老人(としより)の目(『ある年寄りの雑感』)

「子どもの目」という言葉がありますが、「年寄りの目」で見たり聞いたり感じたりしたことを、気儘に書いていきたいと思います。

「北方領土と森元総理の発言」

2013-04-24 12:42:39 | インポート
年来の友人から、次のようなコメントが送られてきました。これは相手のあることで簡単に解決のつかない難しい問題ですが、私には同感できる部分も少なくありません。まずは、読んでみてください。

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日本経済新聞の3月18日付けネット版に、次のように出ている。

《ロシアを訪問している森喜朗元首相は22日、モスクワ国際関係大学で講演した。北方領土交渉をめぐり「4島一括返還」が実現した場合と「現状維持」が決定した場合に触れて「どちらも恨みが残り平和的な解決にならない」と指摘。最終的な決着に向けて「お互いに譲歩が必要だ」と強調した。》

この報道によれば、森元総理の発言は、プーチン大統領が言った「引き分け」と同じことを言っているように聞こえる。森元総理は日本の意志の表明者ではなくて、まるでプーチン大統領の代弁者のように見えるが、そういう人間が、なぜわざわざモスクワまで出かけて行ってプーチン氏と会う必要があったのだろうか、はなはだ疑問と言わざるを得ない。
そもそも北方領土は、日本がポツダム宣言の受諾を表明した後、1945年8月28日から9月5日にかけてソ連軍が無法に日本から強奪したものであって、いまだに返還要求に応じていないものである。そうであるのになぜ、森氏は「お互いに譲歩が必要」だと言うのであろうか。
それはたとえば、他人の持ち物を奪った人間が、相手が返せと要求するのに対して、「お互いに譲歩して分け合うことが必要だ。そうでなくては恨みが残る」と言って、無条件に返すことを拒んでいるのと同じことではないのか。それを奪った人間が言うのなら、それが理不尽であるにせよ分からないでもない。しかし、そういう発言を持ち主がするとは、いったいどういう神経の持ち主なのだろうか。

日本は、戦後、近現代史を学校で殆んど教えなかったといってよい。われわれが教わったころの日本史は、古代から近世までやったところで年度末を迎え、先生の「あとは自分で教科書を読んでおけ」という言葉で終わってしまったような有様であった。日本史の授業がそうなったのは、あながち高校の先生のせいばかりではない。と言うよりはむしろ、大学の入試で近現代の問題を避けて全く出題しなかった大学の教師の姿勢に大きな原因があったというべきである。こうして、近現代の自分の国の歴史を知らない人間が多く生み出されたのであった。

森元総理が、なぜ今頃のこのこ出てきたのかはよく分からないが、国のために一肌脱ぐというのなら話は分かる。しかし、相手のご機嫌をとりにわざわざモスクワまで出かけて行って、わが国の利益を損なう発言をして来るというのは、どういうことなのか。全く許せない行為である。

彼の行為は、一種の老害と言うべきである。年寄りはひっこんでいろ!と言いたい。

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彼は随分激しい言葉で憤りを発していますが、この問題はどう考えたらいいのでしょうか。どのような解決策が望ましいのでしょうか。戦後68年も経とうとしている今、確かに、難しいからといっていつまでも放置しておいていい問題だとは思われません。領土問題には、この他に竹島や尖閣諸島のこともあり、まことに頭の痛いことです。

友人には、気持ちはよく分かるが、あまり憤慨し過ぎて身体をこわさないように、と返事をしてやりました。


  



命長ければ恥多し

2013-04-03 15:41:43 | インポート
荘子の言葉に、「命長ければ恥多し」(壽則多辱)というのがある。
意味はもちろん、長生きをすれば、それだけ恥をかく機会も多くなる、ということだろうが、実際にある程度長生きをしてみると、この言葉には又、荘子の考えたものとは違う別の意味があるようにも思えてくるのである。

それはどういうことかというと、年をとってくると、昔のことがあれこれと思い返されてくるもので、それは多くの場合、楽しい思い出というよりは後悔の思いのほうが多いものである。あのときはああすればよかった、このときはこうすればよかった、と悔やむ気持ちになることが多いのである。それほど年をとらずに一生を終わった人は、そうした思いを抱かずに、抱く機会がなくて済んだであろうが、長生きをするとなると、そうして自分の一生を振り返る機会が増えて、あれこれ悔やむことが多くなる、というわけである。

年をとってから自分の一生を振り返ったときに、楽しい思い出ばかりを思い出すという人がいるとすれば、それはまことに幸福な人である。おそらく多くの人は、後悔の念を抱いて、ああ、長生きをすれば、こうして悔やむ機会が多くなるものだなあ、としみじみと「命長ければ恥多し」という言葉を思い起こすのではあるまいか。