606話)伸び悩んだカササギの森のナラ

 実験林場・カササギの森にナラを植えたのは、建設をはじめて2年目の2002年春のことです。大同事務所の技術顧問だった侯喜さんが「植えてもいいか?」ときいたので、私は「まだ苗が小さすぎるから、来年にしたらどうだ」と答えました。ナラの苗は、南天門自然植物園で、2000年から育てはじめていました。すると侯喜さんは、「大同ではまだだれもナラを植えた人はいないから、やってみたいのだ」といいました。そういうことなら、ぜひ植えてもらいましょう。

 枯れることはありません。カササギの森のほうがだいぶ寒いはずですけど、ちゃんと越冬します。でも、伸びないんですね。同級生のナラが、南天門自然植物園ではぐんぐん伸びているのに、ここでは育ちません。

 まったく伸びない、といって、中国側の関係者はバカにします。ナラをバカにするだけでなく、ナラにこだわっている私のこともバカにしているよう。私はここを訪れる人たちに、「本来ここに育つべき森林の主人公になる木です。でも、どんな芝居でも最初から主人公が大活躍することはないでしょ。脇役が場をつくり、ここぞというときに主人公がでてきて大活躍する。森林の再生もいっしょです。将来の主人公となる木が、このナラです」と説明しつづけました。
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