イギリス/ストックポート日報 《England/ Daily Stockport》

イギリス北西部の歴史ある街、ストックポート Stockportから(ほぼ)日替わりでお送りする、イギリス生活のあれこれ。

見なれない白いタマゴと、鶏卵にまつわるあれこれ

2023年11月07日 02時53分31秒 | 英国の、生活のひとコマ

タマゴ(鶏卵)の話です。

電化製品が比較的安く買える英国最大手のスーパーマーケット・チェーン、テスコ Tesco の大型店舗に行きました。キッチンのテレビが壊れたものですから。家電売り場が一時的に閉鎖で、テレビの下見はできませんでした...その話はさておき。

中二階のカフェから見下ろした店内のようすです。広大なクリスマス雑貨売り場と、臨時パーテンションで区切られた改装予定の家電売り場...☟

 

別々に行動していた夫が私を探し出して、「すごいぞ!タダ~Tadh ♪(ジャジャーン♪)!」とタマゴの箱を突き付けてきました。

あけてみたら、全部真っ白。(ぜんぜんすごくないのですが)英国で普通に流通しているタマゴは殻の茶色いものばかり。三十余年、私が知る限りずっとそうでしたから、ちょっと意外でした。

以前の記事で使った、英国の一般的なタマゴの写真です☟

 

日本のタマゴはたいてい白ですよね。

卵売り場に行ってみたら、白いのも茶色いのもいっしょの大箱の中に積まれていました。6個入りの箱を一つずつ開けてみなければどちらが入っているかわかりません。ひとつの箱には茶色か白の同じ色ばかり詰まっていました。

現在主流の、フリー・レンジ free range(放し飼いタマゴ)自社ブランドMサイズ6個入りが,(白も茶も)1ポンド50ペンス(275円)です。

67歳の夫が子供の頃、英国で一般に流通するすべての卵は白かったそうです!

いつの間にか白い卵は市場から消滅、そしてまた、戻ってきた?

検索してみたら、関心を持つ人が多かったらしく、「テスコの白い卵」に関する記述に数多くヒットしました。

遅くとも1980年頃には一般消費者が買える卵はすべて茶色になっていたそうです。

一般消費者には「茶色い卵のほうが栄養価が高い、味が良い」という強い思い込みが昔からあり、茶色い方が良く売れたからです。

質問掲示板に寄せられた一般回答者のコメントによれば、市場全体が茶色一辺倒に変わる前の過渡期には白いタマゴを濃い紅茶に一晩漬けて(茶色くして)から出荷する生産者もいたようです。

タマゴの色はニワトリの種類によって違います。

興味深い記事を見つけました。耳たぶ earlobe (クチバシの横のビロビロ)が白いニワトリは白いタマゴを、赤っぽいニワトリは茶色いタマゴを生むそうです!!よそのサイトから勝手に借りた資料画像です。☟

栄養価や味の違いはタマゴの殻の色ではなく、ニワトリの飼料と健康状態によるそうです。

実は1980年以降も、白いタマゴは主にホスピタリティ(ホテル、飲食)業界で流通していたそうです。

ロックダウン期間中に注文がパタッととまって、困った生産者が小売業にたのみ込んで引き取ってもらったのが、白いタマゴの一般販路再流通のきっかけで、テスコが買い取り始めパンデミック終了後も白いタマゴの販売を続けているというわけです。

 

レストランやカフェが使用しているタマゴに不信感を持っている人は多いですよ。

英国では非常に多くの消費者がニワトリの生育環境を気にして、気をつけて買わないようにしている caged eggs (檻に入れられたニワトリが生むタマゴ)が使われているかもしれないからです。

経費をできるだけおさえたいであろう経営者は、タマゴの出自を公表するわけではなし、実際放し飼いだろうが劣悪な環境の檻飼いだろうが卵の味に明らかな違いがあるとも思えないし、安い方を仕入れる方が得でしょうから。

その点、このテスコの白い卵は、「フリーレンジ free range 放し飼いの」タマゴと明記されていますから、白くても安心して買えます。

白いのを買いました。夫は大喜びです。

 

