道内発のIT企業が注目されている。北大発ベンチャーのサイジニア(東京)は電子商取引(EC)サイトの利便性を高めるサービスが評価され、通信大手のソフトバンクが筆頭株主になった。ファームノート(帯広)はスマートフォン(スマホ)で牛の成育状況を一元管理できるシステムを開発し、全国の農家で導入が進んでいる。下請けのイメージが強い道内IT産業だが、独自性を打ち出すなど変化の兆しが見られる。

 道内IT企業では歌声合成ソフト「初音ミク」を開発・販売するクリプトン・フューチャー・メディア(札幌)などが知られるが、約半数は大手会社のソフトウエア開発の下請けだ。道IT推進協会によると、道内IT産業の売上高はリーマン・ショック直後を除いて伸びており、2014年度は4065億円に達する見込み。

 そんな中、スマホやタブレットの需要増を見込んだ独自サービス開発で差別化を図る企業が出てきた。北大大学院准教授から転身した吉井伸一郎社長(44)=北見市出身=が05年に江別市で設立したサイジニアは、その一つだ。

 同社は、ECサイトの閲覧、購買履歴で利用者の好みや消費行動を集積・分析し、利用者に合った広告やお勧めの商品情報を提供するサービス「デクワス(出くわす)」が稼ぎ頭で、楽天やリクルートなど大手企業約250社の自社サイトに採用された。

 07年に東京に移転。昨年12月に新興市場のマザーズに新規上場し、3月には優良企業への先行投資で知られるソフトバンクが全株式の33・21%を取得した。吉井社長は「EC支援事業は国内外で成長が見込める。今年は中国やインドなど海外企業との取引を強化したい」と意気込む。

 北海道経済産業局によると、道内製造業全体で従業員数が減少する中、IT産業は13年度に初めて2万人を突破。「道内経済を支えるけん引役」と位置づける。(東京報道 岡田圭史)