老人(としより)の目(『ある年寄りの雑感』)

「子どもの目」という言葉がありますが、「年寄りの目」で見たり聞いたり感じたりしたことを、気儘に書いていきたいと思います。

NHKスペシャル『さよならアルマ~赤紙をもらった犬~』を見た

2010-12-19 13:23:01 | インポート
12月18日夜、NHKスペシャル『さよならアルマ~赤紙をもらった犬~』を見た。
動物のかわいそうな話だろうから、見るのをやめようかと思ったが、見ないでどういう話だったのだろうと後で思うのもいやだったので、結局見ることにした。

私には前々から映画の人物関係がよく呑み込めないことがあったが、今回も、学生・太一と二人の子どもがどいう関係にあるのか、とっさには呑み込めなかった。また、アルマが初めどういう生活をしていて、どういう経過で太一のもとに来ることになったのかも、よく分からなかった。
それはともかく、“子ども店長”が出てきたのには参った。折角のしんみりした話なのだから、余計な雑音を感じさせないドラマ作りをしてほしかったと思う。ドラマづくりの世界の事情はよく分からないが、子役が不足しているのだろうか。

主役のアルマは、立派だった。よく自分の役をこなしていた。戦争で多くの軍用犬が戦場で命をおとしたであろうが、アルマは幸い戦場で落命することはなかったが、結局は日本に帰ってくることはできなかった。
兵士が悲惨な最期を遂げるのもいたましいが、動物は口をきけないだけに、また飼い主を絶対的に信頼して行動するだけに、不幸な最期を遂げるのは、まことにあわれで悲しい。

昭和20年8月、私が小学生だったとき、終戦を迎えたことで、台湾の地元の小学校に駐屯していた野戦病院の2頭の軍用犬のうちの1頭と親しくなったことがあったが、あの軍用犬はどうなってしまったのか、考えるとせつない。部隊もその年か翌年には帰還したし、私たちも翌年の初めには引き揚げてきたから、容易に他人に懐かないようにしつけられていた軍用犬が、その後どうなったか。地元民に貰われて幸せな老後を送ってくれていたらいいのだが……。

戦争中、危険動物ということで餓死させられた動物園の象のことや、信頼して餌を貰っていた人に突然捕まえられて保護された鴇のことなどを思うと、せつない思いでやりきれない。

神がいるとしたら、なぜこうした悲しいせつない思いをするような生き物をつくってこの世を創造したのだろうか、と恨みがましい思いを抱いてしまう。悟りに縁遠い凡人は、「世は定めなきこそいみじけれ」と、達観してばかりはいられないのである。