TAMO2ちんのお気持ち

リベラルもすなるお気持ち表明を、激派のおいらもしてみむとてするなり。

読書メモ:『迫り来る革命 レーニンを繰り返す』

2005-08-31 22:29:21 | 読書
『迫り来る革命 レーニンを繰り返す』(スラヴォイ・ジジェク著、長原豊訳)

 本書はまず、現在レーニンに関する嘲笑を紹介するところから始まる。『現実に不効率な独裁で行き詰まった<現実の社会主義>という実験』、その責任を問い、余りにも態様が変化した資本主義において権力奪取するなら『権力の暴力的奪取やそれに続く「プロレタリア独裁」などといったことは、ことごとく放棄されねばならない「死に体の概念」じゃないのか』と。よく聞く話だ。民主主義を疑わぬ自由主義者がよく言う言葉だ。それに屈してか、我らが日本共産党は『国家と革命』を捨てたw。

 だが、著者は言う。『ヨーロッパの社会民主主義がことごとく「愛国路線」を選び採ったとき、(中略)まさにそれは全世界が消滅するカタストロフだった。(中略) #絶望# の ##この## 瞬間、 ##この## カタストロフが、(中略)第二インターの痼疾《こしつ》だった進歩主義史観にもとづく歴史主義を打ち砕くためのみちを切り拓いた(中略)一回限りの革命的好機を感じとることができたレーニン、このレーニンが、まさにここで生まれた。』

 このようなレーニンは、あれやこれやの図式や言葉で語りえるものだろうか、と小生は思う。余りにも深くレーニンを「潜らなければならない」。そしてなお、直接的に役立つものは殆どないだろう。でも、それでもなお、我らの時代の不確かさ――そしてそれは今の世の中を支配する自由主義や民主主義の本質的不可能性に依拠する――は、#いかにレーニンの時代と態様が異なろうとも#革命の可能性を残す。それに対するには(差し迫る破局、それとどう闘うか?)、やはりレーニンのテキストは役に立つだろう。でも、どうやって?

 『レーニンへ回帰するのではなく彼をキルケゴール的な意味で #反復すること# 、(中略)今日的な配置図のもとでレーニンと同一の衝動を奪回すること』である。『その基本的経験が旧い座標軸が役立たないことが明らかとなった崩壊的な新たな配置図へ放り出されることによって、マルクス主義を発案しなおすことが迫られるレーニン』を目指すことだ。良く知られることだが、レーニンはマルクスを突き抜け、ヘーゲル大論理学を学び、革命を捉えた。深く、深く、潜り、捉えるレーニンだ。ドリン、ドリン!

 本書はこのように始まる。だが、その後は各種論稿を集めたので、やや分散的であり、必ずしも本論に沿うものばかりではないが、各論において『レーニンの時代との差異』(大衆の置かれた情況、意識――よって大衆文化論を紐解く)あるいは『同一性』(革命の可能性の残存;社会の本質的不安定、分裂などなど)を示す。一つ一つの章は面白いが、長くなるのでいくつかにとどめておくと、『魁!男塾』を思い出させるような「4 シューベルトを聴くレーニン」;仲間意識はタブーと困難に対する共犯意識にこそあること、快楽、憎悪を見えなくすることで無差別*ウ関心を常態化し、それはとりもなおさず愛の完成を常態とするのだが、同時にそれは死せる世界であることを暴いた(キルケゴールの言う「死んでいる隣人への愛」)「5 レーニンは隣人を愛したか?」、とりあえず成立していた社会主義が、まさに資本主義の矛盾を否認したがゆえに停滞したことを暴いた「8 純粋政治に抗して」、現代社会のありようがますますバーチャルになり、それに飲み込まれるさまを描いた「9 信ずるところを知らざればなり」(これは、そうであるがゆえに先送りのシステム、資本主義のゾンビ性――とっくに死んでいるはずなのだが、生きている!――のカラクリを示している)、現在の革命主体――プロレタリア――のありようを暴き、それを表象するのは ##失業者## と述べた「10 「文化資本主義」」、この辺が本題への助走だろうか。

 さて、「11 ャXト・ャ潟eィクスに抗して」の冒頭『とすれば、こうした事態のどこに、レーニンはいるのだろう?』で本論という気がする。11ではwwwの存在を巨大銀行に対比し、問題は所有とヘゲモニーであることを示す。それは、党なき運動の脆弱さを暴く。その状態は、「全体としてどうか」というビジョンがなく、様々なものが爆縮する時空の短絡という革命を捉えることは出来ない。それは予定調和的な敗北であり、ましな結路としても<第三の道>という日和見主義である。かような状況ではサバルタンは排除され、<国家>では政治的に ##再現前¢繹ハ## されない(「13 控除の政治はあるか?」)。そのルサンチマンは、容易に外部において「敵対」となり、員数となるのだが。民主主義の陥穽である。だから、民主主義を通じて(というか、それのみの)社会革命は本来あり得ない。

