老人(としより)の目(『ある年寄りの雑感』)

「子どもの目」という言葉がありますが、「年寄りの目」で見たり聞いたり感じたりしたことを、気儘に書いていきたいと思います。

「~せざるをえない」の言い方(読み方)について

2008-08-20 11:03:00 | インポート
私たちが普段使う言葉のなかに、文語的な言い方が、いくつか含まれています。「~せざるをえない」という言い方も、そのひとつです。漢字を宛てれば、「~せざるを得ない」となります。
この言い方の語の構成を確認しておくと、文語のサ変の動詞「す」の未然形「せ」+文語の打消しの助動詞「ず」の連体形「ざる」+格助詞「を」+ヤ行下二段活用の文語動詞「う(得)」の未然形+打消しの助動詞「ない」の終止形、ということになります。
この言い方は、例えば「その行為は、残念ながら法令に違反すると言わざるを得ない」などと使われます。
ところで、最近、気になることがあります。それは、この「せざるをえない(せざるを得ない)」を、妙な言い方で言う人が時々見受けられることです。それは、「せざる-をえない」と言っているように聞こえる言い方をする人が見受けられる、ということです。
もちろん、「せざるをえない」を途中で切るとすれば(つまり、文節で切るとすれば)、「せざるを-えない(せざるを-得ない)」と切るべきで、これを「せざる-をえない」と切ることは、語の構成を無視した誤った切り方(誤った言い方・読み方)だということになります。
プロ野球解説者に、こういう言い方をしているのではないかと聞こえる言い方をする人がいて、以前から気になっていましたが、このあいだは、NHKのアナウンサー(放送記者?)までがこのおかしな言い方をしている(ように聞こえる言い方をしている)のに出会って、驚きました。
「すごく暑い」と言うべきところを、「すごい暑い」と言う人がいつのまにか大量に増えてしまったのは、大人たちが「すごい暑い」などと言い出した若者に、「そういう言い方はない。それは『すごく暑い』と言うべきだ」と注意してこなかったせいではないかと考える小生は、この「せざる-をえない」という言い方も、気がつくたびに、「『せざる-をえない』ではない。それは『せざるを-えない(せざるを-得ない)』と言うのだ」と注意を喚起すべきではないかと考えて、ここに記した次第です。