PRIDE34 ~KAMIKAZE~
リストを眺めたかぎりでは面白そうにも見えないが、蓋を開けてみると意外と好試合揃いだったPRIDE34について。
○中尾"KISS"芳広VSエジソン・ドラゴ× 1R9:15袈裟固め
ヒース・ヒーリングに試合前にノックダウンされて以来完全に道を踏み外した感のあるアマレス・エリート中尾。溢れるボクシングセンスに恵まれながらも結果を出せないドラゴ。未完の大器同士の一戦となったこのオープニングマッチは、中尾の成長が目立った。ボクシングの攻防ではドラゴに遠く及ばないものの、バックスピンキックや前蹴り、大振りのフックからのタックルや片足タックルなど仕掛けの多さでドラゴをボクシングに集中させない。それはテイクダウンしてからも同様で、パウンド、膝などのプレッシャーで相手の注意を反らしてポジショニングの攻防を有利に進め、アームバーなどの関節技を狙うという流れが完全に体に叩き込まれている。最後は袈裟固めで文句なしの一本。強くなった。中尾。
○バタービーンVSズール× 1Rアームロック
180㌢185㌔のバタービーンと200㌢185㌔のズール。スーパーヘビーの名にふさわしい二人の戦いは、意外な早期決着となった。ゴングと同時に両者突進。ノーガードのどつき合いで場内を沸かせると、そのまま転がった……もとい、グラウンドに雪崩れ込んだ。上になったのはバタービーン。さすがに自分と同じ体重のものが上に乗ると身動き取れないのか、ズールまったく抵抗らしい抵抗ができない。鉄槌を落とされ脇に膝を叩き込まれ、アームロックで極められるまで一切いいとこなし。経験の差が素直に勝敗を分けた。
○瀧本誠VSゼルグ"弁慶"ガレシック× 1Rアームバー
右目の眼窩底骨折から復帰した瀧本の対戦相手はCAGERAGEのミドル級チャンプガレシック。弁慶のコスプレで登場した「変な外国人」。
ガレシックの強さの秘密は長い手足だ。薙刀のように長いリーチから飛び出すテコンドー仕込みの蹴りが良い。予備動作のほとんどないところからすんなりとつま先が飛ぶ。ロー、ミドル、ハイと散らし序盤瀧本を追い込むも、足を払われてグラウンドに持ち込まれてからはずっと瀧本ペース。踏みつけからの崩れでマウントを奪ったり、サッカーボールキックを打ったりと見せ場を作るも、最後はアームバーで仕留められた。
瀧本は今までの試合のイメージが悪く、まったく注目していなかったものの、今回は練習の成果なのか素晴らしい動きを見せてくれた。特にグラウンド。まず動きを止めない。ひとつの技がダメならもうひとつの技へ。ポジショニングの攻防も含めて常に攻め続ける姿勢を見せる。下半身の使い方も抜群だ。のしかかったり押さえつけたりするだけではない。相手の体の各所にからみつくような独特の動きは他の選手にはないものだ。
○ギルバート・アイブルVS小路晃× 1R3:46TKO
打撃のアイブル対寝技の小路、というような見方ではない。PRIDE創成期から出場し続けている小路が、ぶっちゃけどこまで生き残れるのか。そういう試合だ。途中足関の取り合いという謎の展開も挟んだものの、最後はやっぱりアイブルの暴力が勝った。
○ジェームス・トンプソンVSドン・フライ× 1R6:13TKO
いい試合だった。熱い戦いだった。力でもなくテクニックでもない、純粋な精神力のぶつかり合い。彼らは勝ち負け以上のものを賭けて競い合った。
総合格闘技草創期より最前線で輝き続けてきた男と、その男に憧れて育った男の対決。グラウンドもあるけれど、関節技もあるけれど、やっぱり決め手はどつき合い。互いの首根っこを掴みあってのガチンコ勝負に観客は酔いしれた。男塾対パンク塾なんていうバカな煽り文句も気持ちの良い、実にPRIDEらしい戦いは、百発近いパンチを被弾しながらも倒れないドン・フライのスタンディングダウンで幕を閉じた。
○青木真也VSブライアン・ローアンユー× 1R三角締め
寝技のスペシャリスト青木。今回の対戦相手は元囚人にしてカンフー仕込みのキックボクサー、ブライアン。切れ味鋭い飛び膝、激しいパウンドの前にひやりとさせられる場面はあったものの、終わってみれば今回も1R少々の瞬殺一本劇。
二発あった飛び膝を二本ともキャッチし、二本目で仕留めた。グラウンドに持ち込むや否や、いつもどおりの詰将棋。わざと上をとらせておいて足を相手の首に回し、瞬時の三角締めに切って落とした。
○ソクジュVSヒカルド・アローナ× 1R1:59TKO
アントニオ・ホジェリオ・ノゲイラを倒し、一躍時の人となったアフリカンファイターソクジュ。彼の前に立ちはだかったのは、同じBTTのチ-ムメイトの敗北がフロックであったことを証明するためにやってきたヒカルド・アローナ。いわずとしれたアブダビコンバット王者。
ミイラ取りがミイラ、とはまさにこのことだろう。ソクジュの重いローと、ジャブすら当たらぬフットワークに焦ったアローナは、成就しなかった片足タックルの体勢で変に粘ってしまった。手打ちながらもパンチを被弾し、たまらずの離れ際、強烈なソクジュの右のアッパーカットをもろにくらってしまった。そのまま吹っ飛ぶように倒れ、追い討ちをかけられたところでレフェリーが止めに入った。
特筆すべきは運動神経。アローナほどの男に片足をとられ、押されても引かれてもびくともしないバランス感覚。チャンスを見逃さない狩猟本能。寝技系のトップクラスを二人食った野生の獣の次なる標的は誰だ?
