TAMO2ちんのお気持ち

リベラルもすなるお気持ち表明を、激派のおいらもしてみむとてするなり。

読書メモ:『1988年のパ・リーグ』

2021-05-30 00:05:00 | 読書
読書メモ:『1988年のパ・リーグ』

 『1988年のパ・リーグ』(山室寛之著、新潮社)

 個人的なことから。1987年5月、いよいよ腰痛がひどくなり、大学野球のプレーを諦めた頃、子供の頃「打てば三振守ればエラー、走る姿はボケの花、アホ、アホ、アホの加藤!」と野次っていた(苦笑)加藤秀司さんが2000本安打をそろそろ達成しそうだ、ということで見たくなり、大阪球場に行った。そこで、門田さんの二塁打、加藤さんの2千本安打を見た。

 長年低迷したホークスであったが、見ていたら投手陣は素晴らしく、一撃ノ秀でた野手も一杯で、若手も伸びてきてこれから強くなるだろうな、やっぱり浪速のチームは南海やで、ゲンさん(途中でやめたけど野球部同期)が中学生の時バッテリーを組んでいた佐々木誠が伸びてきた、ということもあり、自分が諦めた野球の夢をホークスに託して応援するようになった。

 スタンドに足繁く通うようになり、「京大生で京都から通っている」ということで一部オールドホークスファンから可愛がられ、筒井ャJリ事件の頃からのホークスの話を聞くようになった。そんな折、「稲尾がロッテの監督やってたやろ、あれ、ロッテを平和台に呼ぶためやで、稲尾は博多に球団を呼ぶ活動をしてたし」と聞いていた。その頃は、四六時中出ていた南海身売りの話題だったけど、具体化する前に消えていた。ただ、翌年、川勝伝オーナーが亡くなった時にひょっとして?という思いはあった。

 というのは、その前の年の年の瀬、釜ヶ崎で越冬闘争に参加した時、様々な事情通のおじいさん(所感派上がりの元日共党員)に、「関西国際空港に呼応した難波の再開発で大阪球場はなくなる、ホークスもそのときに身売りする、神戸のユニバシアードがグリーンスタジアムと名乗る、そこに行くことになる」と聞いていたからだ。その時は伝さん次第、伝さんは大昔にホークスを手放す話を漏らして酷い目に遭ったけど、彼が亡くなったらいよいよ、、、とも。

 1987年から1989年にかけては、生まれてこの方生で観戦したNPBの試合の七割を占めるのではないだろうか。思い出が多すぎて、本書を読みながら胸が一杯となり、何度も涙をこぼしながら読み進めた。ホークスとブレーブスの身売りの背景と、伝説の10.19を三本柱に、パ・リーグの歴史を絡めて本書は構成されている。

 「甦れ 俺たちのライオンズ」という歌がある。怨念と悔しさを感じる、「裏の」パ・リーグのテーマ曲と小生は思う。博多の人間は熱くて冷めやすい。中西、稲尾のライオンズに熱狂したが、日本の産業構造が変わり、石炭が斜陽となるとともにライオンズに回る銭は減り、ライオンズは弱くなった。小生が野球に興味を持ったときはネーミングライツだろうか「太平洋クラブライオンズ」だったと思う。ロッテとの遺恨なんかの演出はあったが、かつての熱気は戻らず、西武ライオンズとなる。残されたファンは失ったものの大きさに気づく。その象徴の歌だった。ライオンズ全盛期、博多の街の学校、職場の話題の中心はライオンズであった。当時の少年達はライオンズの大切さを覚えていた。彼らの多くは中堅どころとなり、経営側に回った人たちは青年商工会議所で球団創設運動をしていた。その活動に稲尾さんも加わっていた。川崎市は「風俗と飲み屋の街、青少年に夢と希望を与えるプロ野球に相応しいだろうか」と市の幹部が言うような街。ジプシーオリオンズは、川崎も安住の地というわけにはいかなかった。誘致運動がオリオンズをターゲットにしていたことは本書に描かれている。