 とりあえずの結論は、「結 回帰と反復」のこの言葉だろう。『レーニンを ##反復すること## はレーニンへの ##回帰## を意味し ##ない## ――レーニンを反復するとは、「レーニンが死んだ」ことを受け容れることである。彼固有の解決策は失敗した、あるいは恐ろしい形で失敗したことを受け容れることである。だがそれはまた、そこにやり直すに値するユートピア的火花が存在したことを受け容れることでもある。レーニンを反復するとは、レーニンが #以前やった# ことを繰り返すことではなく、彼が #以前やることに失敗したこと# 、彼が失った好機を繰り返すことである。』

 そういうわけで、「かくあるべし」というものは、この本にはない。それは、明示性において屹立するレーニンに反すると思う(笑)。その態度は、しかし、革命的情勢とは言えない今、明示#しない#誠実さにおいて、1914年以前のレーニン的なのだ。この本は、革命のために書かれたと思うから。だが、備え方は・・・・いや、我々読者の課題なのだろう。

 あ、そうそう。この本に通底するキーワードを一つ書いておく。【リベラルおよび民主主義の不可能性《ありえなさ》】

 それから、ゾンビとしてのマルクス=レーニン(=トロツキー)主義者およびレーニン批判者への痛罵が面白かった。p253。長い。
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15年ぶりくらいにセーフティー成功

2005-08-28 20:35:17 | 野球
塁間5秒強の超鈍足なので、まあ、成功しないのが普通。だけど、相手の投手の術中に嵌っていたし、味方の好打も正面を突いていたので、アウトになって元々ということで敢行。

相手があせって内野安打。これをきっかけに3点入った。

流れを読み、相手のリズムを崩すことが野球では非常に大事である。


ところで、相手の投手は10球に1球くらい、130km/h超の球を投げていたが、あとは変化球ばかりだった。聞けば、肘を壊しているらしい。使い痛みと思うので、2年くらい野手をやればいいと思うのだが。
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社会主義国家という形容矛盾について

2005-08-28 12:37:17 | 幻論
今回、別に批判するつもりは余りない。

今、「フランスにおける内乱」というものを電子化して思ったことを書く。

社会主義・共産主義の大事な要素は国家の死滅、国家という枠組みの無効化・解体を資本の運動に先駆けて実現することと思う。

パリ・コンミューンは、その理想を内包していたと思う。しかし、理想はともかく、かの闘争はブルジョアジーの「普遍性」に敗北した。少なくとも、政治=軍事的には。フランスのブルジョアジーはパリをして恥知らずな解放をし、ドイツの反動どもと手を結んだ。プロレタリアではなく、ブルジョアジーこそ、自らの利益のためには国を裏切るのである。

したらば、フランスの、あるいはロシア革命後のソ連は、自らを守るために国家を措定し、暴力(軍事力)の裏づけとともに共同幻想を抱かずして、いかに自らを守れたというのだろう?

ここに悲劇的な逆説(歴史の弁証法)がある。国家とは、そもそも「お前らに屈従なんかできるかい!」という排他性の原理のもとに成り立つのだから、社会主義という「異質」を承認できないブルジョア国家に囲まれているならば、それに対して排他性を発動しなければ、自らを守ることは出来ない。


今、次の文章は「巻末の参考資料」の位置から、大きく救い出すべきではないだろうか? 愛国を喚きながら、全然愛国的でない情勢に屈従しろ、と喚きたてる詐欺師どもがTVなぞに跳梁跋扈しているのだから。

〔67〕 一八七〇年のドイツ語版では、このあとに次の文章が挿入されている。「そして、愛国的なわめき屋どもは、労働者を慰めてこう言うだろう。資本に祖国はない、賃金は需要供給の #非愛国的な国際的# 法則によって規制されているのだ、と。だから、いまやドイツの労働者階級がみずから発言して、中産階級の諸君がこれ以上 #労働者階級の名において# 語るのを許さないようにすべき時ではないだろうか。」
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読書メモ:『BC級戦犯裁判』

2005-08-27 09:54:24 | 読書
『BC級戦犯裁判』(林博史著、岩波新書)