○ジェフ・モンソンVS藤田和之× 1Rチョーク
PRIDE・UFC対抗戦第1弾は、ジェームス・トンプソン戦で根性を見せた藤田とUFCヘビー級で王者を争うモンソン。
ぶん回すフックが得意な藤田。まっすぐストレートのパンチ主体のモンソン。スタイルの違いこそあるものの、打撃のテクニック自体はほぼ互角。タックルを全部切っていた藤田のほうが若干戦況を有利に進めていた。しかし勝利に対する執念はモンソンのほうが各段に上だった。四点ポジションをとられ圧倒的に不利な姿勢に追い込まれながら、筋肉と瞬発力でひっくり返す機会を耽々と狙うモンソンに対し、圧力にびびって膝蹴りを打てない藤田。メンタルの差はそのまま試合結果に繋がった。藤田の足をとりひっくり返したモンソンはポジショニングの争いに勝利し、バックマウントからチョークを極めた。
リストを眺めたかぎりでは面白そうにも見えないが、蓋を開けてみると意外と好試合揃いだったPRIDE34について。
○中尾"KISS"芳広VSエジソン・ドラゴ× 1R9:15袈裟固め
ヒース・ヒーリングに試合前にノックダウンされて以来完全に道を踏み外した感のあるアマレス・エリート中尾。溢れるボクシングセンスに恵まれながらも結果を出せないドラゴ。未完の大器同士の一戦となったこのオープニングマッチは、中尾の成長が目立った。ボクシングの攻防ではドラゴに遠く及ばないものの、バックスピンキックや前蹴り、大振りのフックからのタックルや片足タックルなど仕掛けの多さでドラゴをボクシングに集中させない。それはテイクダウンしてからも同様で、パウンド、膝などのプレッシャーで相手の注意を反らしてポジショニングの攻防を有利に進め、アームバーなどの関節技を狙うという流れが完全に体に叩き込まれている。最後は袈裟固めで文句なしの一本。強くなった。中尾。
○バタービーンVSズール× 1Rアームロック
180㌢185㌔のバタービーンと200㌢185㌔のズール。スーパーヘビーの名にふさわしい二人の戦いは、意外な早期決着となった。ゴングと同時に両者突進。ノーガードのどつき合いで場内を沸かせると、そのまま転がった……もとい、グラウンドに雪崩れ込んだ。上になったのはバタービーン。さすがに自分と同じ体重のものが上に乗ると身動き取れないのか、ズールまったく抵抗らしい抵抗ができない。鉄槌を落とされ脇に膝を叩き込まれ、アームロックで極められるまで一切いいとこなし。経験の差が素直に勝敗を分けた。
○瀧本誠VSゼルグ"弁慶"ガレシック× 1Rアームバー
右目の眼窩底骨折から復帰した瀧本の対戦相手はCAGERAGEのミドル級チャンプガレシック。弁慶のコスプレで登場した「変な外国人」。
ガレシックの強さの秘密は長い手足だ。薙刀のように長いリーチから飛び出すテコンドー仕込みの蹴りが良い。予備動作のほとんどないところからすんなりとつま先が飛ぶ。ロー、ミドル、ハイと散らし序盤瀧本を追い込むも、足を払われてグラウンドに持ち込まれてからはずっと瀧本ペース。踏みつけからの崩れでマウントを奪ったり、サッカーボールキックを打ったりと見せ場を作るも、最後はアームバーで仕留められた。
瀧本は今までの試合のイメージが悪く、まったく注目していなかったものの、今回は練習の成果なのか素晴らしい動きを見せてくれた。特にグラウンド。まず動きを止めない。ひとつの技がダメならもうひとつの技へ。ポジショニングの攻防も含めて常に攻め続ける姿勢を見せる。下半身の使い方も抜群だ。のしかかったり押さえつけたりするだけではない。相手の体の各所にからみつくような独特の動きは他の選手にはないものだ。
