(4月16日付の続きです。写真は、本文と直接関係ありません)
小説新潮に、増田俊也さん(50)の「北海タイムス物語」が連載されている。
僕は以前、北海タイムスと提携していた「日刊スポーツ北海道」に知人がいたので、札幌の北海タイムスに何回か行ったことがあった。
というわけで、増田さんの青春物語@新聞記者編ともいえる同小説に注目した——の第84回。
(小説の時代設定や登場人物のほか、新聞編集でつかう倍数、CTSなどの用語は繰り返して説明します)
【 小説新潮2015年12月号=連載③ 368ページから 】
いくら読んでも内容が頭の中に入ってこない。
追い出そうとしても追い出そうとしても頭なかに別の考えが入ってくる。
河邑や武藤、浦さんは、今頃〈北海タイムス原稿用紙〉に記事を書いているのだ。他社の記者たちとともに外を走り回り、記者クラブに戻ってキャップたちの叱咤激励❶を受けながら枡目を埋めているのだ。
こんな子供だましの、誰でもできるようなことやってられない——。
悔しさが喉元まで込み上げて❷きて、息を吐いた。
「帰っていいぞ」
権藤さんが顔も上げずに言った。
「あ、いや……」
「やる気がないなら帰れ」
「いえ……帰りません……」
「いまの溜息はなんだ! ふざけるな! 帰れ!」
権藤さんが血走った眼を僕に向けた。整理のみんなが顔を上げ、心配そうにこちらを見ていた。
「すみません……」
僕が頭を下げると、権藤さんが社会部を振り返った❸。
「おい、社会部。朝火事の原稿どうなってるんだ! 早く出せ!」
社会部のデスクが真っ赤な顔でこちらを見た。
「放火かもしれないんだって言ってるだろ! いま追取材させてんだ!」
❶叱咤激励
「いやぁー、新聞社あるあるを描いているなぁ~。面白いなぁ~」
と読みすすんできた校閲部の赤鉛筆がピタッと止まる箇所。
「叱咤激励」——。
新聞社のルールブック「記者ハンドブック/新聞用字用語集13版」では、
しった(叱咤)→叱咤 しった/叱咤しった激励
ルビを振りましょうとあるけど、著作物なのでこのまま行ってください。
❷悔しさが喉元まで込み上げて
ふぅ~…………あのねぇ、野々村くん(⬅︎小説の主人公)隣の芝生は青く見えるのだよ。
お仕事小説&キミの成長物語とは分かっているけど、野々村くんにあまり共感できないところがあるのはナゼだろう。
やはり、
〈マスコミに入ったんだから、黒塗りハイヤーを乗り回して颯爽と道警や道庁に取材に行きたい!〉
とキミが思っているところだろうか。
「こんな子供だましの、誰でもできるようなこと」
で、多くの整理部記者がムッときたと思う。
❷権藤さんが社会部を振り返った
出稿状況や行数、写真有無など多くの連絡があるので、出稿デスクと整理は隣接している。
だいたい、キャスター付きの肘かけイスをクルッと回転させると、そこは出稿部(←お、なんかの歌みたい笑)
———というわけで、続く。