 本書はBC級戦犯(通例の戦争犯罪裁判、人道に対する犯罪裁判)がどのようにして行なわれたかを書くだけではなく、歴史的にどのような意味をもったかをも記す。

 日本ではよく言われることだが、例えば牛蒡(欧米人には木の根にしか見えないらしい)を食べさせたことが犯罪とされたり、色々と理不尽な判決や誤認逮捕などがあり、BC級戦犯は正当性がないとされる。著者は一定その見解の正当性を認めた上で、さらに二つのことを述べる。

 まずは、本裁判で判決を下した側の都合に非常に左右されている点で正当性に欠ける。すなわち、自分たちが植民地支配していた地域の状況によって、ヘゲモニーが獲得できる場合は見せしめのように日本軍の犯罪を裁いたところもあれば、逆に獲得できないところでは日本軍の犯罪を裁かなかったなど、戦勝国の恣意が強く反映され、本当の被害者の視点は利用されこそすれ、本質的にその立場に立たなかったこと。特に女性への犯罪は殆ど無視されていた。民衆の立場から見て本裁判の正当性には疑問が残る、と。

 一方、不十分でご都合主義的な裁判ではあったが、日本軍の犯罪を裁いた、そして弁護人を付けるという形式を守って裁いたがゆえに、民衆の報復的蜂起は抑制され、そして「戦争」という非日常の場における人間のありようの「剥き出し」(レイプ、略奪、殺人etc.)を罪として裁くことにより、後世における戦争犯罪が抑制される効果をもたらしたこと、この点では本裁判は意味があった、と。

 しかし、後段については、敗者は裁かれたが、勝者は裁かれなかった。原爆や大空襲は裁かれなかった。これが現在のイラク、アフガンでのアメリカの無差別殺戮(彼らがどう言いなそうとも)を許している根拠の一つではなかろうか、と。


 そこで二つ宿題が見える。民衆が戦争を裁くにはどうすればいいか? 戦勝者を裁くにはどうすればいいか? 答えはまだない。ただ、「戦争が全部悪い」というのは、思考停止である。

 『私は貝になりたい』(加藤哲太郎)の文章をp205より引用したい。

 戦争という人間の概念が、無数の人命を奪ったのではない。反対に、戦争に従事したあなたが、あなたの手で張三、李四を殺したのだ、山田や鈴木を殺したのだ。あなたとは誰か? それは、あなた個人である。侵略戦争に協力した世界のすべての人の一員としての、あなたである。

 これは、民衆の戦争犯罪を告発するものではなかろうか? 軍人であっても、良い意味での人間性を失ってはならない、ということを言っているのではないだろうか? 勿論、軍隊の中にあっては二重拘束である。だが、二重拘束であるからと言って犯罪に加担すれば、それは末代まで祟るのだ。

 一国平和主義の欺瞞の破綻の代償として、今の日本では一見勇ましいことが流行っている。だが、その勇ましいことは 思考停止と好一対であり、実は戦後サヨクの裏返しに過ぎない。新しい歴史教科書を巡る狂騒がそれを示している。


ともすれば二項対立の力の世界になりがちな、政治の世界に引きずられる課題であるがゆえに、民衆の戦争犯罪を問うことはサヨクの側からは「利敵行為」であるかのように言われた。その構造を批判している本が、左翼の側から出たことは、大変嬉しいことである。

 戦後を覆った思考停止から脱却するために本書はあるのだと思う。
「絶対平和論からは、侵略戦争や戦争犯罪という認識は生まれにくい。平和憲法を支持すること、日本の戦争責任をあいまいにすることが結びついていたのが、戦後日本の平和主義だった。」(p212)
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立花隆さんはわざとボケたのかな?

2005-08-22 21:02:35 | よしなしごと
共産趣味者としては必読の書「日本共産党の研究」「中核vs革マル」の著者である立花隆さんの文章を読む。なかなかに読ませるのだが、ちょっと気になったことを書く。

http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050811_kaigai/index2.html

の中に
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まるで共産党のスローガン「日本はアメリカ帝国主義の従属国家」の焼き直しみたいだったので、私があっけにとられつつ彼の所説を聞いていた。そのうち共産党の唱える抽象的で図式的な従属国家論とはまるでちがう、リアリティに富んだ日本の従属国家論を例証付きで次々に聞かされて、私はだんだん納得させられていった。
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とあるのだが、共産党を研究した割には共産党をナメてるのかな、と感じた。そうじゃない。共産党は(当時でも、今でも)あちこちにシンパがいて、具体的な確証を掴んでいるのだ。新左翼諸君とはわけが違う。大企業に席を置いていれば、俺みたいな人間でさえ、対米従属の証拠のような話は時々聞く。ましてや、官僚ならば。だけど、それを共産党は「具体的な例証つき」で開示するわけにはいかないのだ。ソースがばれたら、どうする??

大変気になったので記録しておく。
コメント (2)
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