卯の花のこぼるゝ蕗の広葉哉 蕪 村
従来、「卯の花」の句といえば、雨中のそれか、闇の中にほの見えるそれを扱ったものが多かった。それに対し、蕪村のこの句は、晴天の白昼であり、緑と白との単色の対照も明朗である。
下五が「広葉哉」と「哉」の切字をもってすわっているので、卯の花が、その広々とした葉面(はづら)へ安んじてこぼれているような感じがしてくる。
蕪村の多くの奇想濃彩の句の中にあって、この句などのような、素朴平明な客観句に接すると、自然な息づかいに立ち帰り得たような、くつろぎを覚える。
季語は「卯の花」で夏。卯の花は、空木(うつぎ)の花のこと。空木は叢生(そうせい)する灌木で、樹心が空ろなので、この名がある。各地の山野に自生し、高さ一~二メートル。五月ごろ、五弁の小さな白い花が群生し、遠くから見れば雲のように白い。
「どこかの屋敷の奥庭あたり、卯の花が穂状についた真っ白な花の重みで、
垣根をおおって枝垂れている。すぐ下には、生垣の裾の湿り気を喜んで、
蕗が一面に生い茂っている。卯の花は、いつこぼれるともなくこぼれつづ
けている。以前こぼれたものは、傘の上に乗っかったように、その蕗の
広葉の上に乗っかり、今こぼれるものは、それを打ってかすかに揺るが
したりしている」
紅うつぎ女釣師の竿の先 季 己
従来、「卯の花」の句といえば、雨中のそれか、闇の中にほの見えるそれを扱ったものが多かった。それに対し、蕪村のこの句は、晴天の白昼であり、緑と白との単色の対照も明朗である。
下五が「広葉哉」と「哉」の切字をもってすわっているので、卯の花が、その広々とした葉面(はづら)へ安んじてこぼれているような感じがしてくる。
蕪村の多くの奇想濃彩の句の中にあって、この句などのような、素朴平明な客観句に接すると、自然な息づかいに立ち帰り得たような、くつろぎを覚える。
季語は「卯の花」で夏。卯の花は、空木(うつぎ)の花のこと。空木は叢生(そうせい)する灌木で、樹心が空ろなので、この名がある。各地の山野に自生し、高さ一~二メートル。五月ごろ、五弁の小さな白い花が群生し、遠くから見れば雲のように白い。
「どこかの屋敷の奥庭あたり、卯の花が穂状についた真っ白な花の重みで、
垣根をおおって枝垂れている。すぐ下には、生垣の裾の湿り気を喜んで、
蕗が一面に生い茂っている。卯の花は、いつこぼれるともなくこぼれつづ
けている。以前こぼれたものは、傘の上に乗っかったように、その蕗の
広葉の上に乗っかり、今こぼれるものは、それを打ってかすかに揺るが
したりしている」
紅うつぎ女釣師の竿の先 季 己