市街・野 それぞれ草

 802編よりタイトルを「収蔵庫編」から「それぞれ草」に変更。この社会とぼくという仮想の人物の料理した朝食です。

それ(君の命)よりも価値あるもの

2007-03-05 | Weblog
 安部晋三さんの問いに答えて、そんなものはないよなとぼくは思う。自分の命が一番大事です。たとえ国家のためであろうと、革命のためであろうと、自分の命を投げ打ってまで守る価値はないとうことを、実は「調律の帝国」はぼくに痛切に教えてくれた。著者の見沢知廉は、獄中で執筆した「天皇ごっこ」で新日本文学賞を受賞している。この本では、左翼、右翼にとって天皇とはなにかを扱っている。結局それは個人を越えた統制、調和のとれた美であるらしい。

 この短編集には、拉致問題以前に北朝鮮を訪朝した体験小説もあるが、よど号事件の当事者と今は右翼の主人公が、金正日のまえで演じられるマスゲームに感動して共に涙するシーンがあるが、右も左もおなじ穴の狢というブラックジョークではなくて、本気で書かれているのが凄い、まったく個人が消滅してしまった国家の美が左右で賞賛されるのである。もはや日常のへいへいぼんぼんたる現実、日常は消滅するのである。

 個人を越えて価値ある観念世界よりも、建前と本音をこころえて、生きていかねばならぬ普通の人生のほうが、よほどすばらしい。安部氏は、そういう世界がどうも想像できぬらしい。それに若者は、戦後も、安保に革命にイラクに、ドロップアウトにと自分より価値あるものにたえず価値を見出してきた。しかし、なお多くは平凡であることを選んできただけの話ではないか。このことが素晴らしいのだ。

 ただ若者はいつも自分を越えたいという意識は眠っていよう。それにガソリンをまいて火をつけることは可能である。ただそれをヤッちゃあおしめえだな。観念よりも価値あることは、平和な日常に生きる意志である。
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