先週後半から、一部の人たちによってではあるが、全国的に秋田中央交通がにわかに注目される事態になっている。悪い意味でではない。
ただし、注目の対象は、今走っている路線バス・貸切バスあるいは企業そのものではない。
かつて、八郎潟町(奥羽本線・八郎潟駅)と五城目町の間3.8キロを結んでいた中央交通の鉄道路線の車両が、鉄道模型化されて発売されることになり、愛好家に注目されているのだ。
※この鉄道路線名は現在の記録では「秋田中央交通軌道線」もしくは「秋田中央交通線」とされている。「中央交通線」だと、今の秋田市内のバス路線名(大川反車庫行き)と紛らわしいので、ここでは使用しません。
中央交通の鉄道は、1969(昭和44)年7月11日に廃止されている。
46年と2日も前になくなっているだけに、秋田中央交通営業エリア内の住民でもピンと来ない人がほとんどではないだろうか。
僕は、路線の存在は知っていて、乗ったことがある人の話も聞いたことはあった。また、当時撮影した写真をネット上に公開してくれている鉄道愛好家の方もいらっしゃるが、マスコミとか地元自治体などによる映像などは見たことがない。
秋田市電(秋田市交通局の路面電車)はその3年半前に廃止されているが、県庁所在地だからなのか、そちらのほうが多く記録が残っている気がする。
僕は鉄道模型の世界にはうといが、鉄道模型の車両は市販の完成品もあれば、パーツを組み合わせたり色を塗ったりして自作することもあると聞いていた。製品化されて市販されるのは、大手鉄道会社だったり、現役の車両ばかりかと思っていた。
ところが、タカラトミーの子会社・トミーテックでは、2005年から「鉄道コレクション」、通称「鉄コレ」という車両模型のシリーズを発売していて、全国の地方中小私鉄の古い車両もラインナップされているという。羽後交通(鉄道は廃止)、同和鉱業(廃止)、秋田内陸縦貫鉄道の気動車や弘南鉄道の電車などが発売済み。
※鉄コレは、基本的に展示用の模型で、別売りの動力を取り付けると走行できる。
そして、このほど、鉄道コレクション10周年記念商品の第1弾として、秋田中央交通の鉄道車両が発売されることになったのだった!
今のところ公式ホームページには未掲載だが、鉄道模型を扱う複数のネットショップで、先週から11月発売分の予約受け付けが始まっており、その中に「秋田中央交通」が含まれている。
発売されるのは、スタイル(形式)は同一で塗装が違う2種類。「秋田中央交通軌道線ブルー (旧塗装) 2両セット」と「秋田中央交通軌道線ツートン(新塗装)2両セット」の2種が各8%税込み3240円。
昭和20年代後半頃から廃止にかけてのこの路線では、国鉄中古の気動車からエンジンを撤去したものを「客車」として使い、それを電気機関車または「電動貨車」なるものでひいて運行されていた。「電動貨車」とは、人でなく貨物を運ぶ電車で、東急の中古だった。
廃止後、客車と電気機関車1両ずつが、路線跡の町立五城目小学校前に保存されていた(電動貨車は保存されず)ものの、老朽化が激しく2003年に撤去されてしまっていた。
塗装は途中で代わったそうで、初期が電動貨車が濃い青一色、客車はグレーと緑、後期はいずれも窓より上が赤、下半分が水色。五城目小で保存されていた車両は後期の塗装だった。
後期の赤と水色はかなり鮮やかな色だったらしく、当時を知る鉄道愛好家には「秋田中央交通の鉄道と言えば、あの派手な塗装」と印象づけられている人もいるようだ。
当時としては貴重だったであろうカラー写真をネット上で公開されている方がおられるが、それを今見ても、納得。当時の感覚としては、「平成初期にJR九州の真っ赤な車両を見た時の衝撃」に近かったのかもしれない。
初代塗装は、中央交通の路線バス(特に平成初期頃までの旧塗装)に通ずる色使いだが、後期塗装の赤と青の由来は不明。まあ、この会社は今も(バス停などの)デザインには無頓着だから…
その派手な塗装だからこそ、模型化の白羽の矢が立ったのかもしれないけど。
さて、今回の中央交通の鉄コレ発売を受けたネット上の声。
情報を知っているのは模型好きな方々が大部分ということはあるものの、好意的。
まず、「秋田中央交通の鉄道線の存在自体を知らなかった」という声は少数。この分野では、中央交通の鉄道路線に一定の知名度があるらしく、最初にこれに驚いた。珍しい電動貨車のおかげか、奇抜な塗装のおかげか…