エッギー・ソルジャー eggy solders (タマゴの兵隊さん)という英国特有の不思議なタマゴの食べ方をご存知でしょうか。ディッピー・エッグ dippy egg とも言うようです。

エッグカップに載せた半熟のゆで卵に、短冊切りにした薄切りトーストの先っちょをちょっと浸して食べるのです。

煮立ったお湯に冷蔵庫から出した卵を投入、3分(常温保管なら2分)ゆでて、火をとめ蓋をしてさらに3分おく...オンラインレシピどおりに、黄身がジュルジュルのディッピー・エッグを作ってみました。

 

子供のお皿にズラッと並んだ短冊切りのトーストが閲兵式のようなので、その名がついたらしいです。ナイフで切りながら大人もよくやります!ドラマの朝食シーンなどにでてきます。

ただし、夫は「タマゴのサルモネラ中毒」をなぜかとても怖れていて、ゆでタマゴは完熟に、目玉焼きはひっくり返して表面もカチカチに焼くたちですので、小さかった子供たちにエッギー・ソルジャーを用意してやったこともありませんし、半熟タマゴも食べさせませんでした。

...サルモネラ中毒はこわくないのですが、固ゆでタマゴを好む私には美味しいとは思えませんでした...もったいないから最後まで食べましたが。

3分加熱されているので中毒の心配はないはずです。衛生管理が今より悪そうな、夫が子供の頃の英国ではタマゴの食中毒がけっこうあったのだと思います。

 

安心の固ゆでタマゴです☟

「サルモネラ中毒の恐怖」は英国の、特に夫世代にはかなり一般的です。

「めんどくさい客」の夫が宿泊先のホテルやB&Bの朝食の席でタマゴの調理法につける注文(よく火をとおしてほしい)には、どこでも「怖いですものね、サルモネラ中毒」と快く応じてくれます。

 

ところで、「日本のタマゴは生で食べられる」のが知られてきています。新鮮で安全で生のまま食べてもサルモネラ中毒の心配のない日本の鶏卵は世界のグルメの渇望の的だそうです。

私は日本滞在中に、生産者が新鮮な農作物を直接持ちこむシステムの店に寄ったことがあります。そこのタマゴ売り場で見た生産者のプロモーションビデオに驚きました。

昼夜分かたず産卵させるために外光を遮断して24時間常灯している大規模で清潔な鶏卵工場を紹介する映像でした。

何千羽ものニワトリが身動きできないギュウギュウ詰めの状態で閉じ込められていました。

この飼育法は英国はもとより、たしかEU加盟国でも違法なはずです。英国では間違いなく不買運動がおこる、産業規模の動物虐待です...factry farm(畜産工場)と呼ばれる違法な動物虐待農場に潜入して隠し撮りする動物の権利擁護グループの告発ビデオみたいなこの光景を英国では企業は絶対に公開しないはずです。

国民性の違いでしょう。たしかに「衛生管理が徹底された環境で生産集荷されるわが社のタマゴを安心して召し上がっていただきたい」というメッセージはしっかりと伝わってきました。

日本国民として...、いただく命に感謝して食前に手を合わせる美しい習慣よりも、畜産動物の扱いを世界標準に引き上げた方がもっと自国に誇りが持てるのに...と思います!

 

日本に住んでいる友人が、私が好きそうだと送ってくれた傑作写真です。

座布団10枚!

いちばん最初の写真は、夫のための固ゆでタマゴをガードしてくれているロイヤル・ガード(衛兵)です。赤いジャケットの衛兵のエッグ・ウォーマー(ゆでタマゴの保温キャップ)は、英国の昔ながらの編み物のパターンを見つけて私が20年ほど前に編みました。「衛兵とタマゴ」はエッギー・ソルジャーからの連想でしょうね。

 

茶色いタマゴの写真を載せた、以前の記事のリンクです☟。ニワトリのウェルフェア(厚生)について調べて書いています。

不揃いなタマゴたち(色黒ずん胴濃淡大小取り混ぜパック入り)

コメント (2)
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