Ⅺ「太子の耳でも」
一族郎党と縁の人の時間が
恙なく巡りますようにと
何時もの場所に来ると
気を付け!をして両手を合わせる
一つの日課のように
毎日の最初の願いを奏上するのだ
流石に国中の人々や
関西の人すべてとか
我が町の誰も彼もという訳にもいかないので
そんなに大勢の願いでは
さすがに太子の耳でも聞き取れないだろうから
一握りの交情ある人たち限定なのは
已むを得ないとして
兎にも角にも、僕は
門前の小僧のように
其処に佇めば暫し合掌する・・
*
「しるし」
有りの儘の風景に
真っ白いccanvasを拡げる
そうして
無垢なるココロに”しるし”を置いてゆくものを
僕は言葉に変換して
無心にwritingしてゆくのだ
何時でも
”jinen"の大きな懐に抱かれると
赤子のように
無垢なる画布で居られる
そこに最初の線を描き
そこに最初の点を打ち
そこに最初の想いを刻む
毎日がその日限りの旅なら
その最初の一歩は
夢と覚悟と滾る血を抱えて踏み出したい
そのtravelに終止符が打たれるまでは
何時でも毎日その度に
*
「詩人のように」
氷雨降る夜明け前の仄暗い風景に
僕は紛れ込んでゆく
契りが有るのだ
初冬の殊の外の冷たさを
絶え間なく傘を叩く雨の音に感じながら
とても大切な待ち合わせが有って
状況に関わらず出向かねばならないヒトのように
破れない約束を抱えて出掛ねばならない
相棒の片割れのように
待ち望んでいた逢瀬のその場所へ
息弾ませて駆けつけるcoupleの男のように
それから、それから
そこに降っているものや
その辺りを過るものを受け取ろうとする
宛名人の書生のように
新しいイノチの種が在ると信じて
亡羊の虚無を耕す開拓者のように
そんな風に僕は
長靴を履いたpoetのように
風景の一瞬を横切るのだ
まるで
納得して実印を押した契約書の
一つの必須項目の勤勉な履行者のように・・
*11/24 12:06