【シリコンバレー=佐藤浩実】米半導体大手のブロードコムが同業クアルコムへの敵対的買収に動き出す。4日にクアルコム現経営陣の交代を迫るための委任状争奪戦に乗り出すと表明し、18年3月の株主総会で選出する11人の取締役候補を発表した。1030億ドル(約12兆円)にのぼる買収提案から約1カ月。業界最大の買収劇は新たな局面に入る。
*ブロードコムの純利益は、9億$超
ブロードコムは4日早朝、フィンランドのノキアや半導体メーカー、金融機関の出身者からなる取締役候補11人を公表した。ブロードコムのホック・タン最高経営責任者(CEO)は「我々は繰り返しクアルコムとの建設的な対話を試み、株主や顧客の支持もあった。なのに、クアルコムはこれらの機会を無視してきた」との声明を出した。
クアルコムは4日、ブロードコムの声明を受けて「取締役会を支配しようとしている」と批判するコメントを出した。
クアルコムは18年3月6日に株主総会を予定しており、ブロードコムが委任状争奪戦を仕掛けるには約3カ月前までに候補者を選ぶ必要があった。一部の米メディアが報道していた買収額の引き上げについては4日時点では見送り、「1株あたり70ドルでの買収」を改めて明示した。
両社をめぐっては11月6日にブロードコムがクアルコムへの買収を発表。同2日時点の株価(55ドル)に28%を上乗せした70ドルを買い取り額として提案していた。ただ同13日にはクアルコムの経営陣が「企業価値を著しく過小評価している」と反対。ブロードコムは即座に「買収に全力を尽くす」との声明を出したが、その後は表立った動きはしていなかった。
今後焦点になるのはクアルコム株主の反応だ。1株80$台要求?
17年に入って知的財産をめぐる米アップルとの法廷係争が勃発したため、買収計画が表に出るまでクアルコムの株価は確かに55ドル前後で推移していた。ただ16年10~12月にさかのぼると平均値は67ドル。28%を上乗せすると80ドルを上回る水準で、クアルコムの株主のなかには「80ドル以上」を求める声も強い。
同社が進めている自動車半導体大手NXPセミコンダクターズ(オランダ)の買収手続きの行方も、企業価値の算定に影響を及ぼす。委任状争奪戦の過程で、買収額が見直される可能性はある。
ブロードコムは、HPの半導体部門が独立したアバゴ・テクノロジーを前身とする。14年にデータセンター向けの半導体に強いLSIを66億ドルで、16年には現在の社名でもある旧ブロードコムを370億ドルで買収している。*日経
種類 | 公開会社 |
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本社所在地 | アメリカ合衆国カリフォルニア州サンノゼ |
設立 | 1961年(2016年1月までは「アバゴ・テクノロジー」) |
業種 | 半導体・エレクトロニクス製造 |
事業内容 | 集積回路、ギガビット・イーサネット、無線アクセス、ケーブルモデム、携帯電話、スイッチングハブ、DSL、サーバファーム、マイクロプロセッサ、Bluetooth、VoIP、近距離無線通信、GPS、MAN |
代表者 | Hock E. Tan(CEO兼社長) |
売上高 | 73億9000万ドル (2011) |
営業利益 | 9億5300万ドル (2011) |
純利益 | 9億2700万ドル (2011) |
従業員数 | 15,700 (2017年5月) |