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 我らは「感激の同志」

2021年06月10日 | 妙法

〈随筆「人間革命」光あれ〉池田大作 我らは「感激の同志」2021年6月10日

  • 喜び勝たなん 異体同心で前進!
真っ赤な牡丹(ぼたん)が鮮やかに咲き誇る。創価の女性たちの生命の輝きと団結のように(4月、池田先生撮影、東京・新宿区内で)
真っ赤な牡丹(ぼたん)が鮮やかに咲き誇る。創価の女性たちの生命の輝きと団結のように(4月、池田先生撮影、東京・新宿区内で)

 御本仏・日蓮大聖人の御聖誕八百年に際し、改めて思い起こされる縁がある。
 大聖人と「武蔵野」「武蔵国」との宿縁である。
 無量の地涌の菩薩たちが末法の広宣流布を誓願する法華経の虚空会の会座を、大聖人は広大な武蔵野の天地になぞらえておられた。
 そして御一代の総仕上げを武蔵国池上郷(現在の東京都大田区)で飾られ、この地で弟子に「立正安国論」を講義され、尽未来際への魂魄を留められたのである。
 恩師・戸田城聖先生は、御本仏の遺業を継ぐ創価学会が、御在世から七百年のリズムで、不思議にも東京を起点に出現したことを、甚深の因縁とされていた。
 今、この大東京を中心に地涌の誓友たちが法華経の会座さながらに勇み集い、立正安国の宝土を築きゆかんと奮闘している。それは、御本仏が展望された未来図通りのロマンの大絵巻といってよい。
  

牧口先生の実践

 この六月六日、生誕百五十年を迎えた創立の師父・牧口常三郎先生が、「不惜身命」「死身弘法」を貫き、殉教されたのも、東京である。
 牧口先生が所持する御書に、線を引いて大事にされた法華経の一節がある。
 「能く竊に一人の為にも法華経を説かん、当に知るべし是の人は則ち如来の使なり乃至如来則ち衣を以て之れを覆い給うべし」(御書五八〇ページ)
 ただ一人のためにも妙法を説く人は、まさに「仏の使い」であり、慈悲による仏の仕事を行う大切な存在なのだと示されている。
 学会は創立以来、牧口・戸田両先生を先頭に、一人に向き合い、この仏の仕事を実践してきた。それが、互いの顔が見える少人数の座談会であり、胸襟を開いた一対一の対話である。
 「屢 談話を致さん」(同一七ページ)と「立正安国論」に仰せの通り、「さあ共に語り合おうではないか!」と皆の幸せと世の安穏を祈り、打って出てきたのだ。
 牧口先生は戦時中の二年間にも、座談会を二百四十余回行ったと記録されている。さらに毎週、自宅などで会員と面談し、信心指導を積み重ねておられた。
 軍部政府の圧迫下でも、徹底して民衆の中へ飛び込み、誠実に一対一の対話を何度も繰り返されたのだ。
 牧口先生は、法難で囚われた獄中でも、身近に接した看守を折伏されていた。戸田先生もそうであった。
 いかなる状況であれ、地涌の誓願に立って縁する「一人」と語らいゆくのだ。そこに、必ず「下種仏法」の幸の仏縁が結ばれ、勝利の道が開かれると、両先生は教えてくださっている。
 我らの「東京の歌」にある如く、「仏の使いに誇りあり」と胸張り進むところに、「喜び勝たなん力」が満々と涌現するのだ。
  

女性活躍を願い

 牧口先生は、当時、豊島の西巣鴨にあった東京拘置所から、豊島の目白にある自宅に手紙を送られている。
 奥様はじめ、ご家族の女性方に宛ててである。今でいえば「女性部」であり、世代では“多宝会”と“華陽会”である後継に、一切を変毒為薬する「師子王の心」を綴り、託されていたのだ。
 先生の生誕日を挟んで、六月四日は世界の華陽姉妹の記念日であり、きょう六月十日は婦人部の結成から七十年の記念日となる。
 今、勇気凜々と躍動する女性部と女子部の一人ひとりの活躍を、先師もどれほど喜ばれていることか。
  

ここで一人立つ

 師弟は不二なるゆえか、一九四四年(昭和十九年)の十一月、牧口先生が獄死された同時期、同じ拘置所の独房で、戸田先生は、「われ地涌の菩薩なり」と覚知され、広宣流布の大誓願を起こされていた。
 翌年六月の末、先生は、中野の豊多摩刑務所に移送となり、七月三日の夕刻、鉄鎖を切った師子王の如く出獄された。そして自宅への帰途、降り立ったのが目黒駅である。周囲の目黒、品川を見渡せば、焼け野原が広がっていた。
 先生は、ここから広布へ一人立ったのだ。私も、雨の中、目黒通りの権之助坂を歩む師にお供するなど、この地の思い出は尽きない。
 戸田先生が戦後、学会再建へ最初の座談会を行われたのは、七十五年前、東京の蒲田区(当時)であった。
 その翌年、先生が「立正安国論」を講義されていた大田区内の座談会で、私は師弟の契りを結べたのだ。
 先生は、よく言われた。
 ――二人でも三人でもよい。信心の素晴らしさを語り合って、皆が感激に満ちて帰っていく。これが第一線の発展の力なんだ、と。
  

