日本画家の菅田友子先生から、いつもの絵手紙が届いた。先生は毎月、季節のものを描いて送ってくださる。今回は“土筆(つくし)”である。
土筆は、つくづくし・つくしんぼ・筆の花などとも呼ばれる。季語としては、土筆野(つくしの)・土筆摘み・土筆和え(つくしあえ)・土筆の袴(はかま)などがある。
土筆野やよろこぶ母につみあます かな女
春の摘み草の中でも、季節に敏感なものは、土筆摘みであろう。
まだ風も冷たく、時折、雪さえ降って、つい引きこもりがちになっていると、土筆は、いつの間にか薹が立ち、胞子が散って、筆先もほどけてしまう。
土筆物言はずすんすんとのびたり 漱 石
すっかり暖かくなって、ひとつ土筆でも摘んで来ようかと、日当たりのよい田の畦や川の堤などに来て見ると、もう、すっかり青々とした杉菜が生え揃って、春風にそよいでいるといったことになる。
世の中の移り変わりの早いことにかけては、三日見ぬ間の桜ばかりを喩えにひくことはなさそうだ。あの素朴でユーモラスな土筆と、すっきり洗練された感じの杉菜との早変わりのほうが、いっそう鮮やかな対照を示しているのではなかろうか。
白紙に土筆の花粉うすみどり 夜 半
杉菜は、木賊(とくさ)科の植物だが、その茎には、胞子を出す有性の茎と、栄養を司る無性の茎とがあって、無性の杉菜が伸びるより早く、土の中から頭を持ち上げてくるのが、有性の土筆なのである。
ままごとの飯もおさいも土筆かな 立 子
わたしたちは、この有性茎の土筆が、まだ伸びきらず柔らかいうちに摘み取って、一節ごとに付いている黒い袴を取り除いて、食用に供するのである。
筆の穂のような土筆の頭には、ちょうど、抹茶の粉のような、美しく濃い緑色の胞子が詰まっている。少し苦味があるが、また格別な薫りがあって、これを茹でて、三杯酢にしたり、生醤油で佃煮にしたり、ご飯に炊き込んだりするのは、なかなか捨てがたい春の味覚である。
さて、うまそうな菅田先生の“つくしんぼ”、いったいどうやって食べようか。
つくしんぼ揃ふ田の道おいしんぼ 季 己
土筆は、つくづくし・つくしんぼ・筆の花などとも呼ばれる。季語としては、土筆野(つくしの)・土筆摘み・土筆和え(つくしあえ)・土筆の袴(はかま)などがある。
土筆野やよろこぶ母につみあます かな女
春の摘み草の中でも、季節に敏感なものは、土筆摘みであろう。
まだ風も冷たく、時折、雪さえ降って、つい引きこもりがちになっていると、土筆は、いつの間にか薹が立ち、胞子が散って、筆先もほどけてしまう。
土筆物言はずすんすんとのびたり 漱 石
すっかり暖かくなって、ひとつ土筆でも摘んで来ようかと、日当たりのよい田の畦や川の堤などに来て見ると、もう、すっかり青々とした杉菜が生え揃って、春風にそよいでいるといったことになる。
世の中の移り変わりの早いことにかけては、三日見ぬ間の桜ばかりを喩えにひくことはなさそうだ。あの素朴でユーモラスな土筆と、すっきり洗練された感じの杉菜との早変わりのほうが、いっそう鮮やかな対照を示しているのではなかろうか。
白紙に土筆の花粉うすみどり 夜 半
杉菜は、木賊(とくさ)科の植物だが、その茎には、胞子を出す有性の茎と、栄養を司る無性の茎とがあって、無性の杉菜が伸びるより早く、土の中から頭を持ち上げてくるのが、有性の土筆なのである。
ままごとの飯もおさいも土筆かな 立 子
わたしたちは、この有性茎の土筆が、まだ伸びきらず柔らかいうちに摘み取って、一節ごとに付いている黒い袴を取り除いて、食用に供するのである。
筆の穂のような土筆の頭には、ちょうど、抹茶の粉のような、美しく濃い緑色の胞子が詰まっている。少し苦味があるが、また格別な薫りがあって、これを茹でて、三杯酢にしたり、生醤油で佃煮にしたり、ご飯に炊き込んだりするのは、なかなか捨てがたい春の味覚である。
さて、うまそうな菅田先生の“つくしんぼ”、いったいどうやって食べようか。
つくしんぼ揃ふ田の道おいしんぼ 季 己