老人(としより)の目(『ある年寄りの雑感』)

「子どもの目」という言葉がありますが、「年寄りの目」で見たり聞いたり感じたりしたことを、気儘に書いていきたいと思います。

間髪を容れず

2020-03-20 17:39:37 | インポート
2020年3月17日、自民党本部で党の両院議員総会が開かれた。
挨拶に立った党総裁の安倍首相は、新型コロナウイルスの感染拡大で日本を含む世界中のマーケットが動揺しており、今後世界経済の更なる落ち込みが懸念される、「事態の変化を注意深く見極めながら、機動的に必要かつ十分な経済財政政策を間髪を容れずに講じていかなければならないと考えております」と語った。その際、「間髪を容れず」を「カンパツをいれず」と言っておられた。14日の記者会見でも「カンパツをいれず」と言っておられたというから、単なる言い間違いではないようだ。
言うまでもなく、「間髪を容れず」は「カン、ハツをいれず」と言うべきで、間に髪の毛1本も入れるすきまもない、というのが、もとの意味であり、そこから「直ちに」「すぐさま」という意味が生まれた言葉である。言葉の起こりの「間不容髮」という原文を見れば、決して「カンパツ」とならないことは明らかである。
安倍首相ほどの人になると、周囲の人は、「安倍さん、あれは「カンパツ」ではなく、「カン、ハツをいれず」ですよ」と注意するのを躊躇するのであろうか。
本来は「カン、ハツをいれず」でも、今は「カンパツをいれず」でいいのだ、という意見もあるようだが、一国の首相としては、漢文の「間不容髮」(間、髪を容れず)から来ている言葉なのだから、やはり「カン、ハツをいれず」と言うべきだ、というのが私の意見である。

 

※ なお、「いれず」は「容れず」か「入れず」か、という疑問もあるかと思うが、「カン、ハツをいれず」の出典が「間不容髮」なので、本来は「容れず」であるが、常用漢字音訓表には「容」に「イ‐れる」の訓がないので、常用漢字の範囲内で書くとすれば「入れず」となり、「間、髪を入れず」でよいことになる。