Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「浅田次郎とめぐる中国の旅」浅田次郎著(講談社)

2009-02-08 | エッセイ・実用書・その他
「浅田次郎とめぐる中国の旅」浅田次郎著(講談社)を読みました。
「蒼穹の昴」「珍妃の井戸」「中原の虹」のガイドブック。
浅田次郎さんが見どころを解説する紫禁城ツアーや北京の歩き方。満州、万里の長城。
写真も豊富で地図を見ながら小説の世界が楽しめます。
王座や珍妃の井戸、龍壁、私も実際に見てみたいです。

著者本人による作品の舞台解説&魅力的な登場人物たちが生み出されたきっかけなども知れて、シリーズにはまった人なら必見の一冊。
でも読み途中の人はネタバレがある(というか歴史的な史実が語られている)ので、シリーズ読了まではこの本は読まないほうがいいと思います。
(私もまだ「中原の虹」読み途中なのですが。

浅田さんへのインタビューで、興味深かったのは「知っている史実をいかにストーリーを妨害させない程度に抑えるか」という点。

「僕は小説を書くときに、二つのことを憲法にしています。
一つは美しく書く。
もう一つは分かりやすく書く。
この歴史的記述がわかりやすいか、歴史的記述を書くことで物語の美しさが損なわれないかだけを意識しているので、そこがリミットになります。」

浅田さんの歴史への愛と、史実を調べ記憶する頭脳、文章へのこだわりと高いサービス精神、すべての類まれな混交によって、私たちがこのような面白い小説が読めるのですね。

歴史小説を書くにあたって、「学生の気分で謙虚に史料を学び、小説家という別人格に豹変すればいいだけです。」という言葉も印象的でした。
私だったら史実、史料を「制約」と捉えてしまいそうですが、「歴史小説は、どれだけ大風呂敷を広げても、嘘と嘘の間を史実のしっくいで固めていけば形になりますから、その開放感はたまりません」と語る浅田さんの言葉が面白いなあと思いました。

早く「中原の虹」の最終巻が読みたいです。