中国が24日、米国の液化天然ガス(LNG)に報復関税を発動する。米国産LNGの対中輸出が落ち込むのは必至だ。米国は屈指の成長市場を失い、中国からの投資が細るリスクを抱え込む。相場への影響は目先限られるが、貿易戦争は米シェールガス産業の成長に影を落としかねない。
トランプ米政権は24日、対中制裁関税の第3弾を発動する。中国は600億ドル分の輸入品に報復関税をかけ、LNGには10%を課す。
中国が24日、米国の液化天然ガス(LNG)に報復関税を発動する。米国産LNGの対中輸出が落ち込むのは必至だ。米国は屈指の成長市場を失い、中国からの投資が細るリスクを抱え込む。相場への影響は目先限られるが、貿易戦争は米シェールガス産業の成長に影を落としかねない。
トランプ米政権は24日、対中制裁関税の第3弾を発動する。中国は600億ドル分の輸入品に報復関税をかけ、LNGには10%を課す。
「急がば回れ」という格言に対して市場は馬耳東風のようだ。
国際決済銀行(BIS)が17日公表したリポートによると、外為のスポット(直物)市場では電子取引のシェアがこの10年間でほぼ2倍に増えて70%を超えた。電子取引プラットフォームのEBSでの外為のスポット取引のうちアルゴリズムによる注文も、ほぼ同程度の比率を占めている。電子化と自動化により取引のスピードは上がる一方で、価格は次から次へと更新されていく。
こうしたデータは情報を素早く集めて処理できる人々には宝の山だが、それが可能なグループは選別が進んでいる。BISのデータによると、世界規模で外為取引を処理する銀行の数は6行程度と、1998年以来で半分以下に減った。
勝ち組は顧客のリスクの一部を社内で相殺し、アルゴリズムを駆使して注文を小分けにする。そのため従来型のディーラーは短期の価格変動の原因となる資金の流れを把握するのが困難になった。
細分化は事態をさらに難しくしている。多種多様な取引媒体が生まれ、トムソン・ロイター・マッチングやEBSスポットといったかつて市場を席巻していた取引プラットフォームはシェアが低下した。BISによると、両プラットフォームの外為スポット取引でのシェアは2015年で15%弱だが、10年前には45%前後だった。
こうした大規模な流動性の出し手は十数もの異なる取引プラットフォームとつながっている。
米国の中国向けLNG輸出の規模は、年間約120億ドル相当に上る原油に比べれば今のところずっと小さい。それでもアナリストによると、中国が大気浄化対策を推進するとともに、米国からのLNG輸入が跳ね上がってもおかしくない。
モルガン・スタンレーは、昨年10億ドルだった中国の米国産LNG輸入は、向こう2─3年で最大90億ドルに増加する可能性があると試算している。
こうした輸入が懸案の中国の対米黒字を解消するには程遠いといえ、輸入拡大によって通商面で中国が新たな対米カードを得られる形になる。もっとも一部業界筋は、中国が米国産LNGに追加関税を課した場合、代わりの調達先が限られることから自分たちも悪影響を被ると警告する。中国商務省系シンクタンクの研究員は「われわれが米国産LNGに関税を課すと、支払わなければならない機会費用がずっと膨らんでしまう。大豆なら中国は別の国からの輸入に転換するのがずっと簡単で、関税を課せば米国に与える痛手はより大きくなるが、エネルギー製品への関税は米中ともに傷を負う」と説明した。
中国国内の天然ガス需要は今年1─5月に17.6%増加し、政府が想定する年7─8%増を大きく上回る伸びとなっている。アナリストの1人は「中国のガス生産が限定されている以上、われわれがエネルギー消費に占めるガスの割合を10%に高める目標を達成するには、輸入拡大が不可欠だ」と指摘し、中国のエネルギー安全保障の観点では米国のLNGは必要になると付け加えた。