『罪の声』(塩田武士著、講談社文庫)
グリコ・森永事件を題材にした小説。どこまでが事実かは不明であるが、グイグイと展開に引き込まれる小説であった。犯人グループは、この小説では内ゲバ党派の闘争に疲れ、イギリスに逃れた元活動家が絵を書き、納得行かない形で滋賀県警を辞めた元マル暴担当の警察官が、経済ヤクザを巻き込んで起こした、という話になっている。だが、「骨の髄までしゃぶる」近代ヤクザの性質のために、計画は破綻、仲間割れ。
1985年に成人式を迎え、京都で過ごしていた小生にとって忘れられない事件をどう料理するか、興味深く読めた。なお、党派は恐らく、革マルのことだが、当時聞いた話では、日本赤軍関連が犯人グループにいると疑われていたと聞いたことがある。が、事件の陰惨さを彩るには、革マルのほうがふさわしいかな。板子一枚下は地獄。深淵は脇にぱっくりと開いている。自業自得なら仕方がないが、そうじゃない子どもたちが地獄に放り込まれるのはやりきれない。また、この小説では食品会社のみが恐喝されたように書かれているが、実際は印刷会社も恐喝されていた。「おまえのとこの はこ よう もえるやろな」と。ソースは兄者。事件後、その会社に勤務していた。
確かに、事件の社会的インパクトはともかく、実際のところは矮小な利益と顕示欲というのが理由なんだろう。小生は仕手戦の一環だと思う。また、関西人は警察の不祥事、また県警・府警のセクショナリズムが原因で犯人を取り逃すこともあり、警察を揶揄する犯人グループに「ああ、おもろいことしとるな」という感情がなかったとは言えない。そういうことも、未解決の理由なんだろうな。にしても、「警視庁は東京を守る組織」は同感だ。とはいえ、オウムを巡る警察側の動きを見ると、セクショナリズムはかなり軽減したようにも思う。
印象に残った言葉を。
「俺らの仕事(記者の仕事)は因数分解みたいなもんや。何ぼしんどうても、正面にある不幸や悲しみから目を逸らさんと『なぜ』という想いで割り続けなあかん。素数になるまで割り続けるのは並大抵のことやないけど、諦めたらあかん。その素数こそが事件の本質であり、人間が求める真実や」(p523)
グリコ・森永事件を題材にした小説。どこまでが事実かは不明であるが、グイグイと展開に引き込まれる小説であった。犯人グループは、この小説では内ゲバ党派の闘争に疲れ、イギリスに逃れた元活動家が絵を書き、納得行かない形で滋賀県警を辞めた元マル暴担当の警察官が、経済ヤクザを巻き込んで起こした、という話になっている。だが、「骨の髄までしゃぶる」近代ヤクザの性質のために、計画は破綻、仲間割れ。
1985年に成人式を迎え、京都で過ごしていた小生にとって忘れられない事件をどう料理するか、興味深く読めた。なお、党派は恐らく、革マルのことだが、当時聞いた話では、日本赤軍関連が犯人グループにいると疑われていたと聞いたことがある。が、事件の陰惨さを彩るには、革マルのほうがふさわしいかな。板子一枚下は地獄。深淵は脇にぱっくりと開いている。自業自得なら仕方がないが、そうじゃない子どもたちが地獄に放り込まれるのはやりきれない。また、この小説では食品会社のみが恐喝されたように書かれているが、実際は印刷会社も恐喝されていた。「おまえのとこの はこ よう もえるやろな」と。ソースは兄者。事件後、その会社に勤務していた。
確かに、事件の社会的インパクトはともかく、実際のところは矮小な利益と顕示欲というのが理由なんだろう。小生は仕手戦の一環だと思う。また、関西人は警察の不祥事、また県警・府警のセクショナリズムが原因で犯人を取り逃すこともあり、警察を揶揄する犯人グループに「ああ、おもろいことしとるな」という感情がなかったとは言えない。そういうことも、未解決の理由なんだろうな。にしても、「警視庁は東京を守る組織」は同感だ。とはいえ、オウムを巡る警察側の動きを見ると、セクショナリズムはかなり軽減したようにも思う。
印象に残った言葉を。
「俺らの仕事(記者の仕事)は因数分解みたいなもんや。何ぼしんどうても、正面にある不幸や悲しみから目を逸らさんと『なぜ』という想いで割り続けなあかん。素数になるまで割り続けるのは並大抵のことやないけど、諦めたらあかん。その素数こそが事件の本質であり、人間が求める真実や」(p523)