sunaharay先生が観測し続けている地方分権改革推進委員会(なんだか似たような会議や委員会がたくさんありますが),その第11回会合が開催され,総務省・財務省からのヒアリングが行われた,ということで,初めてその様子の動画というのを見てみました(Windows media).……が,2時間くらいあるので,最初の両省のご説明だけ聞いただけですが.
基本的には似たようなデータを使って,国と地方のどちらが財政的に深刻かを訴える,という,病院における病気自慢に近いところがあって参考になります.どこの地方だって国の一部であるし,どの国民だって基本的にはどこかの地方に属していることになるので,こういう対立(?)がどういう意味があるのか,というのはわかるようなわからないようなところがあるわけですが,えーとまあ,政治的な競争の一環ということでいいんでしょうか.いいのかな?
ということで,内容についてはsunaharay先生のエントリを見ただけなんですが,よくわからん点が2つ.ひとつは税源移譲について.政府部門の累積赤字が膨大である以上,税源移譲もなにもどっちから増税するかという話になるだろうとは思うのですが,とりあえず政府部門の総税収を一定にするような税源移譲を考えると,ほぼ必然的に東京都の税収が増えるので,移転前の格差は拡大するでしょう.そうすると,なんらかの水平的財政移転が必要になるわけで,現行の垂直的移転を縮小するのとセットにすると移転後の格差も広がるんじゃないかしら,と思うのですが,地方政府間の調整を中央政府(総務省)がやらないとすれば,いったい誰がどうやるんじゃいな?という話.
いまひとつは地方法人税の話.すっごいざっくり言ってしまえば,利潤への課税である法人税は,売り上げから仕入れを引いた額に比例する消費税と,納税段階では似たような分布をすると考えられます.消費税については,全国で集めた上で家計調査のような統計を用いて「清算」して地方消費税として配布しているわけですが,法人住民税については「課税標準を従業者数により分割して各都道府県又は各市町村に納付」ということになっていて(総務省の説明ページ),そうすると,本社機能が集まっているところへはたくさん納付して,従業員が少ないところへの納税額はそれほどでもなくなります.財務省が「今の税体系の中で偏在をなくすような努力ができる(sunaharay先生のエントリ)」と言っているらしいのはこのことではないかと思われます.法人の得ている受益に合わせて,その法人が事業所を持つ各地方に納税額を振り分ける,とするときに,「なんで従業員数なのか」と言えば,いちゃもんのつけようはあるわけで.つまり,地方法人税の「清算」手続きをこっそり仕込むことができれば,地方法人税の本格的な変更を行う必要はないかもしれないわけです.その手続きが「民主的」かどうかとか,地方税としての法人税の適格性とかはともかくとして.
H先生があちこちで指摘しているように,所得再分配の執行を地方政府に任せているという特殊事情を考慮せずに地方の支出比の数値目標を設定しても詮無いことですが,地方債についても,発行制限等の制度背景を問わずにOECDとかG7とかの地方債残高を比較してもしょーがないじゃん,とも思うんですが,そこらへんも踏まえたうえであえてそういう図表を出してくる総務省・財務省って,なんというか,すごいなあ.ああ,あと,事務局としてさんざんにアジェンダセットしておいて「審議会ではこのようなご意見をいただいているところで」とか「ご審議いただいたところで」とか言うのは,いやたしかにそうなんでしょうけどなんとなく違和感がまだ取れません.なんでかなあ.
二点目は仰るとおりです。財務省の主張はざっくり言えば法人税だって清算すれば同じじゃないか,という話で,それに対して増田委員長代理は,「そうすると譲与税みたいになっちゃう」と。地方消費税(消費で按分)がよくて法人税(従業員?で按分)がダメな理由はいまいちわかりませんが,まあ地方税として受益と負担が合ってないという主張でした(消費はいいのかと(ry
あ,あと先生は勘弁して下さい…実際しがない研究員ですし…。