足腰大丈夫な内に、出来る限り不要雑物整理をしようと決心してから久しいが、正直あまり捗っていない。書棚や天袋、押入れ等に詰め込まれていた古い書籍や辞書、百科事典等の類も、ここ数年間で大胆に整理処分してきたつもりだが、中には、「これ、面白そう?」等と目に止まり、残してしまったものも結構有る。その中のひとつに、多分、長男か次男かが、学生時代に使っていたものに違いない、小町谷照彦著 文英堂の「小倉百人一首」(解説本・参考書)が有る。パラパラとページを捲ってみたところ、なかなか詳しく、分かりやすく、決して、「今更 向学心?」なーんてものではなく、子供の頃、作者や歌意も分からないまま、「けふ、けふ、けふ・・」「なほ、なほ、なほ・・・」等と、正月になると必ず家族でやっていた「百人一首かるた取り」を思い出して懐かしくなってしまったからで、今更になって、「へー!、そういう歌だったのか・・」、目から鱗・・になっているところだ。
「小倉百人一首」は、奈良時代から鎌倉時代初期までの百人の歌人の歌を、藤原定家の美意識により選び抜かれた秀歌であるが、時代が変わっても、日本人の心情が呼び起こされるような気がしてくる。
ブログネタに?、頭の体操に?、いいかも知れない等と思い込んでしまい、昨年、一昨年、「春」、「夏」、「秋」、「冬」、季節を詠んだ歌を取り上げて、ブログに書き留めたが、今回は、最も数の多い、「恋」を詠んだ歌を取り上げて、順不同、書き留めてみることにした。
百人一首で「恋」を詠んだ歌 その21
見せばやな 雄島のあまの 袖だにも
ぬれにぞぬれし 色はかはらず
出典
千載集(巻十四)
歌番号
90
作者
殷富門院大輔
歌意
(悲しい涙で色が変わってしまった私の袖を)つれないあなたにお見せしたいものですよ。
(あの古い歌のように)雄島の漁夫の袖でさえも、(波で)濡れそぼっても
(悲しみの涙で濡れたのではありませんから)色は変わらなかったのに。
本歌、「松島や 雄島の磯に あさりせし あまの袖こそ かくはねれしか」
(雄島の磯で漁をしていた漁夫の袖のように、私の袖も悲しい恋の涙で濡れてしまったことですよ)
(後拾遺集、源重之)の趣を利用し、さらに内容を深めた
いわゆる「本歌取り」の歌。
注釈
「見せばやな」は、「見せたいものですよ」
「つれないあなたに・・・」の意を含んでいる。
「雄島」=宮城県松島湾の島の一つ。歌枕。
「あまの」の「あま」は、漁夫のこと。
「袖だにも」の「だにも」は、「・・でさえも」と訳す。
「ぬれにぞぬれし」=「濡れて、濡れて(酷く濡れた)」の意。
「色はかはらず」=漁夫の袖の色が変わらない・・の意。
「自分の袖の色は変わってしまったのに・・・」の意を含んでいる。
殷富門院大輔(いんぷもんいんのたいふ)
従五位下藤原信成の娘、
後白河天皇の皇女亮子内親王(殷富門院)に女房として仕えた。
鎌倉時代初期の女流歌人で、歌合等で活躍した。
家集に「殷富門院大輔集」が有る。
参照・引用
小町谷照彦著「小倉百人一首」(文英堂)
(つづく)
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