○ギルバート・アイブルVS小路晃× 1R3:46TKO
打撃のアイブル対寝技の小路、というような見方ではない。PRIDE創成期から出場し続けている小路が、ぶっちゃけどこまで生き残れるのか。そういう試合だ。途中足関の取り合いという謎の展開も挟んだものの、最後はやっぱりアイブルの暴力が勝った。
○ジェームス・トンプソンVSドン・フライ× 1R6:13TKO
いい試合だった。熱い戦いだった。力でもなくテクニックでもない、純粋な精神力のぶつかり合い。彼らは勝ち負け以上のものを賭けて競い合った。
総合格闘技草創期より最前線で輝き続けてきた男と、その男に憧れて育った男の対決。グラウンドもあるけれど、関節技もあるけれど、やっぱり決め手はどつき合い。互いの首根っこを掴みあってのガチンコ勝負に観客は酔いしれた。男塾対パンク塾なんていうバカな煽り文句も気持ちの良い、実にPRIDEらしい戦いは、百発近いパンチを被弾しながらも倒れないドン・フライのスタンディングダウンで幕を閉じた。
○青木真也VSブライアン・ローアンユー× 1R三角締め
寝技のスペシャリスト青木。今回の対戦相手は元囚人にしてカンフー仕込みのキックボクサー、ブライアン。切れ味鋭い飛び膝、激しいパウンドの前にひやりとさせられる場面はあったものの、終わってみれば今回も1R少々の瞬殺一本劇。
二発あった飛び膝を二本ともキャッチし、二本目で仕留めた。グラウンドに持ち込むや否や、いつもどおりの詰将棋。わざと上をとらせておいて足を相手の首に回し、瞬時の三角締めに切って落とした。
○ソクジュVSヒカルド・アローナ× 1R1:59TKO
アントニオ・ホジェリオ・ノゲイラを倒し、一躍時の人となったアフリカンファイターソクジュ。彼の前に立ちはだかったのは、同じBTTのチ-ムメイトの敗北がフロックであったことを証明するためにやってきたヒカルド・アローナ。いわずとしれたアブダビコンバット王者。
ミイラ取りがミイラ、とはまさにこのことだろう。ソクジュの重いローと、ジャブすら当たらぬフットワークに焦ったアローナは、成就しなかった片足タックルの体勢で変に粘ってしまった。手打ちながらもパンチを被弾し、たまらずの離れ際、強烈なソクジュの右のアッパーカットをもろにくらってしまった。そのまま吹っ飛ぶように倒れ、追い討ちをかけられたところでレフェリーが止めに入った。
特筆すべきは運動神経。アローナほどの男に片足をとられ、押されても引かれてもびくともしないバランス感覚。チャンスを見逃さない狩猟本能。寝技系のトップクラスを二人食った野生の獣の次なる標的は誰だ?
○ジェフ・モンソンVS藤田和之× 1Rチョーク
PRIDE・UFC対抗戦第1弾は、ジェームス・トンプソン戦で根性を見せた藤田とUFCヘビー級で王者を争うモンソン。
ぶん回すフックが得意な藤田。まっすぐストレートのパンチ主体のモンソン。スタイルの違いこそあるものの、打撃のテクニック自体はほぼ互角。タックルを全部切っていた藤田のほうが若干戦況を有利に進めていた。しかし勝利に対する執念はモンソンのほうが各段に上だった。四点ポジションをとられ圧倒的に不利な姿勢に追い込まれながら、筋肉と瞬発力でひっくり返す機会を耽々と狙うモンソンに対し、圧力にびびって膝蹴りを打てない藤田。メンタルの差はそのまま試合結果に繋がった。藤田の足をとりひっくり返したモンソンはポジショニングの争いに勝利し、バックマウントからチョークを極めた。