ときどき、ドキドキ。ときどき、ふとどき。

曽田修司の備忘録&日々の発見報告集

日本の社会システムを見直す

2005-01-09 13:17:57 | アーツマネジメント
昨日から、関西学院大学大阪梅田キャンパス(「梅田コマ劇場」や「シアター・ドラマシティ」の入っている茶屋町アプローズという複合施設の中のアプローズタワー14Fにキャンパスがある)で開催されている「第6回政策メッセ」に参加している。「政策メッセ」とは、「政策分析ネットワーク」という公共政策を専門とする研究者がつくっているネットワークの年次研究大会のことである。私としては、2日目の今日午後に行われる「コンテンツ産業の資金調達方法」と「公立文化施設と指定管理者制度」という2つのワークショップ(分科会方式の討論会)に主たる興味があって参加することにしたのだが、「政策メッセ」そのものにも興味があったので2日間とも出席することにした。その他のセッションは、個人的に興味はあるものの自分の専門分野とはまったく違うので、それぞれの分野で現在進行中の議論の入り口あたりの知識を吸収する程度にとどまってしまうことになるが、その分野の第一人者と言ってもいい専門家の人たちの議論を聞くのは、問題の所在を認識し、現状を整理するのに非常に好都合である。今日午前中に行われた今回の政策メッセのメインシンポジウムのテーマは何と「郵政民営化」。新聞でなんとなく議論を追うことがあっても、自分の問題としてこれまで考えたことはなく、こういう機会がなければわざわざ出席しようとは思わなかったろう。以下、例によって私にとって面白かった点(私にとっての発見)をいくつか書いておく。ひとつは、郵政の民営化という場合の「郵政事業」というのは、郵便だけではなく、郵便貯金、簡易保険などの保険制度の3つをすべてひっくるめていうものであること。郵便貯金や簡易保険等の郵政事業の資産額は350兆円もあること(注:国の一般会計予算は80兆円程度である)。まあ、このあたりのことまでは私もなんとなく知っていた。このように郵政関連の資産が膨れ上がったのは、バブル経済期に郵便貯金の預け入れ限度額を何度も引き上げ一口1000万円にまでしたこと、定額貯金などの金利がバブル期の水準のまま10年間維持されるので、バブル経済崩壊後も郵貯に大量の資金がシフトしたことなどがあるという。そして、郵政の資産がないと、大量に発行される国債や地方債が消化されなくなってしまうこと。したがって、郵政改革とは、郵政事業の改革というだけでなく、明治以来の日本の社会システムの改革に直結する問題であるということ。つまり、民間にあるべきフローが無理やり官の側に収奪されている、というのが現状である、とも言えること。(パネリストの一人である伊藤元重東大教授によれば)「日本は世界で唯一成功した社会主義の国である」が、「社会主義はどこでも失敗したのだからこの先同じシステムを続けていけばまちがいなく失敗する」ということである。(もちろん、「日本が社会主義だ」というのは一種のレトリックであり、「社会主義的な官治主義が濃い」ということを言っている。)このように、問題を「官と民との連携」とか「官と民との関係の見直し」「日本の社会システムの見直し」というようにとらえると、「アートNPOをどうやって支援し、活動を成り立たせていくか」「指定管理者制度はどうあるべきか」という私の本来の興味ある領域に直接つながってくることになるのである。ところで、この文章は、昼休みに会場近くの漫画&パソコン喫茶によって書いた。どの分野でも、役所が発信する情報がすべてということではなくなっている。こういうことができるようになるとは正直思わなかった。日本が変わるとすれば、こういうところ(つまり、通信システムとか、個人の社会参画のシステムの多様化)から、という気がする。
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