老人(としより)の目(『ある年寄りの雑感』)

「子どもの目」という言葉がありますが、「年寄りの目」で見たり聞いたり感じたりしたことを、気儘に書いていきたいと思います。

安い卵

2021-04-18 19:51:50 | インポート
今年(2021年)の1月、元農林水産大臣が、大手の鶏卵業者から現金500万円の賄賂を受け取った疑いで起訴された。
鶏卵業者は、家畜にとってストレスの少ない飼育環境を目指す「アニマルウェルフェア」(動物福祉)をめぐって、国際獣疫事務局が策定を進める国際基準案に日本が反対するよう農水大臣に現金を渡して働きかけたという事件である。

国際獣疫事務局の国際基準案は、鶏の習性に配慮して止まり木や巣箱の設置を義務づけるもので、業者にとってそれは大きな負担を強いるものだからである。わが国では多くの鶏を「バタリーケージ」という方式で飼育しているという。
「バタリーケージ」(Battery cages)とは、ワイヤーでできたケージを連ねて幾段にも重ね、その中に鶏を収容する飼育方式のことで、それは「工場畜産」と批判されているそうである。
私たちが安い卵を買って食べられるのは、日本ではいまだに9割以上の養鶏場がこの方式で飼育しているからだという。鶏たちが自由に動き回ることができない環境で、餌を多量に食べさせられて卵を産ませられ……、私たちは涼しい顔をしてそれらの鶏の産んだ卵を食べている、というわけである。

「バタリーケージ」方式による飼い方に対して、鶏舎内や屋外で鶏を地面に放して鶏が自由に動き回れるようにした飼い方を「平飼い」という。

中には、自分は平飼いの卵しか買わないと言う人もいるだろうが、平飼いの卵は当然値段が高くなるので、安く売っている卵があるのに誰もが平飼いの卵を買うというわけにはいかないだろう。

「アニマルウェルフェア」という言葉を、農水大臣の事件で初めて知った。動物福祉ということを考えると、人間が他の生命を奪って生きなければならない存在として運命づけられていること、なぜ神はそうした運命を人間に与えたのであろうと、残念に思わずにはいられない。

しかしそうは言っても、この鶏の飼い方についての国際基準案を私たちはどう捉えるのか、このまま無関心で過ごしていいものか、考えなければならない問題であろう。






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