美濃路殺人悲愁 | ||
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読 了 日 | 2012/12/08 | |
著 者 | 石川真介 | |
出 版 社 | 光文社 | |
形 態 | 文庫 | |
ページ数 | 316 | |
発 行 日 | 2004/02/20 | |
I S B N | 4-334-73632-7 |
カな話だが―いや強ちそうとも言えないか?―僕は著者の作品のヒロインに惚れ込んでしまって、作品を次々読むことになった。従来僕は一般的にトラベルミステリーと呼ばれている作品に興味がなかった。テレビの旅番組と相まって、今でも「旅情」などという冠詞のついたミステリーが多く刊行されている。
この著者の作品群もそう呼ばれていることは知っているが、先述のごとく僕の目的は、登場人物である推理作家・吉本紀子の活躍だ。東京創元社が主宰する栄えある第2回鮎川哲也賞を受賞した「不連続線」で初めて登場する吉本紀子は、その時点ではまだ推理作家ではなかった。
夫に先立たれた若い寡婦で、そのうえ二人暮らしの義母まで事件で失うという不幸に見舞われる。そんな彼女が自らの才能を発揮して、義母の事件を解明するというストーリーだった。この作品は東ちづる氏の主演でドラマ化されて、そのドラマにも影響されて、このヒロインに魅せられてしまったのだ。
とはいっても、この作者のストーリーは登場人物たちの過去から現在までの環境や、経歴、そして人間関係と、複雑な構成が魅力である。よくもこんな入り組んだ人間関係を築くものだと感心する。そこはプロだから当然と言えばそうかもしれないが、読み進むうちに、思わぬ方向から次第に関連が明らかになっていく過程に興奮する。
今回はそうしたストーリーがなおかつ、推理作家吉本紀子にミステリーとして仕上げてほしいという依頼があるのだ。例によって愛知県警の広域捜査官・上島も登場する。しかし吉本紀子も上島警部も奇妙な事件が発生する終盤からの登場である。
いつも上島警部のひそかな吉本紀子に対する恋心が、どう発展していくのかという興味もあるが、これは他の作家の作品同様に、ずっとこのままつかず離れずの関係が続いていくのかもしれない。時にはユーモラスな二人の会話のすれ違いが、重苦しい事件の雰囲気を和らげる役割を果たしているかのようだ。
んな上島警部から吉本紀子へデートの誘いの電話が入るところから物語はスタートする。今まで登場人物の年齢など考えずに読んできたが、そんな電話をする上島警部という人物に、何となく中年のイメージを抱いてきたが、案外若いのかもしれない、などと想像する。
吉本紀子は仕事柄、美濃路への旅行を招待されていることを上島に話すと、彼は岐阜県なら隣の県だから、ぜひその仕事を引き受けるよう提言する。そこから話は一変して、何のつながりもないと思われる3組のカップルに、参加するだけで多額の謝礼金を約束するという、奇妙な招待状が届く。いずれのカップルもその招待状のあまりにも破格の条件に半信半疑の気持ちを抱きながらも参加するのだが・・・・。
3組のカップルが最終的に集められたホテルで、二人の男から信じられないような話を聞かされて、挙句の果てにそこで殺人事件が発生するのだ。
2部構成のストーリーの事件の真相が、吉本や上島の手でどうやって解明されるのかが、終盤の面白さだ。
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