 ダイエー総帥中内は、大店法などで拡大路線が頭打ちとなり、伝説の西友ストアとの戦争をしていた。まあ、堤義明は懐深い、ということでw で。拡大路線のためには知名度向上したい、ということで、随分前からNPB参加を目論んでいた。そして、阪神のあの85年の熱狂を見て、近々球団を持ちたいと決意する。そこに、難波再開発のために大阪球場閉鎖、南海ホークス売却方針を知る。先見の明のある中内は、アジアの時代になると読み、福岡を本拠地とすることを選ぶ。勿論、ももちにドーム球場を建設することを考えつつ。鶴岡御大の言葉を借りれば「時の流れ、仕方がない」ということだろう。南海ファンとしては佐々木、湯上谷、岸川、加藤、両藤本らが本当に主力となるまで、3年待って欲しかったのだが。

 阪急の身売りについては、本書を読んでもやっぱり納得できない。宝塚野球協会の昔から、野球に力を入れていた阪急。一三翁は「ドラ娘(宝塚歌劇団)とドラ息子(ブレーブス)だけは手放してはあかん、グループの象徴」とおっしゃっていた。だが、ネオリベ糞社会になった日本の先駆者かつ象徴的な経理上がりのボケ(敢えてそう書く)は、赤字である二つのうちの一つを、手放した。本書にもあるように、球団社長以下、スタッフは一生懸命観客動員向上に力を入れ、キャンドルスティックパークをモデルにした西宮球場で三年連続百万人動員という結果を生み、ブレーブスこども会は大きくなるなど、成果が着実に出ていたのに。で。なんで身売り発表が10.19の日なん? であるが、阪急グループが頭を抱えていたのはよく分かった。当時の週ベのコーナーの言葉を使えば「魔の三重殺」であった。身売り承認のオーナー会議招集期限が10.21、逆算すると10.19までに発表する必要があったとのこと。発表の席で、上田監督が「この日となり、大変申し訳無い」と語っていたことが救いか。あ、某印刷会社で阪急の広報誌の製作をやっていた人が身近にいるのだが、18日の夜に差し替え命令が下り、翌朝までかかって差し替えたとのこと。上司は任せっきりで、翌日も通常勤務という鬼。そんな印刷会社、潰れてまえや、と思ったが、案の定梼Yしたw(事前に退職してて良かったね。)

 10.19のドラマは語り尽くされたように思う。これも個人的な話から。10月15日の大阪球場最終戦は悲しくて、認めたくなくて観戦しなかった。翌日の藤井寺での、南海ホークス関西最終戦はレフトスタンドで観戦した。異様な雰囲気と、何故か永田#51の最終回の応援を覚えている。近鉄に申し訳ないな、と、思い、17日は西宮球場の三塁内野スタンドで近鉄の応援。4回か、5回の無死満塁のチャンスを逃したのが近鉄にとっては痛かった。気合が空回りしていたように見えた。石嶺さんが決勝2ランを放った後、戸惑ったような表情だったな。これは19日の高沢さんの表情とかぶる。しかしまあ、この時には既に上田監督は阪急身売りを知っていたとは。そして、阪急は西宮でここまで近鉄相手に勝利していなかったとは。ラルフの本塁打で食い下がるも、阿波野さんの孤立無援っぽい敗戦だった。南海、阪急相手に痛い二敗。これは流石に・・・。と思った。その後のバスの近鉄球団歌の大合唱以降は、もう、有名。19日は研究室を早く出て、熊野寮でスタンバイ。すると、愛甲の本塁打とほぼ同時だったと思うが、「阪急身売り」だと? そこからしばらく試合の内容は覚えていないw 第一試合で一番印象に残っているのは、佐藤さんの憤死後の表情。泣いてたね。そして、梨田のセンター前と、亡くなった貴久の怒涛のホームイン、阿波野さんの帽子を叩きつけるようなガッツメ[ズ。格好良かったなあ。その時点で、熊野寮の事務室は満員。20人はいたかな。