多くが「秋田中央交通(を発売する)とはマニアックな選択」とか「予想外」という模型化されることに驚く声で、ほとんどがそれを歓迎している。さっそく「買う」という人も。
中央交通に限らず、大昔に廃止された地方私鉄や旧型車両を知る人は少ないだろうし、その模型を収集しようという需要などないと思っていたのだが、商売として成り立っている(価格はけっこう安いと思うし)とは知らなかった。
鉄コレの商品コンセプトからすれば、いつかは中央交通は発売されたのだろう。でも、記念すべき鉄コレ10周年記念として中央交通が選ばれたのは、ちょっと驚いた。
保存車両さえなくなってしまい、忘れ去られるばかりかと思われていた秋田中央交通軌道線が、模型として鮮やかによみがえり、全国各地を走り回ることになるかと思うと、ちょっぴりうれしい。
模型が発売されるだけで、現地には何も残っていない(道路沿いに遺構は若干あるらしいけど)のだから、現地への経済効果などは発生しないだろうけど。
鉄コレシリーズでは、製品化に当たって、各鉄道事業者の許諾を得ている旨の表示がある。
となると、本件も中央交通は知っているはずだけど、あまりに昔の話で面食らったかも。使用料をもらえたりするのかな?
秋田中央交通のルーツをさかのぼれば、1922(大正11)年に「五城目軌道」として開業したこの鉄道に行き着く(会社設立はその前年)から、模型という形として残る意義はあると思う。
元・沿線であった八郎潟町や五城目町の関係者は、まだ知らないだろう。
昔、地元を走っていた鉄道のことを伝える資料になるから、購入して公共施設に展示するなどしてはいかがでしょう。あと、これを機に発展させてゆるキャラを作るとか??
【31日追記】その後、公式ホームページにも発売予告(いちおう9日付)が掲載された。
さらに、公式情報ではないが、新たな追加情報も。この製品に、往時のきっぷのレプリカが付属するという。厚紙に印刷した「硬券」で、模型の塗装ごとに違う内容のきっぷだとか。
模型でなくきっぷを趣味とする人たちの中でも、中央交通のきっぷの実物を持っている人は限られているだろうに、これまたずいぶんとマニアックだ。
ただし、注目の対象は、今走っている路線バス・貸切バスあるいは企業そのものではない。
かつて、八郎潟町(奥羽本線・八郎潟駅)と五城目町の間3.8キロを結んでいた中央交通の鉄道路線の車両が、鉄道模型化されて発売されることになり、愛好家に注目されているのだ。
※この鉄道路線名は現在の記録では「秋田中央交通軌道線」もしくは「秋田中央交通線」とされている。「中央交通線」だと、今の秋田市内のバス路線名(大川反車庫行き)と紛らわしいので、ここでは使用しません。
中央交通の鉄道は、1969(昭和44)年7月11日に廃止されている。
46年と2日も前になくなっているだけに、秋田中央交通営業エリア内の住民でもピンと来ない人がほとんどではないだろうか。
僕は、路線の存在は知っていて、乗ったことがある人の話も聞いたことはあった。また、当時撮影した写真をネット上に公開してくれている鉄道愛好家の方もいらっしゃるが、マスコミとか地元自治体などによる映像などは見たことがない。
秋田市電(秋田市交通局の路面電車)はその3年半前に廃止されているが、県庁所在地だからなのか、そちらのほうが多く記録が残っている気がする。
僕は鉄道模型の世界にはうといが、鉄道模型の車両は市販の完成品もあれば、パーツを組み合わせたり色を塗ったりして自作することもあると聞いていた。製品化されて市販されるのは、大手鉄道会社だったり、現役の車両ばかりかと思っていた。
ところが、タカラトミーの子会社・トミーテックでは、2005年から「鉄道コレクション」、通称「鉄コレ」という車両模型のシリーズを発売していて、全国の地方中小私鉄の古い車両もラインナップされているという。羽後交通(鉄道は廃止)、同和鉱業(廃止)、秋田内陸縦貫鉄道の気動車や弘南鉄道の電車などが発売済み。
※鉄コレは、基本的に展示用の模型で、別売りの動力を取り付けると走行できる。
そして、このほど、鉄道コレクション10周年記念商品の第1弾として、秋田中央交通の鉄道車両が発売されることになったのだった!
