だからちがうんだってば.

ブログ人から引っ越しました

財政論(8)

2014-11-27 17:21:06 | 授業ネタ
法政の財政論は日程の関係で8回目でしたが,医療と少子化対策について扱いました.板書が少なかったかもしれないのが少し心配です.少子化対策については経済財政諮問会議・「選択する未来」委員会・第3回の資料を使いましたが,内容はあまり財政論っぽくなかったかもしれません.興味のある人は良く知ってるし,そうでないひとは全然知らない,というトピックだった気もします.基本的な情報はおさえたつもりですがどうでしょうか.

経済政策論(9)

2014-11-26 16:12:09 | 授業ネタ
経済政策論では費用便益分析を扱っています.9回目のテーマはヘドニック・アプローチでした.自分でやったことがないのでおどおどしながら説明しているのですが,市場価格が付け値と指し値の包絡線になっているという性質を利用しているということを,1段階の推定のところでももう少し説明すればよかったかなとおもいます.

ヘドニック住宅価格関数の推定では,Box-Cox変換を使うこともあるのですが,Box-Cox変換って声に出していいたい用語のひとつじゃないでしょうか.墾田永年私財法的な.そうでもないか.

ところで,Box-Cox変換の語源はなんなんでしょうか.英辞郎 on the WEBで検索したら「一つの役を交代で演じる二人、一つの仕事を交代で務める二人、すれちがいで会うことのない二人、同じ場所に同時に居合わせることのない二人◆【語源】英国の劇作家Mortonが1847年に書いた「Box and Cox」という喜劇の登場人物John BoxとJames Coxから」と出たんですが.


おれ,怒るからね.

2014-11-25 23:08:32 | 授業ネタ
某所で,某N先生といかにゼミ生のデキが悪いかについて自慢大会をしていたところ,そのN先生が「『そんなことしたら,おれ,怒るからね』って言ったんだけどさ」とおっしゃったので,少なからず驚愕しました.ああ見えて(どう見えて?)教育熱心なのであるなあ,というか,ちゃんとしてるのだなあ,というか,思ったからです.

理工系や生物系とちがって,社会科学系でのゼミというのは,週に2コマある(サブゼミなどやっても週に4コマていど)の少人数授業の一つに過ぎず,「研究室の学生」といった存在からは程遠いものがあります.また,ほとんどの学生は学士で出ていってくれるので,つきあいは長くても3年,通常は2年にしかなりません.このあたりが,理工系生物系の指導教員-学生関係や,会社の上司-部下関係とは大きく違うところです.とはいっても,他の大人数講義に比べれば教員と学生の距離は近いので,受講生に対してそれなりに思い入れはあります.

とはいうものの,接している時間数が絶対的に短いので(そうならないようにしている熱心な先生がたもいらっしゃるのは存じておりますが),よかれと思って出した指示や指導がうまく伝わっていなかったり,こちらの意図通りに分析してくれなかったりということがよくあります(というか,ほとんどすべてですが).となると,「なんなんだあいつら頭使えよ」というのが教員側の一つの反応になるのですが,かような制度設計のもとでは,なんなんだと言って怒ってみても伝わってないのですから詮無いことで,ゼミの時間でちょっと説教してみてもスマホとかいじられて無視されるのが関の山です.そもそもが,生まれてこのかた親や教師に幾度となく怒られた経験に照らしてみても,怒るというのは自分の意図通りに物事が進まなかったいらつきをぶつけているだけなので,怒ったから何かが変わるというものでもありません.うっかりすると「そんなこと聞いてない」とか逆ギレされてしまいます.そうはいっても,いちおうは教育職ですし,ひょっとすると相手の行動が変わるかもしれないとか,あるべきところを伝えねばならんとかいうことになると,怒っちゃうことになるわけで,やっぱりそれなりの熱意とかないと怒るのも難しいなあと思う今日このごろです.

「なんでそうなっちゃったのか」を聞いて次回以降の指示に活かすというのも正しいあり方なのですが,しれっと「いや今回は部活を優先したんで」とか「インターンが入っちゃって」とか「相手と連絡取れなかったんすよねえ」とか言われちゃうと,まあ貴重な大学生活ですしそういうことならそれでいいんじゃないですかねでも成績は落としておきますからね私は私芥子は芥子縁もゆかりもないものを,とやさぐれちゃうところです.

インゼミとか学祭とか終わると疲れちゃいますねえ,というそういう話.隣の芝生は青く見えるとはよく言ったもので,このまえのインゼミの相手にいた井上さんみたいな突破力のある学生がほしいなあと思うところです.そのためには,がんばって怒ったりしないといかんということなんでしょうが.


毒と薬の世界史

2014-11-24 23:03:17 | 授業ネタ


船山信次.2008.毒と薬の世界史―ソクラテス、錬金術、ドーピング.中公新書.

タイトルのとおり,毒と薬のあれこれについて日本の時代区分に従ってさまざまに述べていっています.体系的というよりは,エピソードがいろいろと盛り込まれているといったほうがよい作りになっていて,世界史や日本史の授業を思い出して読むぶんにはなかなかおもしろい本でした.


年収は「住むところ」で決まる

2014-11-11 10:53:20 | 生活

エンリコ・モレッティ.池村千秋訳.年収は「住むところ」で決まる:雇用とイノベーションの都市経済学.プレジデント社
「都市経済学と労働経済学の交差点」のトピックを扱っていて,たいへんおもしろいです.邦題は内容をよくまとめていて,年収は住むところで決まる,ということを手を変え品を変え説明していますが,その背後にあるのはイノベーション産業の存在です.イノベーション産業に従事する高学歴・高技能労働者は,集積の利益という通常考えられる正の外部性をもたらすとともに,この高学歴・高技能労働者の消費に対応するために低学歴・低技能労働者の賃金も上昇する傾向がある,というお話です.

ちょっと読み進めるたびにいろいろ思うところはあるのですが,最後の方でとりあげているのは,アメリカでの高学歴(大卒)・高技能労働者の不足とこれにともなく格差の拡大,その原因としての大学教育の不足,さらには幼児教育の不足です.大学教育に従事している身としては(文系に分類される経済学部ですが),「新しいアイデア・新しい知識・新しいテクノロジーを創造する」ことができ,イノベーションハブを作り上げるような人材を育てねばならんところではあるのですが,ゼミ生の状況を見ているとどうにもなあ,と思わないではいられません.日本は言語的障壁から移民が期待しにくいところであるので,社会の人的資本を蓄積する必要があるのですが,なんとも.実験器具などが要らないからって私学が経済や経営やその他人文社会科学系の大学をやたら作ったのはどうだったのかと思います.大学間競争が期待されたのでしょうが,で,確かに一部では機能していますが,競争の均衡に至るまでに時間がかかるかもしれないってことがやや軽視されていたのではとおもったり.


……どのように人的資本を増強していくかを選択しなくてはならない.(中略)方法は,二通りある.
一つの方法は,移民政策を劇的に転換し,大学卒と大学院卒の移民を優遇することだ.(中略)
もう一つの選択肢は,国内の子どもや若者に対する教育を充実させることにより,社会の人的資本を増強するという方法だ.この道を選ぶ場合は,短期的には納税者に莫大な負担が及ぶ.高校教育の質を飛躍的に向上させ,大学・大学院教育を大幅に拡充させる必要があるからだ.しかし長期的に見れば,恩恵は大きい(pp.318-319)

財務省がクラス編成に口を出さないといけないようでは,ですな.