 第二試合は高柳さん先発。いつも通り飄々と投げていたが、ちょっと力みがあったかな。マドロックの弾丸ライナー本塁打。普段なら、ファールなのに(苦笑)。んで、めったに本塁打を打たない吹石さん、真喜志さんが本塁打を打った時には近鉄有償を確信した。本書によると、森監督も覚悟したようだ。しかし。近鉄に負け続けていたロッテには、西武ファンの抗議電話があったほどで、意地があった。ロッテにも負けられない意地があった。水上さんのスーパープレーは小生の眼にはセーフに見えた。今ならチャレンジだよね。淡口さんの地上スレスレの捕球も印象深い。高沢さんは、あのゴロが捕球されてたら、あの本塁打はなかったんだ。野球のアヤだよね。羽田さんのダブルプレー、本当は心優しい西村さんが右打ちを予想して、敢えてセカンドベース寄りにいたと他の本で読んだが、まさかの正面ゲッツー。有藤監督は確認後、すぐに引っ込むはずが勝負の鬼になっていた仰木さんの一言で怒ったんか。勿論伏線はある。第一試合のロッテ佐藤のデッドボールにおける仰木さんの一言。ともあれ、あの抗議でしばらく大阪に帰られなくなったと聞いたが、果たして? 確かにあれは一連の流れで文句なくアウトだもんな。「負けるな羽田耕一、パ・リーグの王者」という応援歌が悲鳴に変わった後の、静寂、そして、守備につく近鉄ナインの顔、顔、顔。あれほど印象的なスメ[ツ中継の顔を他に知らない。放送のこともこの本に詳述されている。NHKのラジオ放送では、鈴木啓示さんが泣いていて、そのことをアナウンサーが伝えていたんだね。「今夜は酒に付き合ってください」「彼らは、負けていないんですよ」は印象的。その後、プロ野球は引き分けをなるべくなくする方向で動いていった。西武の優勝決定後、西武の人たちが近鉄を讃えていたのをよく覚えている。パ・リーグファンであることを大変誇らしく思った。

 日本シリーズでは、石毛さんはじめ、ナインが「勝利したことで近鉄ナインに顔向けできる」という言葉も印象的だった。パ・リーグファンは、「日陰者」だったので、チームを超えた共感を持っていた(では、綺麗事かなw 実のところ、女性ファンが矢鱈多かった西武には、やっかみと反感はあったw)  

 人の思い、願いが前提にあり、偶然が必然に変化する。それが歴史というものであろう。だが、そこには置き去りにされ、泣く者もいる、ということは、南海ホークスファンとして記しておきたい。そういう人たちのことも忘れないでほしい。その意味では、南海時代をサイトに詳しく書いてくれているソフトバンクには感謝している。
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読書メモ:『世界のニュースを日本人は何も知らない』

2021-05-23 23:18:00 | 読書
 『世界のニュースを日本人は何も知らない』(谷本真由美著、ワニブックスPLUS新書=278)

 国連などで働いてきて、今はイギリスで生活をしているめいろま姐さんの書物。海外出羽守の嘘を暴き続けて来た人、というほうが良いかw この本が前提としているのはサラリーマンなどの平均的日本人と思われるが、その「平均的」ってのは、実は世界と比較するとかなりの「高レベル」ではある。ただ、あちらのエリートと比較するとやっぱり情報収集力、分析力は低いと思う。日本では大学を含めてエリート教育は存在せず、海に隔てられた環境で、それなりに大きな市場があるので、皆かなり平等にまったりと生きていける環境にはあった。海外相手の仕事も限られた人だけが行うものであったし。だが、グローバリゼーションは格差を生み、海外のモノゴトが生活を左右し始めている。英語は三昔前よりカジュアルになった。それでも、「社会はのろのろとしか変わらない」(by トロツキー)。 この慣性・惰性に日本人の多くが流されていていいのか、という警鐘がこの本である。

 繰り返しになるが少し意地悪く言うと、姐さんの言うことは日本人のかなり多くの部分(サラリーマンという中間階級)に向けて書いておられるが、そのレベルの外国人が実のところどれだけいるのだろうか。向こうのエリートではないのか。と考えると、姐さんは日本人の平均を高く見積もっていると思われる。でも貿易立国を日本が維持するならば、この本に書かれていることには留意したほうがいい。特に、「情動」にまつわる産業が国益を左右する時代(他の国になるが、韓国が国家を挙げてエンタメに力を入れている時代)なので、海の向こうの生活実感や「常識」を知っておくのは大事なことだろう。

