壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

灯影にしづむ

2011年05月31日 22時36分04秒 | Weblog
        たかどのゝ灯影にしづむ若葉哉     蕪 村

 「しづむ」がこの句の眼目である。他にちょうど正反対の現象を詠んだ、
        窓の燈の梢にのぼる若葉哉
 という句がある。こちらは「のぼる」が眼目となっている。
 「しづむ」というのは、火影(ほかげ)が「落ちる」ことと、その中で、無数の若葉がひっそり「和む」こととを、一つにして表現したものであろう。
 この句が、爽快な力強さと、調和ある落ち着きとの感銘を、同時に与えるのは、
        たののほにしむわ
 と、力強い「か」の音が、比較的規則正しい間隔をもって配置されており、さらにその間を縫って、静穏な「濁音」が同様に配置されていることに起因すると思われる。

 季語は「若葉」で夏。

    「高く造った殿舎の二階が一つ、闇夜に煌々とともってそびえている。
     戸や障子はことごとく取り払われ、火影はあたりへ惜しみなく流れ
     落ちている。その火影の区切った明るさの中には、さまざまの若葉が、
     重なり合い、ひしめき合って、ひっそりと一つに和んでいる」


      また生きめやも水芭蕉鉢植えに     季 己