*中国は省がEC各国並みの自由度を持っている、バラツキがむしろ問題で、中央の承認は遠心力を加速するレベル、タイミングは悪くない、と見るべきだ、
欧州の不況による輸出の低迷の方が痛手となっている、が、資本の欧州市場参入は進展している、
日本の国内復興現場の遅々たる歩みと資材、労力のインフレ現象の方がはるかにリスキーである、
*中国国家改革発展委員会が公共投資の実施を集中的に認めたのは中国の景気が予想以上に悪化しており、今秋の 共産党大会を前に本格的なてこ入れが必要になっていると判断したためだ。巨額のインフラ投資 によって停滞が続く景気を浮揚させる狙いがある。
中国政府がこれまで財政政策による景気浮揚に慎重だった背景には、4兆元の景気対策が、住宅 バブルや鉄鋼などの供給過剰、地方政府による採算を無視したインフラ投資をもたらしたとの 反省がある。
しかし6、7月の2カ月連続の金融緩和にもかかわらず、景気減速が鮮明になっている。中国物流 購入連合会が1日発表した8月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は景気判断の分かれ目と なる50を9カ月ぶりに下回った。このため同委員会はプロジェクトの内容を精査したうえで、 必要性が高い一部案件の開発開始を認めたとみられる。
景気対策への期待感から、7日の上海株式市場では上海総合指数が前日比3.7%高と大幅続伸した。 終値は2127と約半月ぶりに2100台を回復した。三一重工など建設機械株などが相場全体の上昇を けん引した。
実現に向けた課題は多い。地方政府は景気減速による税収の落ち込みや不動産価格の下落により、 収入が落ち込んでおり、プロジェクトの資金は銀行借り入れに頼らざるを得ない。だが、リーマン ・ショック後の4兆元景気対策の際に地方政府傘下の投資会社「地方融資平台」に貸し出した融資 の返済が危ぶまれており、新規融資への銀行の慎重姿勢につながっている。
巨額のインフラ投資が鉄鋼やセメントなど中国の基幹産業の供給過剰を再び加速し、中国経済の 課題である産業構造の高度化を遅らせる可能性も指摘されている。
北京】中国はこのほど、 地下鉄や高速道路などインフラ整備に向け総額約1兆元(約12兆円)と推定される公共投資を承認した。これを受け7日の国内株式市場などは上昇したが、エコノミストの間では、中国政府による景気減速への対応が後手にまわっているのではないかとの懸念が強まっている。
この公共投資計画は、中国政府が遅ればせながら景気の減速によるリスクに注目し始め、景気刺激策に前向きとなっていることを示すものと受け止められている。*REUTERS
バンク・オブ・アメリカ・メリル・リンチのエコノミスト、ルー・ティング氏はリポートで「中国政府は悪化し続ける景気鈍化を食い止めるためにやっと本腰を入れ始めた」と述べる一方で、7-9月期の更なる悪化を食い止めるためにはこれらの新規計画は遅すぎたとしている。
投資銀行のエコノミストの間では今年初め、中国経済は1-3月期か4-6月期に底入れするとの見方が大勢を占めていたが、今では年末まで鈍化が続くと見る向きが多い。
エコノミストによれば、これまで中国政府が景気へのてこ入れに比較的慎重姿勢をとってきたことは意外であったが、その理由はいくつか考えられるとしている。たとえば、今回の景気の鈍化は2008年と2009年の金融危機後のショックに比べると格段に緩やかであり、中国政府関係者の多くは、当時実行された景気刺激策は行き過ぎで、それがインフレや過剰な銀行融資など、長期的な悪影響の原因となったと考えている。
UBSのエコノミスト、ワン・タオ氏はリポートで「経済鈍化のペースは2008年後半の突然の悪化に比べると緩やかであり、労働市場に大きな圧力となってはいない」と述べている。また、不動産の販売件数や価格は政府の引き締め努力にもかかわらず既に回復し始めており、積極的な景気浮揚策によって、これまで政策担当者が抑制に苦慮してきた不動産バブルに再び火がつくのではないかとの懸念が生じているとしている。
また、向こう数週間から数カ月間に始まる10年に一度の中国指導部の交代とそれに伴う昇進人事のほか、国の方向性などに政府トップが気をとられている可能性もある。
UBSとINGは7日、中国の今年の国内総生産(GDP)成長率予想を従来のそれぞれ8.0%と8.1%から7.5%に下方修正した。それ以前にも、バンク・オブ・アメリカ・メリル・リンチやゴールドマン・サックスなどが既に下方修正を行っている。中国の4-6月期のGDP成長率は前年同期比7.6%で、世界金融危機以来最も鈍いペースとなった。
7日の中国株式市場は、中国政府による公共支出増の兆しに加え、前日に欧州中央銀行が債券買取プログラムを発表したことを好感して上昇した。この日、公共支出承認のニュースが広まると、中国国内株の指数である上海総合指数は建設関連銘柄に主導され3.7%高と、1月17日以来最大の上げ幅を記録した。上海市場の鉄鋼先物価格も、建設活動回復期待によって5%上昇し、ストップ高に達した。
中国の経済計画を司る国家発展改革委員会はその公式ウェブサイトで、25件の地下鉄プロジェクト、13件の道路建設プロジェクト、5件の港湾プロジェクト、2件の運河プロジェクトを承認した。
承認されたプロジェクトの中には、厦門市内における全長246キロの地下鉄路線と138カ所の地下鉄の駅、新疆ウイグル自治区における全長301キロの4車線高速道路などが含まれる。
政府はまだこれらプロジェクトの合計金額を発表していない。野村のエコノミスト、 ジャン・ジーウェイ氏は、最近発表された新規空港やエネルギー施設を含むプロジェクトの総額は4年間で約1兆元と推定している。これは中国GDPの約2%に相当する金額だ。
同氏はリポートの中で「この2日間で中国政府が集中的にこれらのプロジェクトを発表したことは、今まで小出しに行ってきた泥縄的政策から、もっと前向きで断固とした方針に変化したことを物語っている」と述べた。
だが、今週発表されたインフラ支出も、2009年から2010年にかけて行われた大々的な景気浮揚策の規模には程遠い。当時中央政府が計画した支出総額は当初、2年間で4兆元だった。多くのアナリストは、実際はそれをはるかに上回る金額が使われたとみている。地方自治体がインフラプロジェクトに多額の資金を投じ、国営銀行が前代未聞のペースで融資を行ったためだ。