田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『僕らのミライへ逆回転』

2023-02-01 21:01:06 | 映画いろいろ

『僕らのミライへ逆回転』(2008.10.14.)

 新聞での評判を目にして見に行った。旧式のレンタルビデオ店を舞台に、中身が消えてしまったビデオテープの代替に撮り始めたリメーク映画が大受けして…という、まるで「風が吹けば桶屋が儲かる」あるいは「瓢箪から駒」みたいな話が展開される。

 この映画の原題は『Be Kind Rewind』。つまりレンタルビデオ店の決まり文句である「テープは巻き戻して返却して」という意味。

 核となる映画内映画の「ファッツ・ウォーラーの伝記」が、映画の最初と最後に映されるように、この映画の全体の構成も“巻き戻し”だから、タイトルにもそれなりに意味が込められているわけだ。

 で、映画撮影の熱気や狂気、あるいは珍アイデアを通して、CG全盛、大作主義、レンタルビデオ店の無個性化など、今の映画界が抱えるさまざまな問題が浮かび上がってくるのだが、日本語のタイトルが、ひねり過ぎて結局よく分からなくなっている。

 映画全体も、盛り込み過ぎの脚本が消化しきれなかったためか、おバカパロディー満載のドタバタコメディーからラストのハートウォーム上映会へのつながりが弱くなってしまったのが残念。

 ミッシェル・ゴンドリー、今回は(も?)策士策に溺れたの感がある。ただ、『素晴らしき哉、人生!』(46)『ニュー・シネマ・パラダイス』(88)が合体したようなラストには、ちょっとうるっときたところもあった。映画好きは、こういうシーンにはからきし弱くて点数が甘くなるところがある。何々、それもゴンドリーの策のうちだって?


 

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『Single8』

2023-02-01 07:14:40 | 新作映画を見てみた

『Single8』(2023.1.31.オンライン試写)

 1978年、夏。高校生の栗田広志(上村侑)は『スター・ウォーズ』(77)に影響を受け、友人の喜男(福澤希空)と共に宇宙船のミニチュアを作って8ミリカメラ(フジカシングル8)で撮影することに。最初は宇宙船を撮ることしか考えていなかった広志だが、クラスで文化祭の出し物について話し合う際、勢いで映画製作を提案してしまう。

 思いを寄せる夏美(高石あかり)にヒロイン役を依頼するも断られた広志は、彼女とクラスメイトたちを説得するため、喜男や映画マニアの佐々木(桑山隆太)も加えて脚本の執筆に取りかかるが…。

 70年代を舞台に、映画製作に情熱を燃やす高校生たちを描いた青春映画。平成ウルトラシリーズなどで知られる小中和哉監督が、自身の青春時代を題材に脚本を書き下ろして監督した。60年代の高校生たちのロックバンドを描いた大林宣彦監督の『青春デンデケデケデケ』(92)をほうふつとさせるところもある。

 小中監督は、自分とほぼ同世代(ちょっと後輩)。しかも自分も高校時代は一時映画同好会(部になれなかった)に所属していたので、描かれた諸々については痛いほどよく分かるのだが、決定的に違うのは自分は男子校だったこと。従って、この映画のようなヒロインは存在しなかったのだ(誰かに女装をさせて撮るか、などという情けない話が出たこともあった)。

 ところで、小中監督は、スピルバーグの『ジョーズ』(75)に触発されて8ミリ映画を撮り始め、スピルバーグ製作、J・J・エイブラムズ監督の『SUPER8/スーパーエイト』(11)に発奮して、この映画を考えたのだという。そして、スピルバーグの自主映画時代を描いた『フェイブルマンズ』と同時期にこの映画が公開されるのだから感慨深いものがあるだろう。自分たちの世代の映画好きにとって、スピルバーグが与えた影響は計り知れないのだ。

 さて、8ミリ映画は現像されるまでどんな風に映っているのか確認できないし、音も同録ができない。今はデジタル化で映像は身近で便利なものになったが、フィルムの持つぬくもりと独特の色合い、フィルムならではの映画作りの過程は特別なものだと思ってしまうのは、単なるノスタルジーに過ぎないのか…。

 上村侑、高石あかりらが、40数年前の高校生をちゃんと演じてくれていたが、彼らの目、あるいは若い観客の目には、これはどう映るのだろうか、という興味が湧いた。映画内映画「タイム・リバース」もなかなか面白かった。


『SUPER8/スーパーエイト』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/a7fa1c4d52413f1c8247ec4e472f8c8a

『青春デンデケデケデケ』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/0b9ccd6f7bcb95897c37deaef03ec010

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『SUPER8/スーパーエイト』

2023-02-01 00:08:53 | 映画いろいろ

『SUPER8/スーパーエイト』(2011.6.20.パラマウント試写室)

 スピルバーグが製作し、若いJ・J・エイブラムスが監督した異星人もの。舞台は1970年代のサバーブ(郊外の町)、しかもキャッチコピーは「僕たちは、ひとりじゃない」と来れば、『未知との遭遇』(77)の「We are not alone」を思い出す。しかもスピルバーグとエイブラムスとの浅からぬ縁を強調されると、ひょっとして『未知との遭遇』の跡継ぎかと期待が高まった。

 見てみると、幼なじみのグループが8ミリで撮るゾンビ映画の製作過程に、謎の宇宙生物の存在を絡めた二段構えだったが、『未知との遭遇』や『E.T.』(82)に比べると過激でブラックなところが気になった。

 この違いは、スピルバーグとエイブラムスとの時代差が生んだものなのか。幼なじみのグループが遭遇する恐怖や不思議という点では、スピルバーグのものよりも、スティーブン・キング原作の『スタンド・バイ・ミー』(86)『IT』(90)の方が味わいは近いかもしれない。

 結果は、全体的には整理不足で構成も甘いから途中でだれてしまうのだが、エンドクレジットで流れるジョージ・A・ロメロ風の8ミリゾンビ映画に救われる思いがした。

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