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日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「ライオンボーイⅡ 奇跡の翼」ジズー・コーダー著(枝廣淳子訳)PHP研究所

2009-02-23 | 児童書・ヤングアダルト
「ライオンボーイⅡ 奇跡の翼」ジズー・コーダー著(枝廣淳子訳)PHP研究所を読みました。
オリエント急行でボリス王に助けられたチャーリーはベニスへ。
そこは海に沈み、傲慢な総督が幅を利かせている街。
味方だと思っていた人物の裏切り、パリで合流した巨大ライオンの隠された過去、アレルゲニーとは、両親を懸命に助けつづけた猫・セルゲイの秘密、そして両親とサーカス船の思わぬ関係。さらに舞台はベニスからアフリカへ向かいます。
ネタバレありますので、未読の方はご注意ください。

「ライオンボーイ」三部作の第二巻です。
次々と場面展開していった第一巻とは異なり、今回はじっくり一都市ベニスに主な話は集中。
ボリス王の邸宅に落ち着いたチャーリーとライオンたち。
ところが人目をさけるという名目で、なかば監禁生活をおくるはめに。
エドワードがライオンを総督にプレゼントする外出のときが逃げるチャンスだとチャーリーたちは計画を練ります。

一方チャーリーの両親たちは薬物とセミナーを受けコーポラシー社によってマインド・コントロールされようとしていました。
彼らがささやくのは「勤勉・努力・家族への愛情・快適さ・子どもへ託す夢」。
一見よさそうなうたい文句です。
・・・が、それは結果として、コーポラシー社にお金を落とすことが大事なだけ。
そして得るのは自分と似たものだけを囲い込む閉じた暮らし。
ニセモノからできたカッコいい暮らし。

「社交クラブではビールを飲ませてポテトチップスを食べさせたがり、治療棟では、健康に気をつけなさいとあれこれ指示しているのだが、この矛盾に気がつく人は誰もいないようだった。どうしてこんな矛盾があるのかというと、みんな自分がつかったものについて自分で支払うことになっているからだ。」

入れ替わり立ち代り同じことをささやかれ薬物を投与され、負けそうになるふたり。常に消費欲を煽る現実社会を象徴しているようです。

ほかにも古代生物を禁じられたDNA操作によって作り出す話、難民船、周囲を武装し水を求めるだけの人を上陸させない島など、現代社会の矛盾とひずみが物語のあちらこちらに登場します。

やっとのことで脱出したアネバとマグダレン。
そしてベニスを抜け出したチャーリー。
追うラフィ、そしてマッコーモ。
すべての人物たちがモロッコのエッサウィーラにたどりつきます。
ここでももちろんひと悶着あるのですが、ライオンたちが無事ふるさとにたどりつけてよかった・・・。
そしてもちろんチャーリーが成長したたくましい姿で両親たちに再会できてよかった!

第三巻の舞台はガーナへ?つづく!



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