治しやすいところから治す--発達障害への提言

花風社・浅見淳子のブログ
発達障害の人たちが
少しでもラクになる方法を考える場です。

長崎男児誘拐殺人事件

2016-02-04 17:22:01 | 日記




という言葉で検索すると、ウィキが出てきます。
藤家さんが、のちの「他の誰かになりたかった」となった原稿を書いたのはあの事件がきっかけでした。
加害者にアスペルガーの診断が下り、独り歩きし始めた障害名。
同じころに同じ診断を受けた藤家さんは、誤解を解こうとこの本を書きました。
この本には
「自閉っ子、こういう風にできてます!」のもっと前の藤家さんがいます。

その後、「自閉っ子、こういう風にできてます!」のヒットもあって、「他の誰かになりたかった」も部数を積み上げました。
でもだからこそ「もう社会的使命を果たした」という思いと
発達していく藤家さんとの現実とあまりにかけ離れた痛々しい姿がそこに凍結されたままになっているがゆえに、私はいつしか増刷をやめました。

でも今この本を復刊する気になったのは
ご希望の声が多いこと
12年経って、黒歴史(本人談)が繙かれてももう本人が揺るがないほど安定していること
12年前には生まれていなかった方の親御さんたち、花風社を知らなかった方たちも新しい読者になってくださっていること

そして何よりも

「ここから始まったんだよ」
「これだけつらかったんだ。でも大丈夫。幸せな大人になっているよ」と知らせたいという思いからでした。

復刊を考え始め、藤家さんと私で勇気をもって読み返してみて

「ほんとイタいよね」

とか笑いながらも

でもイタいながらも「ああこれがのちの修行系につながったんだな」という資質のきらめきや

何よりも

「ド自閉症の人だ」

と再発見できました。
だから

「自閉症ってこういう障害ですよ」というベーシックな知識を提供できるという意義もある本だと、改めて気づきました。

先日テレビ出演した南雲明彦さんがこんなことをつぶやいていましたが



この心配もあったんですね。
それ以降、ルサンチマン系の自伝がいっぱい出て、当事者萌えの支援者たちがそれをもてはやし、その状況に私は嫌悪感を感じてきたから。

でもこのつらい本を読んでもらうことで逆に
藤家さんが12年かけて、苦しみを減らすことに取り組んできたこと
それが見事に実ったことに気づいていただけるはずです。

私が南雲さんの前作を読み、その人柄に触れて
安心して「治ってますか? 発達障害」を作ったように。






今回「他の誰かになりたかった」を読み返してみて

たしかにつらいんだけど

そしてきっかけは「長崎男児誘拐殺人事件」なんだけど

それでもこの本には不思議なほどルサンチマンがない

ということがわかり

私は安心して、今再びこの本を世に送り出します。

たしかにイタいんだけど
こういう人だったからこそ
私はニキさんと会ってもらい「自閉っ子、こういう風にできてます!」を作る気になったのだなあと思いました。


書店売りは二月下旬。直販はそれよりちょっと前になります。

直販の方には「藤家寛子さんによるセルフ書評」を同封いたします。

本のカバーを取ると藤家さんの最新メッセージがあり
ひっくり返すと私のメッセージがあります。

どうぞお楽しみに。

「生きづらさど真ん中、自閉症ど真ん中」新刊のお知らせ

2016-02-04 06:23:31 | 日記






封印の書、解禁。


解離性障害、アスペルガー障害
様々な生きづらさに翻弄された青春の記録
十数年の時を経て復刊。



「これは、生きづらかった頃の、私の記録です」



心身健康な社会人として働いている現在の著者からの近況メッセージはカバーの下に!


1979年生まれ。作家。
青春時代より重い精神症状・身体症状に悩まされる。生きづらさから解離性障害を発し、のちにアスペルガー症候群と診断される。本書は、解離性障害から回復して書いた第一作の復刊。
その後、アスペルガーのリアルな姿を語ったニキ・リンコとの共著『自閉っ子、こういう風にできてます!』がベストセラーとなる。その他に自閉の少女を内面から綴った童話『あの扉のむこうへ』、混乱した世界観からの回復を綴った『自閉っ子は、早期診断がお好き』、支援を上手に利用して回復していく途上を綴った『自閉っ子的心身安定生活!』などの著作がある。
そして見事に心身回復し社会人として就職するまでを『30歳からの社会人デビュー』(いずれも花風社)にまとめた。現在は心身ともに健康。故郷の佐賀県で販売員として勤務。本書初版出版時とは別人のように充実した日々を送っている。

目次

第一部 私が私でいられなかった理由

他の誰かになりたかった
怒濤の「なせばなる」人生
ココロとカラダ

第二部 アスペルガーとして生きていく

否定できなくなった「変人」
私の頭の構造
私のとっての物事の判断材料
質問する時の原則
恐怖の乗車対策
普通の人より不利な部分
欲しいのは、そんな言葉じゃないのに
かんしゃく洪水警報、発令中
言葉の裏の意味
済んでいた私の初恋
歯科医院克服法
自己回復手段シートについて
ワサワサワサー、襲来
現代的生活集中講座
私は人間の姿をした犬!?
性欲と人間
ある日曜日の個人的衝動
自閉症を扱ったドラマ
お医者様との相性
二つの生命線
フラッシュバックとの上手な付き合い方
宝物

第三部 アスペルガーの私に、家族が愛せるのか?

私の生まれた環境
必ず通り過ぎるべき時代
本当の家族になるために
気づかなかっただけの親の愛

第四部 本物の自分を受け入れられるように……

私、藤家寛子という人
隠された自分への興味
他の顔になりたい
もうひとりの私
たどり着いた本当の私