今のところ公式ホームページには未掲載だが、鉄道模型を扱う複数のネットショップで、先週から11月発売分の予約受け付けが始まっており、その中に「秋田中央交通」が含まれている。
発売されるのは、スタイル(形式)は同一で塗装が違う2種類。「秋田中央交通軌道線ブルー (旧塗装) 2両セット」と「秋田中央交通軌道線ツートン(新塗装)2両セット」の2種が各8%税込み3240円。
昭和20年代後半頃から廃止にかけてのこの路線では、国鉄中古の気動車からエンジンを撤去したものを「客車」として使い、それを電気機関車または「電動貨車」なるものでひいて運行されていた。「電動貨車」とは、人でなく貨物を運ぶ電車で、東急の中古だった。
廃止後、客車と電気機関車1両ずつが、路線跡の町立五城目小学校前に保存されていた(電動貨車は保存されず)ものの、老朽化が激しく2003年に撤去されてしまっていた。
塗装は途中で代わったそうで、初期が電動貨車が濃い青一色、客車はグレーと緑、後期はいずれも窓より上が赤、下半分が水色。五城目小で保存されていた車両は後期の塗装だった。
後期の赤と水色はかなり鮮やかな色だったらしく、当時を知る鉄道愛好家には「秋田中央交通の鉄道と言えば、あの派手な塗装」と印象づけられている人もいるようだ。
当時としては貴重だったであろうカラー写真をネット上で公開されている方がおられるが、それを今見ても、納得。当時の感覚としては、「平成初期にJR九州の真っ赤な車両を見た時の衝撃」に近かったのかもしれない。
初代塗装は、中央交通の路線バス(特に平成初期頃までの旧塗装)に通ずる色使いだが、後期塗装の赤と青の由来は不明。まあ、この会社は今も(バス停などの)デザインには無頓着だから…
その派手な塗装だからこそ、模型化の白羽の矢が立ったのかもしれないけど。
さて、今回の中央交通の鉄コレ発売を受けたネット上の声。
情報を知っているのは模型好きな方々が大部分ということはあるものの、好意的。
まず、「秋田中央交通の鉄道線の存在自体を知らなかった」という声は少数。この分野では、中央交通の鉄道路線に一定の知名度があるらしく、最初にこれに驚いた。珍しい電動貨車のおかげか、奇抜な塗装のおかげか…
多くが「秋田中央交通(を発売する)とはマニアックな選択」とか「予想外」という模型化されることに驚く声で、ほとんどがそれを歓迎している。さっそく「買う」という人も。
中央交通に限らず、大昔に廃止された地方私鉄や旧型車両を知る人は少ないだろうし、その模型を収集しようという需要などないと思っていたのだが、商売として成り立っている(価格はけっこう安いと思うし)とは知らなかった。
鉄コレの商品コンセプトからすれば、いつかは中央交通は発売されたのだろう。でも、記念すべき鉄コレ10周年記念として中央交通が選ばれたのは、ちょっと驚いた。
保存車両さえなくなってしまい、忘れ去られるばかりかと思われていた秋田中央交通軌道線が、模型として鮮やかによみがえり、全国各地を走り回ることになるかと思うと、ちょっぴりうれしい。
模型が発売されるだけで、現地には何も残っていない(道路沿いに遺構は若干あるらしいけど)のだから、現地への経済効果などは発生しないだろうけど。
鉄コレシリーズでは、製品化に当たって、各鉄道事業者の許諾を得ている旨の表示がある。
となると、本件も中央交通は知っているはずだけど、あまりに昔の話で面食らったかも。使用料をもらえたりするのかな?
秋田中央交通のルーツをさかのぼれば、1922(大正11)年に「五城目軌道」として開業したこの鉄道に行き着く(会社設立はその前年)から、模型という形として残る意義はあると思う。
元・沿線であった八郎潟町や五城目町の関係者は、まだ知らないだろう。
昔、地元を走っていた鉄道のことを伝える資料になるから、購入して公共施設に展示するなどしてはいかがでしょう。あと、これを機に発展させてゆるキャラを作るとか??
【31日追記】その後、公式ホームページにも発売予告(いちおう9日付)が掲載された。
さらに、公式情報ではないが、新たな追加情報も。この製品に、往時のきっぷのレプリカが付属するという。厚紙に印刷した「硬券」で、模型の塗装ごとに違う内容のきっぷだとか。
模型でなくきっぷを趣味とする人たちの中でも、中央交通のきっぷの実物を持っている人は限られているだろうに、これまたずいぶんとマニアックだ。