 その上で、政治経済については流石に色々と知っていることが多かった。とはいえ、知らないこともある。その意味ではとても面白く、勉強になった。


 では、知らないこと、大事だなと思うこと、そして引用されている本について以下列挙。

・日本は諸国から「少子化で転落していく国」と思われている。
・外国の暴動や政治混乱を知らないで旅行をしようとする日本人がいる。
・日本のニュースは確かにドメスティック、そしてアメリカならゴシップ誌にふさわしいニュースが多い。クオリティーペーパーのトップニュースは政治経済、特に国際的なものが多い。
・海外の先進国は移民、格差、中間層解体が日本の比ではない大問題になっている。階層移動も困難。

・ネット時代を中共は利用して、アフリカを中心にメディア買収を通じてプロパガンダを仕鰍トいる。(だがこのプロパガンダが、成功するようには小生には思えない)
・アメリカは映画をソフトパワーの主要な力とみなし、軍が大いに協力する(トップガンなど)。
・アフリカは資源大国だが、未だに植民地支配時代の生産や販売のルートが海外の企業や国内のごく少数の既得権者に独占されている。略奪を巡る内戦が繰り返される背景。
・マッキンゼーは新興国のプロジェクトを実施するが、大抵は権威主義国家であり腐敗している。特に中国との関係はアメリカ政府が問題視している。南シナ海を対象とする銀行とのプロジェクトにも関わっている。ウクライナのヤヌコーヴィッチやサウジ案件も含め、「政治と無関係」と言い張るのには無理があろう。
・トランプは「アプレンティス」という番組上がりのイロモノ悪徳不動産屋キャラとして人気を博した。髭切りマッチが名物w アメリカの庶民の生活や実感が分かっていたら当選が予想出来た。
・アメリカではIT産業以外賃金は上がっていない。その産業地区での物価は高く、サンフランシスコの四人家族の生活保護水準は約1300万円。カリフォルニアの最高賃金地区の報酬の中間値は2000万円。賃料が上がり、そうじゃない産業層の庶民を苦しめている。保険も年金も実質ないので、ワープアは死ぬまで働くしかない。
・Amazonには80歳代の労働者がいて、一日20キロ、倉庫を歩くようだ。
・アメリカ人全体の80%がャ潟Rレに疲れ、反発している。(More in CommonのHidden Tribesより) 綺麗事で上辺だけを取り繕ろう政治に嫌気。反リベラルに流れている。(先日の松尾さんの本の通り) トランプという悪役が人気者になる。
・トランプも参戦するWWEというプロレスに日本人の女子レスラー、ASUKAさんがいる。件p的なコスチュームでとても強く、人気者。
・ロンドンでは今や白人は少数派。インド、パキスタン、トルコ、トーゴ、ナイジェリア、リトアニア、インドネシア、メ[ランド、アルバニア、ベトナム、世界中からの人が商売をしている。昔ながらのカフ(伝統的食堂)はほとんど見当たらない。ニューヨーク以上の人種の坩堝。人口の40%以上が英国生まれの外国人。学校で話される言語は300。白人は郊外へ移動。
・イギリスの医療は建前上は無料だが、医療予算は限られており、穴埋めのために私費で治療を受けに来る患者を中東やインドから受け入れている。請求額は公開されていない。アラビア語しか通用しないフロアもあるらしい。
・2066年にはイギリス生まれの白人は、イギリスの少数派になると推定されている。
・スウェーデンはEUで、人口あたり最も多くの難民を受け入れていたが、難民問題で悩み、極右勢力が伸長。欧州全体では南に行くほど反移民。
・アメリカは学校による格差も酷い。隣国カナダは社民主義に近く、住みやすい。移民受け入れも盛ん。「不足している技能職」が多い。

