TICOブログ

TICO最新情報をお届けします。

救急対応ガイドライン完成&全国配布終了!

2010年12月06日 | TICO カンボジア
 
 ご報告が遅くなりましたが、カンボジア事務所で実施しているJICA草の根技術協力事業「プノンペン市西部地区の低所得者層の人々の命を守るセーフティーネット強化事業」に基づく救急対応ガイドラインが完成し、全国配布が終了いたしました。

このガイドラインは、診療所レベルで必要な救急対応能力を身につけるべく、高度な資機材をできるだけ使用せずに傷病者に対して救急処理を実施し、症状に応じて次レベルの医療機関へ転送を迅速に行うことを目的としたクメール語版救急対応ガイドラインです。全体が25章で構成され、外傷や感電、水難事故、喉に物を詰まらせた患者の対応、心臓発作などの応急手当の方法が記載されています。

ガイドラインの配布先については当初からの計画にあった、Operational District (保健行政区), Referral Hospital(転送病院), Health Center(診療所)に加え、保健省側から要望のあった、各州の警察局も対象としました。これは、保健省が今年度、警察交通課や警察医務官を対象とした初期救急対応トレーニングを行っていることと、彼ら事故の際、第一対応者となり応急処置が求められるため、その能力向上を見込み配布しました。

全国配布は、執筆を担当したテクニカルワーキンググループメンバー2名1組が全国20州4特別市をまわり冊子を届けるとともに、各州担当者へガイドラインの作成目的や活用方法、州内での配布についての説明及び各地域のおける現状についての聞き取り調査や今後の活動方針(今年度や次年度以降のトレーニング実施計画等)について意見交換をするガイダンス形式で進められました。我々も実施状況を確認するため5州同行しました。(コンポントム州、プレイベン州、コンポンチャム州、カンダール州、スバイリエン州)

そのうちコンポントム州では、ガイドラインを使用した州内の医療従事者を対象の初期救急トレーニングを行う計画があり、その際に州内の対象機関へは一斉に配布する計画だというお話でした。対応した州保健局長は、「平易な表現を用い、写真が多く使われており大変わかりやすい。多くの人に活用してもらうためぜひ増刷してほしい。また今後、数年毎に改訂版を出してはどうか。」という意見があり、このガイドラインに対する関係者の期待は大きいと感じました。 




カンダール州保健局にて


コンポントム州保健局前でTWGメンバーら




文責:TICOカンボジア事務所(下地)

警察を対象にワークショップを開催

2010年11月18日 | TICO カンボジア
サムロンクロン地域の警察を対象にファーストエイドに関するワークショップ
を開催しました

事故現場に必ず駆けつけるのは警察。
そして、警察は路上で取り締まりをしているため、ファーストレスポンダーに
なる可能性が高いと思われます。

そして、住民の方から色々話を聞くと、警察と私立病院の救急車はつながりが
あるとの話があったため、警察を巻きこむことは必要不可欠だと判断しました。

とある住民の方は、「事故にあった時、TICOから教えてもらったポチェントン
病院の救急車を呼ぼうとしたんだよ。そしたら、警察が別の私立病院の救急車を
呼んじゃって・・・。」とおっしゃっていました。

そこで開催したのが、今回の警察対象のワークショップ。
VIPの警護があるとのことで、参加者が少ないコミューン(行政村)もありましたが、
合計16名の方に参加頂きました。

警察の方なので、交通事故に対応することが多い事を想定し、下記の内容を
中心としました。

・応急処置とは何か、・救急車の要請方法、・CPR(心肺蘇生法)、・搬送法、
・止血や骨折、窒息への対処方法等

次回はクモイ地域の警察を対象としたワークショップを開催する予定です


▲窒息時の対応について学ぶ警察


▲胸骨圧迫に挑戦する警察(左)、アドバイスをする田中看護師(右)


文責:TICOカンボジア事務所(大坪)

ワークショップ終了時調査を終えて

2010年11月12日 | TICO カンボジア
これまで、地域ボランティアさんの育成や地域住民のみなさんを
対象にファーストエイドに関するワークショップを実施してきました。

今年の12月をもってJICA草の根パートナーシップ事業が終了するため、
住民のみなさんの間にファーストエイドに関する知識がどれくらい普及
しているのかを測り、これまでの活動を検証することを目的として
終了時調査を実施しました

各世帯を回って聞き取りをしていると、住民の方の意見を直接聞くことが
できたため、これまで知りえなかった情報も聞くことができて大変参考に
なりました。

私たちが対象としている地域は、本当に地区毎にそれぞれ全く異なる背景を
もっています。
スラム地区や古くから存在しており、現在も住民同士のつながりが強い地域、
最近できた地域等さまざまです。
スラム地区はさまざまなNGOの支援が入り、病院・診療所の費用が無料に
なる等の支援を受けていますが、スラム地区ではなくとも、本当に貧しくて
病院に行けないという方々もいらっしゃいます。
しかし、支援はどうしてもスラム地区に集中しがちなのです。

