老人(としより)の目(『ある年寄りの雑感』)

「子どもの目」という言葉がありますが、「年寄りの目」で見たり聞いたり感じたりしたことを、気儘に書いていきたいと思います。

「猫」(『酉陽雑俎』巻8より)

2014-07-29 09:14:00 | インポート

東洋文庫の『酉陽雑俎5』(段成式、今村与志雄訳注)を覗いていたら、続集巻8の「支動 動物雑纂拾遺」に、猫のことが次のように出ていたので、記録しておくことにしました。

猫。
 目のひとみが、明け方と暮れ方はまるい。正午になると、ひきしまって糸のようになる。その鼻のさきは、つねにつめたい。ただ、夏至の日、一日は、あたたかい。その毛は、蚤や虱をはねつける。黒い猫は、闇のなか、その毛を逆にこすると、すぐに、火花が出る。
 俗に、猫が耳のうしろまで顔を洗うと、客がくるという。
 楚州の射陽で産出する猫には、褐花のものがある。霊武に、紅叱撥(しっぱつ)および青驄(そう)色のものがある。
 猫は、別名、蒙貴という。また、別名、烏(う)員という。
 平陵城は、古代の譚(たん)国である。城中に、一匹の猫がいて、つねに金の鎖を帯びている。銭をもち、蛺蝶(きょうちょう)のように飛ぶ。土地の人々はしばしば、それを見た。


引用者注: 「青驄(そう)色」の「驄」は、本文には「馬+怱」という俗字が用いられています。
     なお、『東洋文庫5』には、本文に「校記」と「注」が付いていますが、ここには省略しました。

東洋文庫『酉陽雑俎5』(段成式、今村与志雄訳注)は、平凡社・1981年12月18日初版第1刷発行、1988年8月10日初版第3刷発行。

酉陽雑俎(ゆうようざっそ)=唐の段成式の著。前集20巻、続集10巻。怪異・神仙・幽鬼・霊験・奇習などを分類して収録。860年頃成る。
     (『広辞苑』第6版による。)