・日本車(ライフラインである)を通じて、日本人の几帳面さや勤勉さを感じる国に親日国は多い。ボリビアやパラグアイは移民の勤勉さで国に貢献していることも親日の要因。
・国連はドブ聡怩ナもめる町内会、とは言い得て妙。職員は約5万人で予算は東京都より少ない。元の仕事は無法国家への「ガン付け」。日独が大人しくなったので、開発援助や各種調査、漁獲割当なんかを始めた。が、強制力はない。中露米の横暴を抑え込めないので「意味ないじゃん」と感じる人や国も多い。
・リヒャルト・クーデンホーフ=カレルギー(青山栄次郎)の「汎欧州主義」の具体化がEU。理想主義は良かったが、域内格差が広がったw 税金や軍隊の統一には反対も多い。
・ドイツは難民受け入れを表明したら、EU内の移動が自由でドイツが豊かなため難民が押し寄せ、泡食って勝手に各国に人数割当を発表。その後のドタバタは知られている通り。パンクの祖国wイギリスは特に激怒しBrexit。理想を語る人間は往々にして無責任(ドイツのこと)。EUは崩壊寸前。
・物価、特に家賃が安くて治安が良い日本は住みよい国。多くの国では家賃は治安の代償。差別が即、生命に関わることもない。(ちなみに小生には日本が治安が良いからと就職先に選んだ知人のインド人がいる。)
・移民を受け入れると、その集団は創造的になり、仕事も増える。(cf.アイオワ大学、ミシガン大学、シアトル大学の共同研究成果、『年収は「住むところ」で決まるーー雇用とイノベーションの都市経済学』(エンリコ・モレッティ著、プレジデント社)。
・「ゲイとロックバンドのいない町は経済発展競争に負ける」(『クリエイティブ資本論ーー新たな経済階級の台頭』(リチャード・フロリダ著、ダイヤモンド社)。

・ドイツは60年代からトルコを中心に移民を積極的に受け入れてきた。昔はトルコ人は帰国する前提だったし、外国人は母国語で教育を受けてきた。1999年までのドイツは血統主義を守り、両親ともドイツ人ではない場合には国籍を与えなかった。一方、ムスリムは地域に溶け込まなかった。2012年の調査ではムスリムも約半数は溶け込まず別々の生活を望んでいる。
・2010年にメルケル首相は難民受け入れを表明したが、ドイツの多文化主義の失敗を認め、「移民はドイツに溶け込む必要があるし、ドイツ語を学ばなければならない」「キリスト教的な人道主義につながりを感じ(中略)、受け入れない人はここにいるべきではない」と述べた。
・リベラルな建前があるので西欧は口には出さないが、移民を受け入れたくないのが本音。そんな建前は東欧にはないので「キリスト教徒だけ受け入れる」とはっきり言う。
・一方、多くのムスリムはリベラル化しているが、そうじゃないムスリムは地元民と衝突している。
・イギリスの保守派のムスリムは「男女別の講義をせよ」と大学に圧力を鰍ッている。信教の自由vs男女同権。どちらも自由・民主主義の建前。訴訟にまでなっているが、費用は税金から。
・過激なムスリムが仕鰍ッる公立小学校の乗っ取り。「トロイの木馬作戦疑惑」と言われる。イスラム教に極度に偏った教育が施されていたとのこと。カウンターとして「イギリス的価値を教育すべき」と中央政府が基本方針を強調。公立学校の自主運営が利用されたと言える。
・フランスでは公務員が職場で宗教的な服装をするとライシテ違反。ここから派生して「ニカブ着用禁止」。顔を隠させないテロ対策という面もある。
・イギリスではヘテロ性愛者の25歳白人男性が警察採用試験を受けて不合格になった折、「もっと多様性のある人でないと採用できない」と言われ、激怒。労働法廷に訴訟を起こして勝訴。逆差別を「制度化」していた警察のありようが暴露された。
・汚職が発覚したら、それが出ないシステムを作ろうとするのではなく、次は自分が汚職する側になる、というのが途上国の考え方。ゴーンはフランスで捕まったら、VIP待遇で拘留された。
・フランスの風刺画は黒人、ユダヤ人、アラブ人を揶揄できなくなったので、日本人を含むアジア人を揶揄する方向になっている。日本は遅れているという思い込みから、笑いものにする傾向がある。特に日本人は反撃しないのでやりたい放題。因みに中国人はそうじゃない。イタリアのCMに怒り、不買運動をした。日本人は我慢をためて爆発する。西欧のボケ老人のアジア蔑視は強烈だ。

