老人(としより)の目(『ある年寄りの雑感』)

「子どもの目」という言葉がありますが、「年寄りの目」で見たり聞いたり感じたりしたことを、気儘に書いていきたいと思います。

女化の狐伝説

2019-09-10 19:31:33 | インポート

先日、NHK総合テレビ『日本人のおなまえっ!』で、「珍地名大特集」ということで、志布志、助兵衛新田、途中などの地名とともに、茨城県牛久市の「女化」が取り上げられていた。

女化は、「おなばけ」と読む。女化を「おなばけ」と読むことは知っていたし、変わった名前だなあとは思っていたが、この女化に、あの『信太妻』(『葛の葉』)と同じような野狐の話があるということは、迂闊にして知らなかった。そこで早速ネットで調べて、いくつかの資料を『小さな資料室』で公開することにした。調べたのは、次の書物である。

『東国戦記実録』 『常総軍記』 『常久肝胆夢物語』

女化の野狐物語には細かいところでは幾つかの違いがあるが、話の筋はほとんど『信太妻』(『葛の葉』)と同じである。
狐を助けた男のところへ、美女が訪ねてくる。やがて二人は夫婦となり子供が生まれる。数年経ったある日、母親はうっかり自分の正体を子供に見られてしまう。かくして母親は、やむなく悲しみの歌を残して、森に姿を隠す、というものだ。

『信太妻』の狐の残した歌は、
  恋しくば尋ね来てみよ和泉なる信太の森のうらみ葛の葉
女化の狐の残した歌は、
  嬰児(みどりご)の母はと問はば女化の原に泣く泣く臥すと答へよ
である。

『小さな資料室』に『信太妻』(『葛の葉』)は載せていたのに、「女化」の話を載せていなかったのは申し訳ないことであった。

調べてみると、『日本人のおなまえっ!』で「女化」という名前が取り上げられたのは、2019年(令和元年)9月5日の放送であった。