隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

0269.震える岩 霊験お初捕物控

2002年08月13日 | 時代ミステリー
震える岩
霊験お初捕物控
読了日 2002/8/13
著 者 宮部みゆき
出版社 講談社
形 態 文庫
ページ数 407
発行日 2000/06/01
ISBN 4-06-263590-9

 

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先月読んだ「かまいたち」(264.参照)に収録されていた「迷い鳩」、「騒ぐ刀」に登場した少女・お初を主人公とした長編だ。寛永年間に江戸南町奉行を務めた、根岸肥前守鎮衛(ねぎしひぜんのかみやすもり)が残した“耳袋”に記された「奇石鳴動の事」に題材をとった著者の長編時代ミステリーである。肥前守の命により古沢右京之介なる優男と共に事件を調べるのが、不思議な力を持つ少女・お初である。
深川で騒ぎとなっている”死人憑き”を調べていくうちに、百年前に起きた赤穂浪士討ち入り事件が浮かび上がってくる。というストーリーなのだが、この文庫の巻頭にエピグラフとして、肥前守の「奇石鳴動の事」の全文が記されているが、わずか200字程度の短い文章である。これを元に壮大な物語を形成するということ自体に驚かされるというか、圧倒されるのである。
耳袋に記されているような“震える岩”が実際にあったかどうかは別にして、そこに超能力を持つ少女を配置するという一見そぐわない感じがするが、それが実に見事に、まったく違和感無く収まっているのである。解説子ではないが、シリーズとして、もっとたくさんの物語に、このお初を登場させてほしいと思うのは僕だけではないだろう。

 

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