神奈川県民ホールで、リヨンオペラ座バレエ団の公演を観た(4日初日)。
演目は、アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル振付の「大フーガ」、サシャ・ヴァルツ振付の「ファンタジー」、そして、マギー・マラン振付の「グロスランド」の3作品、いずれも日本初演である。
この3人の振付家は、順にベルギー、ドイツ、フランスを拠点としているが、いずれもヨーロッパのコンテンポラリーダンスを代表する女性振付家のスーパースターたちである。
公演パンフレットを読んで思い出したが、マギー・マランが振り付けた「サンドリオン」(シンデレラのフランス語名)が大当たりをとったのもこのリヨン・オペラ座である(1985年のことだという)。
そのマギー・マラン振付の「グロスランド」は「太った人たちの国(土地)」という意味。この作品では、男女合わせて20人のダンサーたちが、何と太っちょの着ぐるみを着て登場する。
男は腹と尻、女は背中と(圧倒的に)お尻がふくれあがった着ぐるみに全身くるまって、バッハのブランデンブルク協奏曲第2番、第3番に合わせて踊る。普段すらっとしたスタイルで運動神経抜群のエリートダンサーたちが、太っちょの着ぐるみのせいで、身軽なのにドタドタ、切れがいいのにノタノタ。その動きが何ともユーモラスでおかしい。
特に、足を高くあげることは着ぐるみの構造上できないので、身体から下に向かって伸びる垂直線に対して、やっと45度くらいしか足が開かない(普段は180度足があがっているのに、である)。これはもう、彼らがいつも踊っているダンスとはまったく違うものである。したがって、おのずと旋回と細かなステップが中心になる。
それにしても、客席からこんなに笑いがこぼれるコンテンポラリーダンスは珍しいだろう。案の定、客席は大受けだった。
この「グロスランド」という作品は、以前にシアター・テレビジョンでメイキングの映像とともに舞台の様子がまるごと放送されたことがある。(そのときはリヨン・オペラ座ではなくてオランダのヘット・ナショナルシアターのバレエ団に振り付けたものだったのだが。)
実は、私はその番組を録画したビデオを、毎年、跡見の「パフォーミング・アーツの世界市場」という授業で上映しており、個人的には馴染みの作品だったので、その意味でも大変楽しませてもらった。
ケースマイケル(この人の名前は便宜上通例にしたがってケースマイケルと表記しておくが、実際の発音はケースメケエとするほうがよほど近いはずだ)とサシャ・ヴァルツの作品は、県民ホールの舞台と客席が大きすぎることもあって、私にとっては、振付のストラクチュアを行儀良く観察していました、という感じになってしまった。
両作品ともダンサーは8名で、舞台も客席も本体はもっと小さな劇場の方がふさわしいはずだ。(神奈川県あるいは横浜の劇場事情では、このことは仕方ないと言わざるを得ないので、これは関係者を批判しようとして言っているのではない。)
ケースマイケルの作品ではローリング(床に倒れ転がる動作)、ヴァルツの作品ではリフティング(ダンサーが他のダンサーに持ち上げられる動作)が多用されているということくらいは気がついたが、その他は、私が持っている程度のダンスに関する素養ではちょっと太刀打ちできなかった。ちょっと悔しいし情けなくもあるのが、ただぼんやりとダンサーの動きを眺めていた、というのが実態に近い。
(音楽の)対位法をダンスにした(前者についてのフランスの新聞評にそう書かれていた)、と言われても、私にとっては正直なところ「?」であったが、振付家に責任があるわけではない。
神奈川県民ホールでは4日と5日の2回公演。このあと、まつもと市民芸術館での上演があるという。
ヨーロッパのコンテンポラリーダンスの現在を知るためには見逃せない公演である。
演目は、アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル振付の「大フーガ」、サシャ・ヴァルツ振付の「ファンタジー」、そして、マギー・マラン振付の「グロスランド」の3作品、いずれも日本初演である。
この3人の振付家は、順にベルギー、ドイツ、フランスを拠点としているが、いずれもヨーロッパのコンテンポラリーダンスを代表する女性振付家のスーパースターたちである。
公演パンフレットを読んで思い出したが、マギー・マランが振り付けた「サンドリオン」(シンデレラのフランス語名)が大当たりをとったのもこのリヨン・オペラ座である(1985年のことだという)。
そのマギー・マラン振付の「グロスランド」は「太った人たちの国(土地)」という意味。この作品では、男女合わせて20人のダンサーたちが、何と太っちょの着ぐるみを着て登場する。
男は腹と尻、女は背中と(圧倒的に)お尻がふくれあがった着ぐるみに全身くるまって、バッハのブランデンブルク協奏曲第2番、第3番に合わせて踊る。普段すらっとしたスタイルで運動神経抜群のエリートダンサーたちが、太っちょの着ぐるみのせいで、身軽なのにドタドタ、切れがいいのにノタノタ。その動きが何ともユーモラスでおかしい。
特に、足を高くあげることは着ぐるみの構造上できないので、身体から下に向かって伸びる垂直線に対して、やっと45度くらいしか足が開かない(普段は180度足があがっているのに、である)。これはもう、彼らがいつも踊っているダンスとはまったく違うものである。したがって、おのずと旋回と細かなステップが中心になる。
それにしても、客席からこんなに笑いがこぼれるコンテンポラリーダンスは珍しいだろう。案の定、客席は大受けだった。
この「グロスランド」という作品は、以前にシアター・テレビジョンでメイキングの映像とともに舞台の様子がまるごと放送されたことがある。(そのときはリヨン・オペラ座ではなくてオランダのヘット・ナショナルシアターのバレエ団に振り付けたものだったのだが。)
実は、私はその番組を録画したビデオを、毎年、跡見の「パフォーミング・アーツの世界市場」という授業で上映しており、個人的には馴染みの作品だったので、その意味でも大変楽しませてもらった。
ケースマイケル(この人の名前は便宜上通例にしたがってケースマイケルと表記しておくが、実際の発音はケースメケエとするほうがよほど近いはずだ)とサシャ・ヴァルツの作品は、県民ホールの舞台と客席が大きすぎることもあって、私にとっては、振付のストラクチュアを行儀良く観察していました、という感じになってしまった。
両作品ともダンサーは8名で、舞台も客席も本体はもっと小さな劇場の方がふさわしいはずだ。(神奈川県あるいは横浜の劇場事情では、このことは仕方ないと言わざるを得ないので、これは関係者を批判しようとして言っているのではない。)
ケースマイケルの作品ではローリング(床に倒れ転がる動作)、ヴァルツの作品ではリフティング(ダンサーが他のダンサーに持ち上げられる動作)が多用されているということくらいは気がついたが、その他は、私が持っている程度のダンスに関する素養ではちょっと太刀打ちできなかった。ちょっと悔しいし情けなくもあるのが、ただぼんやりとダンサーの動きを眺めていた、というのが実態に近い。
(音楽の)対位法をダンスにした(前者についてのフランスの新聞評にそう書かれていた)、と言われても、私にとっては正直なところ「?」であったが、振付家に責任があるわけではない。
神奈川県民ホールでは4日と5日の2回公演。このあと、まつもと市民芸術館での上演があるという。
ヨーロッパのコンテンポラリーダンスの現在を知るためには見逃せない公演である。
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