・黄色いベスト運動は、そもそもはフランス南部在住のャ泣gガルのレンガ職人が「怒りのグループ」というものをFacebookに立ち上げたことがきっかけ。黄色いベストは乗用車に常備が義務付けられている安全帯。この運動が、2018年前半にFacebookがアルゴリズムを変えて、ローカルニュースや知人のコンテンツが優先的にアップされるようになり、「関係者」に広がっていった。アルゴリズム一つの変更がトレンドを作る時代である。
・AIは情動労働に向かない。逆に言えば単純労働や一定の「知的」労働を代替する。創造的な知が必要とされるが、日本の教育は旧態依然である。
・富裕層は独自のネットワーク(コネ)を有している。テック産業はある地域に集中する。そこにコネと情報があるから。だがそれが行き過ぎると貧富の差が色んな意味で広がり、社会全体が貧しくなり、富裕層の足許も掘り崩すだろう。Distribution が大事である。
・先端ITテック産業も、社内に格差が大きすぎると創造性が損なわれる。Googleなどでセクハラ・モラハラが問題となり、モラル的に受け入れないと多くの幹部が退職した。
・人間の行動原理は、とどのつまりは感情。ネット時代はそれが増幅される。
・人間を縛り付ける組織は発展に限界がある。楽しい職場こそが創造性があり、成長する。良い仕事をしたければ沢山寝、こまめに良い水を取ること。男性は一日3.7Lの真水かw 良質のタンパク質と果物、軽い運動も。
・富裕層はアートを買う。資産として。現代アートが人気。

・富裕層は複数の国籍を有することが多い。政情不安や治安の悪さのリスクヘッジ。国籍は販売されている。イギリスの旧植民地に多い。マルタが人気。また、オーストリアは28億円で即時取得出来る。キプロスは2.4億円。
・日本のパスメ[トは189ヶ国にビザ不要という世界最強のパスメ[ト。日本国籍は最強の部類。
・人間の問題解決能力は六〇歳まで伸びる。「若い」が過度に尊重されるのは日本のだめなところ。
・成功にとって大事なのは知能よりは「非認知能力」。共感力、受容力、我慢、感動など。中国人の間ではそういうところに眼をつけた教育が流行している。理論的にはシカゴ大学のジェームズ・J・ヘックマン教授の「幼児への投資に対する生産性の議論」が話題になった。著書としては『幼児教育の経済学』(東洋経済新報社)。生まれが貧困でも、環境を整えれば非認知能力が伸びる。公的教育の充実が大事だな。とはいえ、遺伝でIQの50%は決まる。
・目先の利益のために効率を追求しすぎると、創造性が殺される。理論としてはエドワード・テナー氏。データやシステムは、過去のもの。小生の好きな言葉で言えば「死者が生者を捉える」ということ。無駄を根こそぎ排除するとペンペン草(未来の花)もなくなるということ。新しいものというのは「無から有」であり、ファーストペンギンになるにはそれがないといけない。
・メルヴィルの『白鯨』は当時としては突飛もない小説で、この時代が今のような出版の厳しい状況でAI診断にて出版が決められていたら世に出なかったのでは。
・人生の幸福度でいちばん大事なのは「自己決定権があるかどうか」である。研究者は西村和雄特命教授(神戸大学社会システムイノベーションセンター)と八木匡教授(同志社大学経済学研究科)、論文は「日本経済の成長と生産性向上のための基礎的研究」(独立行政法人産業研究所)。イギリスでも同様の結果。イギリスの場合は配管工(スペシャリストの一つ)が最も幸せな職業。
・人は合理性、特に経済合理性に支配されるよりは、感情を中心とする情に動かされる。確かに経済学はそちらにシフトしていっていると小生は思う。

