という言葉で検索すると、ウィキが出てきます。
藤家さんが、のちの「他の誰かになりたかった」となった原稿を書いたのはあの事件がきっかけでした。
加害者にアスペルガーの診断が下り、独り歩きし始めた障害名。
同じころに同じ診断を受けた藤家さんは、誤解を解こうとこの本を書きました。
この本には
「自閉っ子、こういう風にできてます!」のもっと前の藤家さんがいます。
その後、「自閉っ子、こういう風にできてます!」のヒットもあって、「他の誰かになりたかった」も部数を積み上げました。
でもだからこそ「もう社会的使命を果たした」という思いと
発達していく藤家さんとの現実とあまりにかけ離れた痛々しい姿がそこに凍結されたままになっているがゆえに、私はいつしか増刷をやめました。
でも今この本を復刊する気になったのは
ご希望の声が多いこと
12年経って、黒歴史(本人談)が繙かれてももう本人が揺るがないほど安定していること
12年前には生まれていなかった方の親御さんたち、花風社を知らなかった方たちも新しい読者になってくださっていること
そして何よりも
「ここから始まったんだよ」
「これだけつらかったんだ。でも大丈夫。幸せな大人になっているよ」と知らせたいという思いからでした。
復刊を考え始め、藤家さんと私で勇気をもって読み返してみて
「ほんとイタいよね」
とか笑いながらも
でもイタいながらも「ああこれがのちの修行系につながったんだな」という資質のきらめきや
何よりも
「ド自閉症の人だ」
と再発見できました。
だから
「自閉症ってこういう障害ですよ」というベーシックな知識を提供できるという意義もある本だと、改めて気づきました。
先日テレビ出演した南雲明彦さんがこんなことをつぶやいていましたが
この心配もあったんですね。
それ以降、ルサンチマン系の自伝がいっぱい出て、当事者萌えの支援者たちがそれをもてはやし、その状況に私は嫌悪感を感じてきたから。
でもこのつらい本を読んでもらうことで逆に
藤家さんが12年かけて、苦しみを減らすことに取り組んできたこと
それが見事に実ったことに気づいていただけるはずです。
私が南雲さんの前作を読み、その人柄に触れて
安心して「治ってますか? 発達障害」を作ったように。
今回「他の誰かになりたかった」を読み返してみて
たしかにつらいんだけど
そしてきっかけは「長崎男児誘拐殺人事件」なんだけど
それでもこの本には不思議なほどルサンチマンがない
ということがわかり
私は安心して、今再びこの本を世に送り出します。
たしかにイタいんだけど
こういう人だったからこそ
私はニキさんと会ってもらい「自閉っ子、こういう風にできてます!」を作る気になったのだなあと思いました。
書店売りは二月下旬。直販はそれよりちょっと前になります。
直販の方には「藤家寛子さんによるセルフ書評」を同封いたします。
本のカバーを取ると藤家さんの最新メッセージがあり
ひっくり返すと私のメッセージがあります。
どうぞお楽しみに。