「童話物語(上)大きなお話の始まり」向山(むこうやま)貴彦著(幻冬社)を読みました。
世界は滅びるべきなのか?
その恐るべき問いの答えを得るために、光の妖精フィツは地上へとやってきました。
最初に出会ったひとりの人間を9日間監察して判断することがフィツの使命。
しかし、フィツがたまたま出会ったのは極めて性格の悪い少女ペチカでした。
単行本には未収録の設定資料「クローシャ大百科事典」が文庫化にあたり追加されています。
挿絵は宮山香里(かおり)さん。地図や独特の風物がやわらかい印象の絵で描かれています。厳しい作品の世界の中で、ほっと一息つかせてくれるページです。
ネタバレありますので未読の方はご注意ください。
ペチカの暮らす世界クローシャは、時間も貨幣も距離も、その単位すべてが私たちの世界とは異なるもの。
人々は「妖精の日」がくると金色の雨がふり、悪人はすべて滅びると信じています。
ペチカは貧しく小さな田舎町トリニティーに住む13歳の少女。
6歳のときに母親と死に別れ、それ以来孤児として教会の残酷な守頭に虐待を受け、周囲の子どもたちにいじめられてきました。
自分より弱いもの(子猫や、妖精フィツ)に怒りをぶつけるペチカ。
「あっち行け!」「死んじゃえ!」「私のものをとるな!」
ペチカが今までこういう言葉や仕打ちを受け、自分の心も体も傷つき損なわれてきたからなのだと思うと、本当に胸が痛みます。
大人たちも揃ってペチカをいじめるばかりで誰も助けてあげない・・・本当に可哀想。
「妖精は呪われたもの」と思い込んでいる住人がペチカとフィツがともにいるところを見つけ、家まで燃やされ、ペチカはその身を追われることに。
やがて盲目の老婆の馬車(正しくはロバ車)に助けられ、学問の都ランゼスへ。
そこで火の妖精ヴォーに出会います。
ヴォーはフィツと違って人間界が長い妖精。人間の虚栄心や猜疑心を利用し、面白半分に人間を翻弄します。
妖精も人間と同じで、いい面、悪い面どちらもあるんですね。
さらにペチカは老婆の馬車で西へ。
何も言わない老婆だけれど、温かい寝床をしつらえてくれて、スープを作ってくれて・・・少しずつではありますがペチカの気持ちは落ち着いてきます。
この老婆との「いつもと同じ」のやりとりは、ペチカが村で孤独な暮らしをしていたときの単調な辛い生活とはまったく違うもの。少しずつペチカの心がつくろわれつつあるのを読者である私たちも感じます。
しかし守頭は執拗にペチカを追っていました。
ペチカは老婆の馬車を逃げ出し、赤い森アウクライアの森へ逃げ込みます。
そして9日間が過ぎ、フィツとの別れが訪れます。
使われていない小屋を見つけ、自分で赤豆を摘んでだんごをつくり、天然の温泉で湯浴みするペチカ。残酷な人間社会と対照的に、この自然の中での暮らしはとても穏やかな理想郷のように描かれています。自然の秩序を乱すのはいつでも人間ばかりなり?
妖精の掟どおりフィツのことを忘れていくペチカ。今までのこともこれからのことも記憶があいまいなペチカは不安になり、一度町に出てみる決意をします。
北をめざしたペチカがたどりついたのは水路がはりめぐらされた観光都市アロロタフ。
ここの水門でペチカはヴォーと、彼が監察している人間イルワルドの図った罠に落ちてしまいます。人間たちを滅ぼす炎水晶のいけにえにしようとペチカを襲うイルワルド。逃れようとするペチカ。そしてフィツとの思わぬ再会。
決壊する水門。
濁流に呑み込まれたフィツの行方は??・・・のまま下巻につづく。
世界は滅びるべきなのか?
その恐るべき問いの答えを得るために、光の妖精フィツは地上へとやってきました。
最初に出会ったひとりの人間を9日間監察して判断することがフィツの使命。
しかし、フィツがたまたま出会ったのは極めて性格の悪い少女ペチカでした。
単行本には未収録の設定資料「クローシャ大百科事典」が文庫化にあたり追加されています。
挿絵は宮山香里(かおり)さん。地図や独特の風物がやわらかい印象の絵で描かれています。厳しい作品の世界の中で、ほっと一息つかせてくれるページです。
ネタバレありますので未読の方はご注意ください。
ペチカの暮らす世界クローシャは、時間も貨幣も距離も、その単位すべてが私たちの世界とは異なるもの。
人々は「妖精の日」がくると金色の雨がふり、悪人はすべて滅びると信じています。
ペチカは貧しく小さな田舎町トリニティーに住む13歳の少女。
6歳のときに母親と死に別れ、それ以来孤児として教会の残酷な守頭に虐待を受け、周囲の子どもたちにいじめられてきました。
自分より弱いもの(子猫や、妖精フィツ)に怒りをぶつけるペチカ。
「あっち行け!」「死んじゃえ!」「私のものをとるな!」
ペチカが今までこういう言葉や仕打ちを受け、自分の心も体も傷つき損なわれてきたからなのだと思うと、本当に胸が痛みます。
大人たちも揃ってペチカをいじめるばかりで誰も助けてあげない・・・本当に可哀想。
「妖精は呪われたもの」と思い込んでいる住人がペチカとフィツがともにいるところを見つけ、家まで燃やされ、ペチカはその身を追われることに。
やがて盲目の老婆の馬車(正しくはロバ車)に助けられ、学問の都ランゼスへ。
そこで火の妖精ヴォーに出会います。
ヴォーはフィツと違って人間界が長い妖精。人間の虚栄心や猜疑心を利用し、面白半分に人間を翻弄します。
妖精も人間と同じで、いい面、悪い面どちらもあるんですね。
さらにペチカは老婆の馬車で西へ。
何も言わない老婆だけれど、温かい寝床をしつらえてくれて、スープを作ってくれて・・・少しずつではありますがペチカの気持ちは落ち着いてきます。
この老婆との「いつもと同じ」のやりとりは、ペチカが村で孤独な暮らしをしていたときの単調な辛い生活とはまったく違うもの。少しずつペチカの心がつくろわれつつあるのを読者である私たちも感じます。
しかし守頭は執拗にペチカを追っていました。
ペチカは老婆の馬車を逃げ出し、赤い森アウクライアの森へ逃げ込みます。
そして9日間が過ぎ、フィツとの別れが訪れます。
使われていない小屋を見つけ、自分で赤豆を摘んでだんごをつくり、天然の温泉で湯浴みするペチカ。残酷な人間社会と対照的に、この自然の中での暮らしはとても穏やかな理想郷のように描かれています。自然の秩序を乱すのはいつでも人間ばかりなり?
妖精の掟どおりフィツのことを忘れていくペチカ。今までのこともこれからのことも記憶があいまいなペチカは不安になり、一度町に出てみる決意をします。
北をめざしたペチカがたどりついたのは水路がはりめぐらされた観光都市アロロタフ。
ここの水門でペチカはヴォーと、彼が監察している人間イルワルドの図った罠に落ちてしまいます。人間たちを滅ぼす炎水晶のいけにえにしようとペチカを襲うイルワルド。逃れようとするペチカ。そしてフィツとの思わぬ再会。
決壊する水門。
濁流に呑み込まれたフィツの行方は??・・・のまま下巻につづく。