど毎時間学校の先生と『How are you?・Fine, thank you. How are you?』と練習したのに…。アメリカ人は、必ず“How are you doing?”とdoingを付けるか、あとは全く別の言い方でした。

本書のいちばん最初にそれが出ていました。How are you? はネイティブには『ごきげんいかがでござる』と聞こえるのだそうです。ホントかよ?とも思いますが、なるほど、それなら確かにアメリカ人は使わないだろうなと…(笑)。

本書は明らかな誤用もたくさん紹介していますが、How are you? の例のように正しい英語でもニュアンスが的はずれのものを中心にまとめられています。硬すぎるとか、なれなれしいとかいう表現です。そもそも受験を意識した本ではありませんし、分野別に並んでいないことと、説明が少ないことから、受験生の参考書としては薦められませんが英語の先生方なら充分役立つのではないでしょうか。勉強のつもりでも、息抜きのつもりでも読める本です。

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その英語、ネイティブにはこう聞こえます

主婦の友社

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『英語達人列伝』 斎藤兆史

2006年04月07日 | 英語関連書籍


先日のNHK『そのとき歴史が動いた』で白洲次郎を取り上げていました。昭和天皇から贈り物を届けにきた白洲に、マッカーサーが『そこらに置いておいてくれ』というようなことを言った。それを聞いた白洲がマッカーサーを『無礼である』と怒鳴り付けたというエピソードが残っています。『戦争には負けたが奴隷になったのではない』という信念です。

本書は白洲次郎のほか、野口英世、新渡戸稲造、岡倉天心、幣原喜重郎など、日本にいながらにして達人と呼ばれるほどの英語力を身に付けた10人の人生と英語を紹介します。(白洲だけは本当は留学経験があるので例外ですが、どうしてもこの男のことを書かせてくれ、と斎藤氏は熱く語ります)

小学校から英語を必修にするという動きがあります。私の塾でも英語を習っている小学生も多いです。しかし、必修化となると反発も多いですね。『国家の品格』の中で藤原氏がそれこそ、亡国であると述べています。石原慎太郎も批判的なコメントを出しました。私は早くから英語を学ぶこと自体は否定しませんが、英語を身に付けることの意味や、英語習得がどれほど大変かということを認識していただきたいと切に願います。本書を読めばすぐに分かることです。

さらに、留学しなければ英語はできるようにならないと信じきっている人には、本書は大変な驚きと発見があるはずです。会話重視で文法軽視という現代の英語教育は正しい道なのでしょうか。英語を学ぶことは欧米人のコピーとなり、その文化に取りこまれることではない、という強いメッセージが伝えられます。

私も機会あるたびに本書の内容を授業で話しています。英語の参考書にはすぐれたものがたくさんありますが、英語を学ぶ心構えを教えられた本としては、何をおいても本書を第一に挙げたいと思います。

英語達人列伝―あっぱれ、日本人の英語

中央公論新社

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『英語達人列伝』斎藤兆史
中公新書:255p:798円


『英語を子どもに教えるな』市川力

2006年03月28日 | 英語関連書籍
 

筆者は教育学博士ですが、アメリカで学習塾の出先機関として日本人子女の学習を見てきています。これだけ英語の重要性、有用性が語られる中で、自分が海外赴任ともなれば、自分の子どもをバイリンガルに育てたいというのは親の情です。子どもは子どもで、宇多田ヒカルのようになりたがります。

当然、早ければ早いほど良いだろうと考えるのが今や常識みたいになってしまい、英語早期教育論が活発になり、小学校での英語必修化も進みそうです。また、早期教育を売り物にしている教育機関は、その有効性を、大抵脳の仕組みに関連付けてもっともらしい理論を振りかざします。

ところが、筆者は実際にバイリンガルになろうとしても、それが失敗してしまう例をイヤというほど見せ付けられます。バイリンガルと呼べるまでになるには、本人や家族の不断の努力、さらにそれに適した環境がすべてそろわなければならないと主張し、それは極めてまれであると述べています。

成功例、失敗例を数多くあげています。本書は、一塾講師の単なる印象論ではなく、本来の国際教育、国際人とはどういうものかまでを考察し、多くの専門書などを引用し、説得力を持たせています。また、脳の仕組みについても解説し、早期教育の重要性をうたう宣伝のいかがわしさも指摘します。

最近、やっと『何よりもまず国語だ』『小学校の英語必修は国を滅ぼす』と主張されている、藤原正彦氏にも注目が集めはじめました。しかし、昨日の報道によれば、中教審が、全国一律小学校5年生から週一回程度の授業をする方向で答申をまとめました。

週一回ではおそらく何も効果はないでしょうし、教える側の問題も解決されていません。私は必ずしも小学校の英語導入に反対ではありませんが、英語習得の困難さをきちんと認識して欲しいと思っております。ですから現在のあまりにも安易に、世論に迎合した形での制度化は望ましくないと考えております。

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英語を子どもに教えるな

中央公論新社

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『英語を子どもに教えるな』市川力
中央公論新書(中公新書ラクレ):280p:798円

『TOEFL.TOEICと日本人の英語力』 鳥飼玖美子

2006年03月21日 | 英語関連書籍

バブル後の不景気が続いたせいか、手に職をということで、資格試験を目指す人が増え、中でも英語の資格試験が日本では大流行です。近年ではその合否や得点を会社が社員に義務付けたり、大学の推薦基準にしたりしています。当教室でも、この前の日曜日に内部生に向けてTOEIC-IPテストを実施しました。


確かに、盛んではありますが、残念ながら、日本人の英語力はアジアの最低レベルという結果が出ています。本書は英語の資格試験の様々な現象について考察しています。

まず何よりも根本的な勘違い。
英語教師の中にも、かなりいますが、あの何でも知っていそうな立花隆氏までも堂々と犯している過ちは、TOEFLやTOEICは会話中心のものだと考えている。実態
は全く逆で、文法がかなり重視されており、日本人の得点が低いのは文法、読解分野。

しかも成績が悪いのは高校、大学生および20歳代。社会人の得点(30歳~40歳)は高い。そしてこれらは指導要領が会話中心に移行し始めた時期に教育を受けた人たちであると…なるほど、と思いませんか?

これから受験を考えている人や、何より英語教師の方々に読んでいただきたい一冊です。

P.S. それにしてもこの本にまで、ドラゴン桜の帯が付くんですね。まったく関係ないのに。

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TOEFL・TOEICと日本人の英語力―資格主義から実力主義へ

講談社

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『感動する英語!』 近江誠

2006年03月16日 | 英語関連書籍
本書はキング牧師の『I have a dream!』の演説や、クリントンの『(モニカルインスキー関係の)お詫び会見』、マッカーサーの『老兵は死なず』演説や、チャップリンの『独裁者』他、9つの著名な演説をCDにし、続けてその言い回しを参考にした、オリジナルの英文が読まれます。単語や演説の訳、そしてそれを生んだ時代背景などの解説まで書かれています。

近江氏は英語力を付けるのは、まず感動をし、それを何度も口に出して練習するのを基本にしているそうです。英語で苦しんでいるというより、英語好きな人にお薦めです。易しくはないですが、なかなかおもしろい本です。
感動する英語!

文藝春秋

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