演出と脚本
或る朝、ふと、右の頬の違和感に気付く
動きが鈍いのだ
滅びの始まりの兆候は
日常の何気ない動作に
巧妙に紛れ込んでやってくる
周到に用意された”滅亡”は
胎内の赤子の細胞に宿り
inochiの間隔と同じtimeを培って
軈て、主導権を掌握し
徐に、個々人の終焉を司る演出家に成る
そうして
秀でた脚本家は
そのことを其其のヒストリーに筋立て
有為転変を塗し
悲喜交交を鏤めながら
climaxへと導いてゆくのだ
ともに悲哀の、ともに静謐の
ともに安堵の、ともに滅びのUtaの
最後の一小節へ
今わの際の、最期の一音符へと
或る朝のことの
その他愛なさに秘められる
重大事の妄想を・・