・アメリカ人は信心深い人が多く、沢山の宗教コミュニティーがある。南部の本屋はキリスト教の雑誌、ラジオ放送は説教や宗教的なカントリーミュージック。大学では妊娠した女性が退学。「宗教が自分の生活にとって大切だ」と答えるアメリカ人は50%。一方、スコットランドでは梼Yする教会が。
・今のアメリカで最も学歴が高くて豊かな人種はアジア人。とはいえその内部での格差は大きい。移民IT技術者の多くがアジア人。特にインド人が高収入。とはいえ、ブータン系は33%が貧困層。
・OECDの調査によると、16〜24歳の人を対象に「初歩的な読解力と計算力が身についていない人の割合」は、イタリア、アメリカ、イギリスでは30%。55〜65歳についてはスペインは55%以上、イタリアは50%以上、フランスは50%近く。日本は16〜24歳で10%未満。高校修了者は97.4%(2018年文科省調査)。これでも学費は世界と比較して安い方。大卒はアメリカでは卒業時に1000万円のローンを抱える。入学も親のコネや収入、課外活動がモノを言う。金持ちの子弟が有利。イギリスも、入試問題の予想情報にアクセスできるかどうかというネットワークが重要。コネ社会。公表されないが、結果からしたら家柄や人種を評価している。
・「日本に存在する初等中等教育の仕組みや大学入試の平等さを、いま一度見返してみてほしいものです。この制度が崩れたときに日本は国力を失うことになるでしょう。」(p204)
・イギリスのパブは廃れ、国際色豊かな食堂が隆盛している。「ビジネス税」という法人税と付加価値税が上がり、「パブで一杯」することのコスパが悪くなっていったため。ビジネス税は、不動産の評価額に対してかかるので、不動産が高くなると税金も高くなる。個人店舗は中心部から撤退し、チェーンばかりが残る。酒税も高い。
・EU国籍の人はビザ不要でイギリスに行き、労働出来るので大陸の料理屋が増えている。
・実は借金大国のイギリス。ペイデイローンが猖獗を極めている。簡単な信用調査か、それさえないに等しい会社が運営。年利は10〜60倍(「%」ではない)。クレジットカードを持つにはちょっとややこしい評価による「クレジットスコア」があり、収入が低かったり雇用が不安定だとお金を借りることも住宅ローンも組めない。このスコアのためにペイデイローンに頼る。かつてのサラ金地獄に似ている。
・オランダ人はケチ過ぎて嫌われていて、会合なんかで呼ばれないようになる。杓子定規なルールとその運用や、騒音にうるさすぎることも嫌わる要因。
・イタリア人は風呂嫌い。だが、ビデのように衛生については進んでいる面も。火力発電の国だから電気代が高い。水道とガス代は日本と同等以下。高いという印象なので、シャワーさえも3日から週に一度。「このスタイリング剤を使えば髪型が3日とか一週間キープ出来る!」と書いている。硬水ゆえか、サラサラヘアー。
・ドイツ人がスケベで性におおらか、なのは何かのメモでも書いたな。「サウナクラブ」という性風俗がある。「カチンスキー報告」では、ャ泣m解禁でそういうのが出回ると、性犯罪が少ないという結果が出ている。日本も性犯罪は少ないと言われる。

・情報は公的なところ、大学、大企業、資格所有者、学会にまず当たるべき。メディアは小生は余り信用しない。
・専門家の評価の高いサイトは信用する。
その上で、著者の評価するメディアは(一部略)
National Public Radio, TIME Magazine, The Christian Science Monitor, The Los Angeles Times, USA TODAY, CNN, NBC News, CBS News, ABC News
Forbes Magazine, Bloomberg Businessweek magazine, FORATUNE magazine, Financial Times
National Review, The Weekly Standard, The New Republic, The Nation
BBC News, London Evening Standard
Daily Telegraph, The Spectator
The Times, The Guardian
Reuters uk
・「クリティカルシンキング」は大事だね。そのためには『考える技術・書く技術ーー問題解決力を伸ばすピラミッド原則』(バーバラ・ミント著、ダイヤモンド社)
 『シナリオ・プランニングの技法』(ピーター・シュワルツ著、東洋経済新報社)

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