5月17日、川崎市川崎区日進町で火事があり、3階建ての簡易宿泊所2棟が全焼した。火元となったのは「吉田屋」で宿泊者6人が死亡、行方不明者を含めるとまだ犠牲者が増える模様だ。
この火事を伝えるテレビの音声で、吉田屋の部屋から「誰かー」「頼むよー」「助けてくれ」という悲痛な声が聞こえた。
今回の火災で、吉田屋の玄関付近が激しく燃えていたことが複数の宿泊者の話で分かった。玄関は無施錠で、宿泊者以外も24時間出入りできる状態だったという。川崎署は、失火と放火の両面から出火原因や出火場所の特定を進めている。
焼けた両宿泊所は1961~62年の築造。川崎市建築指導課によると、いずれも建築確認申請時は2階建てと届け出があったが、実質的には3階建てとなっている。建築基準法で3階建て以上の宿泊施設を建てる場合は鉄筋コンクリート造りなどの耐火建築物とするよう定められているが、両宿泊所が耐火建築物である可能性は低く、同課は違法建築との疑いを強めている。
川崎区内には約50戸の簡易宿泊所があり、川崎市消防局と市健康福祉局などは19~22日にかけて特別立ち入り検査を実施する。防火設備などの点検に加え、宿泊者名簿の管理状況などを調査し、宿泊者の実態把握も行う。
また、総務省消防庁は18日、全国の消防本部に簡易宿泊所の防火対策の徹底を指示した。国土交通省も各都道府県に違法建築の簡易宿泊所がないかどうかの確認などを求めた。
このような簡易宿泊所は、一泊2000円程度の部屋に何十年という長期滞在者が多い。平均年齢は65歳を超え、病気などで働けず生活保護に頼っている人が多いようだ。
1部屋は3畳程度で、トイレは共同、風呂はない施設がほとんどだ。吉田屋に30年以上滞在していた男性(77)によると、約20年前までは門限の午後11時に玄関の鍵をかけていたが、仕事などで帰りが遅い宿泊者がいるため無施錠になったという。火災当日、1階に宿泊していた男性(61)は「『火事だ』という声を聞いた時には既に玄関付近の火の勢いが強く、窓から逃げた」と話している。
生活困窮者の支援に取り組む人は、「現在の簡易宿泊所は住宅を借りるのが難しい高齢者や社会的に孤立した失業者、障害者たちの有効な受け皿になっている。困難を抱えている人たちが利用していることを前提に、行政は福祉部門とも連携して防災のあり方を考えるべきだ」と指摘している。(写真:近所の人が写した火災の状況)
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