807話)7つ目にみた候補地に決定

 このような森林をそのまま交通の便利なところに移せば、それだけでりっぱな研究対象でしょう。私の胸のなかでも、植物園の夢が大きく膨らみ始めました。あな恐ろしや、立花ウイルスの感染力!

 李向東が候補として探してくれたのは7か所。遠田宏先生と1つずつ見て回るんですけど、いいところがありません。霊丘県南部は山ばかりで、平らな土地がほとんどないのです。道をつけるにも、井戸を掘るにも、私たちの手に余りそう。7月の暑い時期で、長距離を歩くため、だんだん疲れてくるんですね。

 「もういいよ、どこも似たようなものだから、最初のところにしようよ」と私がいったのは、7つ目にむかう途中。すると李向東が、「あそこの高いところまで登れば、ようすが見える」というので、いやいや、そこまでいったのです。すると李向東が、あそこのポプラが茂っている下に、水源の小さな池があります」と話しました。

 なんだ、それを先に言えよ! いちばんの問題が水じゃないの。ここまできて引き返すわけにはいきません。いってみると、たしかに小さな池ができており、その上手に水の湧き口がいくつかあったのです。

 何年かまえまで、ここに数軒の家があり、村の名は流黄水だったとか。でも、水は澄みきっていて、飲めるほど。龍喝水(龍が水を飲む)というのがもとの名前だったのに、村の貧しいことを笑って、ほかの村の人が流黄水と呼んだのだそう。決めた! ここに決めましょう。
  
 最初にここを案内してくれていたら、こんなに疲れることはなかったのに。李向東のようすからすると、彼は最初からここを本命だと考えていたよう。写真は着工前の最終候補地です。
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