隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1218.三河路殺人慕情

2012年01月15日 | トラベルロマン
三河路殺人慕情 自動車の女
読 了 日 2011/12/09
著  者 石川真介
出 版 社 青樹社
形  態 新書
ページ数 284
発 行 :日 1998/07/10
ISBN 4-7913-1096-9

 

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ばらく遠のいていた著者の作品を読む。同じようなことは過去何度か書いてきたが、僕はこのようなタイトルのついた作品には従来あまり関心がなく、どちらかと言えば敬遠していた。取り立てて言うほどの理由はないが、おそらく先々も読むことはないだろうと思っていた。
ところが著者の鮎川哲也賞受賞作「不連続線」を読んで、ドラマ化された映像も見て(こちらの方が先だったか?)とにかくその主人公に惹かれて他の作品を読むことになり、それがたまたま旅情ミステリーと呼ばれる作品群だったということなのだ。
時々思い出しては読むといったスタンスだったが、本書で8冊目となった。僕が惹かれたという主人公は、吉本紀子という推理作家だ。最初の作で、義理の母親が旅行先でトランクづめの死体となって発見されるという事件を調べたことが発端となって、その後の作品では推理作家ということになって登場する。

 

 

どうも僕が小説の中のキャラクターを好きになるのは圧倒的に女性が多いのだが、男性である以上仕方がないのかと思っている。と言ったって、小説の中の人物と仲良くなれるわけでもないが・・・・。
この歳になって、現実の女性には相手にされないから、せめて小説の中の女性に思いを寄せているのか?
まさか!そんなこたアないよなア。まあ、それはおいておくとして、今回は残念ながら彼女は電話の会話だけの登場だ。したがって彼女の推理は事件を全面的に解決するということではない。しかし、いつもコンビを組む愛知県警の上島警部に対するアドバイスは、あたかも安楽椅子探偵の様相を示してこれまた面白いのだ。
著者の作品に旅情ミステリーという副題がつくのは、登場人物たちが示す何とも切ない人間ドラマということでもあるのだろう。
今回のミステリーの真髄は完ぺきと思われるアリバイの壁をどう崩すのかだ。
途中で、いくら怪しいと思われても、鉄壁のアリバイの前には、もしかしたら間違った捜査をしているのではないか?と思ってしまいそうだ。

 

 

リバイ崩しの名作は古今東西数えきれないほどの名作もあるが、いかに崩せそうもないアリバイを作るかが、作者の頭を使うところなのだろう。その方法もいろいろと出尽された感もあるが、本書を読んでいるとまだまだアリバイ崩しのミステリーは種が尽きてないということを感じる。
しかし、本書では頭からこれはアリバイ崩しのミステリーです、というような思いを抱かせないところに面白さがある。あくまで人が織りなすドラマの中で、アリバイが犯罪の容疑者を確定できないもどかさが最後まで興味を持続させるのだ。
また、この作品では自動車メーカーに勤める作者の、自動車への思いのようなものが込められていると感じさせるようなところもあり、その辺もちょっと面白いところだ。

 

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