立正安国の朝へ 誠実の対話に誇りあり
勇敢なる青年と民衆の大城を築きゆけ!――友を励まし、見守り続けて(2008年6月、東京・八王子市内で)
勇敢なる青年と民衆の大城を築きゆけ!――友を励まし、見守り続けて(2008年6月、東京・八王子市内で)
爆発的な連鎖が

 人の世を動かすものは「感激」にほかならない。
 日本経済の黎明を開いた大実業家・渋沢栄一翁も、こんな言葉を残している。
 「一朝、事に臨んで感激すれば、自ら意気の奮興するものである」
 今日の学会の世界的な広がりも、恩師の獄中の悟達という、広布の使命に生きる感激が源流といえよう。
 この感激の爆発的な連鎖を生んだ舞台の一つが墨田である。この地で戸田先生も私も会長に就任し、広布の大前進を開始したのだ。共戦の師弟には、随喜の感激があり、「元初の生命の曙」が燦然と輝いている。
 渋沢翁に縁深き北区の飛鳥山公園の麓、王子駅前の会場で、戸田先生が出席されて草創の足立支部の総会が行われたことがある。
 学会の組織が飛躍的に伸展した一九五三年(昭和二十八年)の五月であった。 足立区はもとより、北区、荒川区、板橋区などから、広布を誓って勇んで参集した健気な庶民の英雄たちに、先生は師子吼された。
 「信心が深ければ生活は一変する。運命を転換できる。苦しんでいる人びとを救わんがため、仏の事業をする学会に、功徳がないわけがない」と。
 四年後、荒川の夏季ブロック指導の折、私が随喜の心で共に戦った勇者には、この総会に参加していた方々も大勢おられた。
  

兄弟姉妹の絆で

 思えば、大聖人を武蔵国にお迎えしたのは、池上兄弟の一家であった。悪僧に誑かされた父からの二度の勘当に屈せず、凱歌の実証で師恩に報いたのである。
 「いよいよ・をづる心ねすがた・をはすべからず」「がうじゃう(強盛)にはがみ(切歯)をしてたゆ(弛)む心なかれ」(御書一〇八四ページ)との御指導に、兄弟は奮い立ち、苦難を乗り越えることができた。異体同心で勝ちゆくその姿を、大聖人は「未来までの物語」と讃えてくださったのである。
 とりわけ、池上家においても、女性の信心の力が偉大であった。大聖人は兄弟の妻たちに「末代悪世の女人の成仏の手本と成り給うべし」(同一〇八八ページ)と記別を贈られている。
 まさに三十年前、邪宗門の忘恩背信が吹き荒れた時、本陣・東京の母たち女性たちが「創価ルネサンス」の旗を高く掲げ、全世界の先頭に立って破邪顕正の声を上げてくれたことも、私と妻は決して忘れない。
 ともあれ、我らの立正安国の前進も“異体を同心とする”団結から生まれる。
 友が悪戦苦闘していると聞けば、我が事の如く祈り、応援する。「友の喜び友の歎き一つなり」(同九三四ページ)との御聖訓に違わず、兄弟姉妹の仲良きスクラムで、いかなる逆境をもはね返してきたのが、創価家族だ。
 中野兄弟会はじめ、大田、目黒、豊島、墨田、江東、新宿、調布、狛江、町田、“村山”など各地に兄弟会があり、共戦の師子の連帯が大河の如く流れ通っている。
 大聖人も渡られた多摩川に接する調布にゆかりの、作家・武者小路実篤翁は壮年の頃、試練の中で書いた。
 「今が大事な時だ」
 「我等はもう一歩進まなければならない。あらゆる方面で、決心強く働き出さなければならない」
 大変であればあるほど、皆で励まし合える絆こそ、かけがえのない宝である。
 日本中、さらに世界中の不二の宝友が、東京を「広宣流布」即「立正安国」の本陣として大切にし、心一つに前進と勝利を祈り、尽くしてくださる。何と有り難き「感激の同志」であろうか!
 まさしく大東京は、創価の勇気が総結集した「大勇の城」そのものなのだ。
  

池田先生の書「大勇乃城」(1984年)
池田先生の書「大勇乃城」(1984年)
負けじ魂で挑め

 江戸っ子の私にとって、東京は大恩ある故郷だ。
 この天地に、地球社会を照らす幸福と安穏、平和と繁栄の「価値創造の花の都」を断固として築き開きたいと、祈り続けている。
 青春時代から、「波浪は障害にあうごとに、その頑固の度を増す」を信条に、ここ東京を主戦場として、苦難にぶつかる度に、来るなら来いと、わが胸中の怒濤をたぎらせてきた。
  

池田先生の書「怒濤人生」(1982年)
池田先生の書「怒濤人生」(1982年)

 「怒濤の人生」――これは、創価の師弟の覚悟だ。激しき波音が吼えるように、負けじ魂で頑強な巌をも打ち砕いていくのだ。
 青年の七月、師弟の七月へ、我らは決然と進もう!
 「感激の同志」のにぎやかな大行進で、立正安国の新たな朝へ、希望の鐘を打ち鳴らそうではないか!

(随時、掲載いたします)
  

 〈引用文献〉渋沢栄一の言葉は『青淵先生訓言集』(富之日本社)。武者小路実篤は『武者小路實篤全集17』(小学館)。

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