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「糖質制限ダイエットは、たしかに短期間で体重が落ち、一時的にはヤセます。目に見えて効果が出るので、ヤセた実感も満足度も高い。さらに面倒なカ ロリー計算が不要で、炭水化物を抜くだけとカンタンなのも飛びつきやすい理由です。でも実はさまざまな弊害があり、危険なんです」

そう緊急提言をするのは、森永製菓のウイダートレーニングラボで管理栄養士を務める細野恵美さん。’05〜’10年、千葉ロッテマリーンズの栄養管 理を担当後、錦織圭選手、浅田真央選手など一流アスリートの管理栄養士を歴任。現在は高梨沙羅選手ほか7人のアスリートを担当している。

錦織選手も、以前は糖質制限を取り入れていた結果、スタミナ不足に悩まされていた。’12年から細野さんが担当となったことで適切に糖質を取り入 れ、世界ランキングは25位から5位までアップした。浅田選手、高梨選手も糖質メシによってスタミナと身体バランスをキープすることに成功している。

「糖質制限ダイエットがはやったことですっかり悪者になってしまいましたが、そもそも糖質は大切なエネルギー源なのです。人間の3大栄養素は糖質・ タンパク質・脂質です。1日の適正量は『糖質50〜60%、タンパク質15%、脂質25%』なんです。糖質が不足すると脳にエネルギーが行き渡らず、頭が 働かなくなります。集中力が続かず、仕事も手につかなくなるのです」

糖質が足りないと脳がガス欠状態になり、正常な生活を送れなくなる。

「体が重く、だるく、慢性的に疲れている状態になります。気分も不安定になり、ずっとイライラしているなんていうことも……。一時的に体重は落ちま すが、生活にハリがなくなり、幸福感も感じにくくなります。さらにもっと悪いことに、糖質制限をやめれば、以前に増して太ってしまいがちなんです」

実は記者(34)も、糖質制限ダイエットの経験がある。「ごはんは太る」と思い込み、炭水化物を完全に遮断。朝食は豆腐とワカメにポン酢をかけたも の、昼食はフルーツとゆで卵とヨーグルト、夕食は抜きという食生活を3カ月ほど続けた結果、体重は15キロ減。みるみるヤセて舞い上がっていたが、月経は 3カ月止まっていた。

「糖質制限をすると急激にエネルギー源が断たれるので、女性ホルモンのバランスが乱れ、月経が止まることがあります。月経の乱れは女性の体に深刻な影響をもたらしますし、更年期に糖質制限をすると症状を悪化させる一因になります」

細野さんが女性アスリートの栄養管理をする際には、体脂肪率15%を目安にしている。15%を下回ると、月経が乱れやすいからだ。

閉経後の女性はさらに注意が必要だ。閉経後は代謝が落ち、コレステロールをためやすくなる。つまり脂肪を蓄積しやすい体質になるが、安直に糖質制限をすると、体が不足したエネルギーを筋肉から使うようになる。

「糖質はほかの栄養素よりも早く体を動かすエネルギー源となります。糖質を摂取しなければ、自分の筋肉を分解してエネルギー源にしてしまいます。筋 量が落ちれば代謝が悪くなり、さらに脂肪をため込みやすくなっていくのです。加齢にともなって筋力は低下しますし、一度落ちた筋肉を取り戻すのは時間がか かります。閉経後の糖質制限はかなり危険といえます」

高齢者の筋力低下はそのまま健康寿命の短縮にもつながる。老後を元気に過ごしたければ、糖質制限はNGだ。」

 世界中で警告続々 「糖質制限ダイエット」は本当に安全か

2016年2月23日日刊ゲンダイ

やはり慎重になるべきか

 やっぱり危険なのではないか――。今月6日、糖質制限ダイエットの第一人者だったノンフィクションライター・桐山秀樹氏が心不全のため62歳で急逝した。この訃報を受け、侃々諤々の議論が巻き起こっている。糖質制限は、本当に体に悪影響はないのか。

 近年、広く知られている糖質制限ダイエットは、米、パン、麺類、芋などの炭水化物、砂糖を使った菓子類など、糖質を含むものは一切食べず、肉などのタンパク質や野菜はいくら食べてもOKという方法だ。桐山氏は、糖尿病と診断された2010年から糖質制限ダイエットを始め、87キロあった体重を3週間で67キロまで落とすことに成功。以後、糖質制限ダイエットを実践してきた。

 もともと、桐山氏には糖尿病による基礎疾患があり、心不全で亡くなったことと糖質制限ダイエットの因果関係はないといわれている。しかし、第一人者の突然の訃報なだけに不安な声が上がるのも無理はない。! 」

バランスを考えた栄養摂取が、大切と思います。