先日、調査で村を訪れた際に、貧しくて病院に行けなかったために、手が
壊死していくのを寝て我慢されていた方に出会いました。自分の身体が
腐っていくのに為すすべもなく、さぞや不安で怖かったことだと思います・・・。
近所の方は心配して、その家庭の子どもの世話等のサポートをしていましたが、
費用がかかるため病院に連れていくことができなかったそうです。
本当に貧しい場合は村長からの証明があれば、公立の病院・診療所の
診療費が無料になります。

しかし、中々機能していないのが現状なのです。

たとえ治療費が無料になったとしても、カンボジアでは、入院した際に
患者さんの世話をするのは、看護師ではなく患者さんの家族であるため、
「誰が患者さんの世話をするのか」、「食事代はどうするのか」等の問題が
でてきます。

また、とあるNGOの支援により、病院・診療所の費用が無料になる支援を
受けているにもかかわらず、使い方が分からなかったために病院に行くのを
数年間も我慢していた方もいました。
「開発援助がどうあるべきか」ということについて本当に考えさせられました。

今後、調査時での聞き取りで得た情報やアンケート調査の結果を分析し、
事業終了までのフォローアップをどうするか、事業終了後にどのような
サポートが必要なのか検討したいと思います。



▲村での調査の様子(右側:ナショナルスタッフ ライ)

文責:TICOカンボジア事務所(大坪)

住民対象のワークショップ終了

2010年10月15日 | TICO カンボジア
住民対象のファーストエイドに関するワークショップが一通り終了
しました

3月末から12ケ村の全世帯を対象に開始し、住民の方は平日は忙しいため、
主に土日にワークショップを実施してきました。
これまで合計39回にわたって開催し、参加者は1,867名にのぼります。

診療所スタッフ、地域ボランティア、救急隊員と協力して開催することで、
これまであまり情報が入らなかった地域の様子や実情を共有する良い機会
となりました。

住民からの質問の中には、「醤油は料理に使うため、結局は身体の中に
取り込まれるのに、なぜ皮膚には使用してはいけないの? 身体に入れる
のは一緒じゃないの?」等の意外な(?)質問がたくさんあり、私たちも
大変勉強になりました

また、これまでの住民への聞き取りの中で「診療所に知り合いがいないから
行けない」とか「救急車が怖い」等の意見があったため、お互いに顔を
合わせる機会を作ることは大切だなぁと感じました。

ワークショップには1世帯につき1名に参加してもらいました。その後、家族内で
情報を共有してもらえることを期待しています。

ワークショップでは参加者の識字率が大変低く、参加者の大半が文字を読めない
ということもありました。

配布しているハンドブックでは、できるだけ絵を見て理解できるように作成
してはいますが、救急車の番号を読む事ができないということ、ポチェントン
病院の救急車の番号は長いため暗記することが難しいということから、
いざという時に家族や周囲からの助けが必要となることが予想されます。

村人にどれだけファーストエイドに関する知識が普及しているのかを調査し、
開催したワークショップの効果を測る予定です

その結果を踏まえ、今後、どのような形でフォローアップをしていくか検討
したいと思っています


▲クモイ村でのワークショップの様子。お坊さんも参加しました。

文責:TICOカンボジア事務所(大坪)

ポチェントン病院前道路整備(第2段)終了!

2010年08月17日 | TICO カンボジア
ポチェントン病院前の道路整備が終了しました。
今回は前回の整備に続いて第2段の実施となりました。

(前回の道路整備については下記をご参照ください)
⇒ http://blog.goo.ne.jp/tico_blog/e/5a508421a6828f60db6d280242cba793

これまでのデコボコ道では通行に時間を要したり、病状によっては悪影響を
与えたりと、妊婦さんや救急患者さんにとってかなりの負担となっていました。

今回、整備を行ったのは、直線距離にして79メートル、面積にして504平方
メートルです。
将来、道路が破損したり修繕が必要となった際にカンボジアの人々が、
「自分たちで修繕しよう!」と思ってもらえるように、TICOが資金を全て捻出する
のではなく、様々な人々に協力してもらえるよう呼び掛けました。

すると、西部保健局、ポチェントン病院だけでなく、近隣の住民からも資金を提供
してもらえることになりました。
(西部保健局からは1,000ドル、ポチェントン病院、近隣住民からそれぞれ
500ドルずつの資金提供)

結局、費用合計6,552ドルの内、2,000ドルを分担して頂くことになりました。
当事者意識をもってもらえることを望みます。

そして、道路を使用する人々から舗装後の感想を聞いてみました。

○救急隊コーンさんの感想

「早く、スムースに、快適に」患者さんを搬送できるようになって感謝しています。
雨の際は道路が土だと救急車がとても汚れるので、舗装してもらって助かっています。
どうもありがとうございました。」

○患者さんをよく搬送しているバイクタクシードライバーさんの感想

雨が降ると患者さんを運ぶのが大変だったので、今はすごく通行しやすくて
助かってるよ。あとの残りの部分もやってくれた方が助かるけどね。」

今後は残りの未舗装部分についても西部保健局と協議していきたいと思います。
現地の人々のペースに合わせながら


  
              ◆舗装前

  
              ◆舗装後


文責:TICOカンボジア事務所(大坪)