
困っちゃったな、何から話そう・・・。
映画の話から少しだけそれますね。
私にも離れて暮らしてる娘がおりまして。
んで、多分よほどのことがなければ帰ってもこないだろうし、連絡もないだろうし、
こちらから聞いてもそんなにあれこれとは教えてくれないだろうし、
でも自分なりにきっと精一杯毎日をすごしてるだろうし・・・って
気持ちが少しだけそっちへいってました。
ひとはいつか必ず死ぬ。でも、病気とかそういうことやっぱ
言うてくれないとやだな・・・って。
辛いとか悲しいとか言ってくれないとやだなって。
コホン、話を戻さなきゃ。
余命宣告されても、イマイチ、生きてるか死んでるかわかんないような青年が
ある少女と出会うことではじめて生きたいと願い、何かを残したいと思った。
そうして書き上げた絵は少女そっくりの聖母マリアをモチーフにしたピエタでしたと。
手塚治虫が死の淵まで綴っていた日記。Wikipedia参照⇒
コチラ。
「トイレのピエタ」はこれをもとにした、監督オリジナルのストーリーで元・美大生と少女のラブストーリーとなってます。
手塚の日記には性別も年齢も盛り込まれていないが、こういう形で映画が制作されて上映されたことに
手塚の娘と息子のそれぞれの反応はイマイチらしいね~・・・・・。
芸大、美大に行ったところでそれで食べていけるひとがそんなにいるはずもなくて、んでもって
才能があっても埋もれてしまうひと、才能がなくてもプロデュースしてくれるひとや出資してくれるひとのおかげで
先生と呼ばれる人になっていくラッキーなひともいて。(わわわわわ)
絵は好きだけど、それを仕事にしたくないってひともいるし、
早々と筆をおいちゃって、全く関係のない仕事につくひともいる。
主人公の宏も大学でたあと、窓ふきの仕事について、正社員になっちゃえばくらいのベテランの域になっちゃってて
それでも将来だの生きる意味だのを見いだせないでいて。
ひとまわり以上下の少女に恋なんかしないですよって役の上でも野田さん本人としても言うてたんですが
役にのめりこんでいくうちにどんどん好きになっていったそうですね。(^_^;)
そもそも、演技なんてできないのに相手役の麻衣のオーディションで杉崎花と演技させられたときに
彼女がひっぱってくれたと野田さんは語ってましたし、監督はこれだとおもったとパンフに書いてました。
彼女に限らず、演技に迷ってどうしていいかわからないままカメラの前に立っても
相手役の俳優さんが「ひっぱってくれる」という体験を何度もして、
結局はうまく野田さんのもってるものをまわりが引き出してくれる形で映画はできあがったそうな。
杉崎花ちゃんが演じる麻衣は正直笑えない家庭事情を抱えてはいるんだけども
生きてるということに対してはもうキラキラしていて。いやギラギラかな。
負けるもんかみたいな。
しょっちゅうキレてるし、不機嫌で言いたい放題で、
でもそんな彼女の”ひかり”に触れることではじめて宏は生きたいと心から願うようになるわけで。
転移しちゃって手の施しようがなくなって最後の時間を過ごすにあたって
自分のためだけに絵を描く。んで今最高に生きてますよって笑う、あのシーンは泣けてきちゃいましたね~・・・・。
「浄化と昇天」てなことばを言うてましたけど、この単語が要は手塚治虫原案てことなんですけども
・・・・・ひとが死ぬときって死ぬ前にそんなにいろんなしがらみから解き放たれて
いい顔できるもんなんですかね・・・。末期の苦しみとかはスクリーンでは描かれてないし、
上映時間のほとんどがぶっちゃけ何考えてんのかわかんないというか無表情というかつまんなそうな顔してるんだけども
この、トイレにピエタ像を描いてるときだけは対照的にイキイキしてるんですよね。
誰かに認められたいとか見て欲しいとかじゃなくってホントに楽しそうに生きた証しを残そうとする。
最後に何がしたいかと考えたときに絵を描くってのはやっぱ絵がほんとに好きだったんだよね・・・・。
レコーディングは音楽家に戻る作業でもあり、サヨナラを言う作業でもあった、
宏は絵を描くから、僕は歌を唄う。
どの場面もどのセリフも覚えている、それを全部曲の中に閉じ込めたかった・・・って野田さんが語るように、
エンディングで流れる主題歌の「ピクニック」は
映画の情景やら宏と麻衣の思いがぎゅっと詰まってる気がして涙がでちゃいました・・・。
余命宣告でもされない限り、ぶっちゃけ今「生きている」ってことをそんなに考えたりしないだろうな。
で、そういう立場になったときあらためて、いかに生きるかって考えるんだろうな・・・。
私ならどう生きたいのだろう、何が残せるんだろう。そんなことを案外マジマジと考えさせられる作品でした。
ファンしか見に行かない映画だと言われるかもしれないけど、
下手な俳優のあざとい演技よりはうまかったと思いますよ。野田さん。
周りを固める役者さんの影響力も大きいですが、素のままでカメラに立って
「宏と同化している野田さん」は十分ステキでした。